第十五話『再び魔の手が襲ってきたのにゃん!』
第十五話『再び魔の手が襲ってきたのにゃん!』
「ミロネ君。脱出経路は見つかったのかい?」
ここで首を横に振ろうものにゃら、ウチらはたにゃ当てもにゃく狭界の中をさまよい続けにゃければにゃらにゃい。そうにゃれば、いずれはメノオラの力の一部とにゃってしまうかもにゃ。
全員が不安げにゃ目で見つめる中、ミロネにゃんが口にした言葉は。
「とっくに、だ。ミクリ殿。このまま飛んでくれ」
「おっ、そうかい。判った」
ミクリにゃんの燥いにゃ声。それは間違いにゃくウチら全員の心を表わしている。
ユルやかにゃ上昇をしばし続けたのち、ミロネにゃんから『とまってくれ』との声が。ミクリにゃんが応じてスタセミを停止させると、直ぐに言葉を続けたのにゃ。
「みんな、良く聞いてくれ。これから脱出する方法を説明する」
話を要約すると、こうにゃるのにゃ。今居る場所の向こう側、すにゃわち、狭界の外には『スバル』という名の移動観測点にゃるものが既にスタンバっているという。レミロにゃんから借り受けた『にゃん丸』三にんを使って、ミロネにゃんは、こちらとスバルとの間に霊路の穴、『霊穴路』を通すらしい。そこを進めば、無事にウチらの通常空間へと戻れるとのことにゃ。
「それ、いつ、やるのにゃん?」
「今直ぐにさ。ミアン殿。まぁ見ていてごらん」
ミロネにゃんのいう通りにゃった。三にんのにゃん丸から放たれたあの子らの体色とおんにゃじ黄色の光三つが一つとにゃって、やや上向きに延びていく。
「ミロネにゃん。これでいいのにゃん?」
「待ってくれ」
言葉のあと、しばしの沈黙。……そして。
「来たぁっ!」
ミロネにゃんが叫ぶ。にゃにを待っていたのか判ったのにゃ。黄色から青色へ。にゃん丸らが放った光の色が変わったのにゃん。
「スバルからの応答だ。これで完全に向こう側と結ばれた。あの光の中に入りさえすれば、こちらはなにもしなくても向こう任せで通常空間へと戻ることが出来る」
ミロネにゃんはミクリにゃんを振り返る。あたかも、『あとは貴殿の仕事だ』といわんばかりにゃ。見つめられたほうの顔が、にっこりと微笑む。
「この光の中を進めばいいんだよね。だったら」
再びスタセミは動き出した。ところがにゃ。
どどどどどっ!
「大変にゃあ! またしても水位が上がってきたのにゃあ!」
「モワン、それだけじゃないわん! 見て。水の中からなにかが飛び出してきたわん!」
「あれは……うわっ!
透明ですけど、姿かたちはミストじゃありませんですかぁ!」
ウチ、ミーにゃん、そしてミムカにゃんの三にんで、指差しにゃがらの大騒ぎ。でもにゃ。驚くのはにゃにも、『似ているから』にゃけではにゃい。こちらへとめがけて、なんにんもなんにんも飛んでくるさまを目の当たりにしたからにゃん。
多数のそっくりさんにミストにゃんは、
「あら、やだ。良く似ているわね、あの水人形。
でもアレを造れるなんて……、憑かれたことで力を覚えられちゃったのかしら」
左手を右肩の脇に挟み、右手をほおに当てて、ぽっ。
(ぽっ、って……。顔を赤らめている場合じゃにゃい!)
そうのこうのしている間に水人形のひとりがスタセミの端をつかむ……と。
ひゅうぅぅっ。……ぼっちゃん!
「落ちたわん。意外に、どじっ子だったりして」
「ち、違うのにゃ! ミーにゃん、アレを見るのにゃよぉ!」
ウチの視線の先にあるもの。それはスタセミの欠けた端っこ。
「うおぉぉっ! ボクのスタセミが。スタセミが傷ものにぃぃっ!」
両手を頭に当てて、呻き声を上げるミクリにゃん。がくっ、と膝を突いた姿がにゃんともまぁ痛々しい。
「ええと……どうしますか?」
戸惑うのが得意のミリアにゃん。尋ねた相手は、もちろんミロネにゃん。
「追ってきた。まずいな。このままだとあいつらに霊穴路を潰されかねない」
「そうね」
ミロネにゃんの言葉に、うなずくミストにゃん。
「どういうことにゃん?」
「ミアン。メノオラはどうやら、マジでわたしの力を使えるようになったみたい。
あれは溶解水よ。間違いないわ」
「にゃんと!」
ウチの脳裏に浮かぶは、先ほど体験した、溶けた自分の顔。思わず戦慄したのにゃん。
他の仲間らも次々と声を上げる。
「そんなぁ、だわん!」
悲鳴にも似た声。ミーにゃんもウチの溶けた顔を見ているから、当然の反応かもにゃ。
「……ということは、このままだとスタセミが溶かされていくってことですか?」
こんにゃ非常時でも、ぽやっ、とした感じのミリアにゃん。夢想でハイテンションとにゃった、その反動かもしれにゃい。とはいえ、その動じにゃい様子は、『将来、大物ににゃるのかも』との予想をさせずにはいられにゃいものがある。
「それだけじゃありませんですよ。ねぇ、ミロネ」
「ああ。それだけじゃない。にゃん丸たちもだ。あの水人形に触られたが最後、溶けてしまうのに違いない」
ミムカにゃんとミロネにゃんの絶望を感じさせる会話。ウチばかりか、他の仲間にも動揺が走ったのに違いにゃい。
「そんなぁ。あともうちょっとなのに」
がっくり、とうなだれるのも得意にゃミリアにゃん。
「天は我々を見放したぁ」
どこかで聞いたようにゃセリフを口にするミクリにゃん。もう立ち上がる気力さえにゃい、といった様子にゃん。いや、ミクリにゃんにゃけじゃにゃい。みんにゃがみんにゃ、程度の差はあれ、似たようにゃもの。絶望にゃいし、落胆といった表情を浮かべていたのにゃん。
こういう状況下で一番早く立ち直れそうにゃのが、実は、ミーにゃん同盟のリーダー、ミーにゃんにゃのにゃ。そしてこの予想は当たった。ウチらのポリシー『考えるより、先ずは行動を』を誰よりも信念に持つミーにゃんは、目の前の空に浮かぶと上から目線で、右手に造った力拳を震わせにゃがら力強く叫んにゃのにゃ。
「みんなぁ、諦めてはいけないわん! 絶望なんかいつでも出来る。今、やらなければならないのは行動。敵を撃退するのに全力を尽くすことよ。そうじゃない?
為せば成る、だわん!」
自分がこういうのもにゃんにゃのにゃけれども……、ウチらって頭が同程度にゃのにゃ。根拠があろうがにゃかろうが、ミーにゃんの言葉で全員が奮起、水人形退治に乗り出すこととにゃったのにゃん。
みんにゃ、それぞれが得意とする手段で闘っている。
ミストにゃんは水を操る力で、ミーにゃんは念動霊波で、襲ってくる水人形同士をぶつけ合っているのにゃ。ミムカにゃんは翅人型の右手をネコニャン化。移民の遊びとされている『モグラ叩き』にゃらにゅ『水人形叩き』を展開している。ミリアにゃんはもちろん、無気力波。ミクリにゃんは太くした霊糸をムチのように振るっているのにゃ。ウチとミロネにゃんはミーにゃんから戦力外通告を受けた。ウチにはもう水人形を落とせるにゃけの霊力は残っていにゃいし、ミロネにゃんにはこれといった霊技がにゃいからにゃ。まぁそんにゃこにゃでウチは今、ミロネにゃんに『ネコじゃらし』にゃる茎で遊ばれている。もちろん、時々、ちらちらっ、と横目でみんにゃの奮闘ぶりを覗いてはいたのにゃ。
見た目にはウチらは善戦している。ところがにゃ。にゃかにゃかことは進まにゃい。攻撃を受けた水人形は、たにゃの水に戻って、ぽっちゃん、と墜ちるのにゃけれども、直ぐに代わりが水面から飛び出してくる。しかも数が増えていくのにゃ。
ことここに至って、ミーにゃんも困ったみたいにゃ。
「モワン。どうするわん?」
ミーにゃんのすがるようにゃまなざし。折しもこの時、ネコじゃらしの頭、ほわほわっとしたところをつかまえたのでウチはご満悦。大変気分が良いものにゃから、ミーにゃんに豪語。
「ウチに任せるのにゃん」
こそっと耳打ちにゃ。公言出来るほどの自信がにゃいもんで。
念の為と、友にゃちに問い質してみたのにゃ。
「にゃあ、ミストにゃん。お取り込みの最中、申しわけにゃいのにゃけれども」
ざぶぅん!
「ふぅ、これで百にん目と。
なに? ミアン」
欲求不満の解消に効果があるのにゃろうか。いつににゃい、さわやかにゃ笑顔にゃ。
「湧湖の水って、溶解水にゃのにゃろうか?」
「違うと思うわ。本当にわたしのやり方を真似して、この水人形たちを造っているならね。
溶解水は天空の村に降り注ぐ霊水を身体に取り込み、体内振動を起こすことで造られる霊液よ。だから混じりっけのない、純な霊水がたっぷりと必要なの」
「でもにゃ。ああやって水の中に落ちているってことは……」
「いいえ、霊水のままよ。変わらないわ。
まぁいってみれば、そこが溶解水の強みでもあり、逆に弱点でもあるのだけど」
「うん? どういう意味にゃん?」
「アホね。仮にも自分が奥義とする霊技の秘密よ。
他の妖体にぺらぺらと喋るなんて本気で思っているの?」
(まぁそうにゃろうにゃあ)
でもにゃ。ダメ元ってことで、もちょっとツッコミを入れてみることに。
「ミストにゃん。隠し事をいつまでもしていては、いけにゃいと思うのにゃ。
イライラが溜まって、お肌が荒れてしまう元にゃん」
「あら、そうかしら」
すぅっ、と右手に、つやのある赤茶けた手鏡が現われたのにゃん。鏡部分はまぁるく、それを収めた本体は握り部分も含めて、なめらかにゃ曲線を描いた形にゃ。
ミストにゃんは顔を左右に動かしにゃがらも、食い入るようにゃ目つきで鏡の中を覗き込む。
「前から気にはなっていたんだけど……、そうか。それが原因だったのねぇ」
『はぁう』と大っきにゃため息をつくミストにゃん。とても幼児とは思えにゃい姿にゃ。
「あにょぉ。将来そうにゃるかも、っていう意味でにゃ。今は」
「いいえ。わたしの目は節穴じゃないわ。もう既にその兆候が現われているもの」
「そう……にゃの?」
「わたしの美しさをこれ以上、壊すのは忍び難いわ。
しょうがない。奥義の秘密を話すしかなさそうね」
にゃんか上手くいってしまったのにゃん。早速打ち明け話を拝聴することに。
「溶解水はね。霊水に弱いの」
「霊水って……、まさか」
「ええ。わたしたちが普段、『水』と呼んで使っているものよ。
天空の村に降る雨は霊水だから、当然といえば当然よね」
「そにょ弱いっていうのは?」
「溶解水を水の中にぶちまけるとね。同じ元の水に戻っちゃうの」
「そうにゃったのか……」
「わたしは元々、霊水の塊のような存在だから、なんともないけどね。
ほら、もう気が済んだでしょ? あなたのいう通り、こっちはお取り込みの真っ最中なのよ。いつまでも相手なんか……、
あっ。おあつらえ向きに、三にん並んで飛んできたわっ!」
ミストにゃんが両手をかざした途端、水人形らは捕縛されたかのように宙に浮かんにゃままに。続けて、ぱん、と手と手を絡み合わせた瞬間、
ばちばちぃん! ざぶぅん!
(見事にゃん!)
見た目には、三にんの水人形が自分らで勝手にぶつかり合って沈んにゃ感じにゃ。
……とまぁそんにゃわけで、ウチがこれからやることに支障をきたすことはにゃいみたいにゃん。
ウチはスタセミのぎりぎり端っこまで歩いたのにゃ。
「ミアン君。一体どうするつもりなの?」
「こうするつもりにゃん」
ひらりっ。
「ああっ!」
ざぶん!
(いよいよ、ウチの出番にゃ)
ミクリにゃんの短めにゃ叫びを背に、ウチは眼下の、かにゃりの深さとにゃった湧湖へと飛び込んにゃのにゃん。




