第十三話『ちょっとひと休みにゃん! その三 ~愛ネコにされてしまったウチ~』
第十三話『ちょっとひと休みにゃん! その三 ~愛ネコにされてしまったウチ~』
そして……『今』のウチの出番にゃ。眠っている『昔』のウチがにゃんとにゃく羨ましいのにゃん。
「みんにゃ元に戻って、やれやれにゃん」
くるっ。
(ふにゃ? 話を聞いていたんじゃにゃいの?)
『昔』のウチのかたわらで半分眠りこけている親友に、『今の』ウチは声をかけたのにゃ。
「にゃあ、ミーにゃん」
はっ!
ミーにゃんのお目目が、ぱっちり、と開いたのにゃ。
「な、な、なにわん!」
「うろたえなくてもいいのにゃよ。ところで、と。
話は……そのぉ……あのぉ……、がらっ、と変わるのにゃけれども」
もじもじ。もじもじ。
「どうしたの? 急にもじもじして。なにか訴えたいことでもあるのわん?」
「でもにゃあ。にゃあんか恥ずかしいのにゃよ。これを口にするのは」
ぽっ。
ふるふる。ふるふる。
「赤らめた顔を前足で隠して……。おまけに身体をまだ、ふるふる、させているわん。
一体なんなのわん? とぉっても気になってきたわん」
「でぇもぉっ」
ふるふる。ふるふる。
「ほらぁ。いつまで可愛い子ぶりっこをしているつもり?
話したいことあるなら、こっちが聞く耳を持っている間に、さっさというわん」
「短気にゃミーにゃん」
「アタシは妖精よ。当然だわん」
「にゃるほろ。それもそうにゃん。……よぉし。ミーにゃん、実はにゃ」
「急に小声になったわん。じゃあ、こっちも小声で、と。
……本当、一体なんなのわん?」
「ウチは」
「ミアンは?」
「にゃんと、『愛ネコ』ににゃってしまったのにゃん! きゃああぁぁんにゃん!」
「………………………………………………………………」
「って、にゃあに長ぁく黙っているのにゃん?
ウチが折角、打ち明け話をしたのにゃよ」
「………………………………………………………………」
「『きゃあにゃあきゃあにゃあ』とか『うわっにゃあうわっにゃあ』とか、
それにゃりの反応があって然るべきと思うのにゃけれども」
「…………いや、どういうリアクションをしたらいいのか判らなくって。
袋小路に追い詰められていたわん」
「それはそれは。ミーにゃんを悩ませてしまって済まにゃかったのにゃん。そういえばウチも決まった時には唖然としていたようにゃ……。すっかり忘れていたのにゃん」
「一体全体、どうしてそうなってしまったのわん?」
「よくぞ聞いてくれましたのにゃん。にゃら早速話すのにゃけれども。
つい昨日のことにゃ。ネイルにゃんと、こんにゃ話し合いをしたのにゃよ」
ネイルにゃんはウチのご主人様。今のウチは人間の居住区で暮らしているのにゃ。とはいってもにゃ。ミーにゃんらと、全くの音信不通というわけじゃにゃい。現に今日もこうして遊びに来ているのにゃ。
『ミアンさん。僕は明日、出張なんですよ』
『にゃ、にゃんと!』
『心配は要りません。ミアンさんの食事は全部、朝のうちに造っちゃいますから』
『ほっ。助かったのにゃん』
『ちゃんと朝、昼、夜、と分けて置きます。ミアンさんも間違って全部平らげないように心がけて下さいね。僕が帰ってくるまでは、なんにも食べられなくなるわけですから」
「判ったのにゃ。肝に銘じておくのにゃ。ご主人様」
「ご主人様って……。僕とミアンさんは親友同士じゃないですか」
「いや。ウチはネイルにゃんに食べさせてもらっている身にゃ。ちゃんとそこは、けじめとしてつけておかにゃいと」
「律儀ですねぇ。それともお堅い考えというべきか……。
親友でいいじゃないですか、ミアンさん」
「ダメにゃ。ネイルにゃんはご主人様でウチは飼いネコ。ここは譲れにゃいのにゃん」
「親友ですよ」「飼いネコにゃ」
「親友ですよ」「飼いネコにゃ」
……………………。
「親友ですよ!」「飼いネコにゃ!」
「親友ですよ!」「飼いネコにゃ!」
……………………。
「親友ですったら!」「飼いネコにゃってばっ!」
「親友ですったら!」「飼いネコにゃってばっ!」
……………………。
……………………。
「最初は『いい合っていた』のが、いつの間にやら、『いい争っていた』までににゃってしまってにゃ。そりゃあもう、延々と口論が続いたのにゃ」
「へぇ。仲のいい二体にしては珍しいわん。で、どうなったわん?」
「いつ果てることもにゃく、と思っていたら、ネイルにゃんが一つの提案を持ちかけてきたのにゃん」
「どんな?」
「にゃにか気がついたかのように両手のひら同士で、こう、ぱん、と叩いてにゃ。
『それじゃあ真ん中をとって、「愛ネコ」にしましょう』っていい出したのにゃん」
「ええと……、それのどこが真ん中なのわん?」
「あとから考えると、確かに首を傾げざるを得にゃい提案にゃったとは思う。でもにゃ。この時は喋り疲れていたのにゃよ。『そろそろ終わりに』と思い始めた頃、『真ん中をとって』との言葉。もう無我夢中で賛成してしまったのにゃ」
「それで『愛ネコ』に」
「加えてにゃ。
『「かいねこ」と「あいねこ」。ほらっ。「かな」なら一文字しか違いませんし。もうこれは真ん中どころか、ほとんどミアンさんの希望通りじゃないですか』ともいわれてにゃ。思わず、『そうにゃそうにゃ』とうなずいてしまったのにゃん」
「あちゃあ。それはまずかったわん」
「まぁ、いずれは折れるしかにゃかったのにゃ。ご主人様のいうことでもあるし、いつまでも突っ張ってはいられにゃいもの。……とはいってもにゃあ。誰かに自分を紹介する時、
『ウチはネイルにゃんの飼いネコにゃよ』から、
『ウチはネイルにゃんの愛ネコにゃよ』っていわにゃくてはにゃらにゃくにゃってしまったのにゃ。思えば、小っ恥ずかしい立場ににゃったものにゃん。
ミーにゃん。ウチはどうしたらいい……って、
後ろを向いて、一体、どこに行くつもりにゃん?」
「ちぃっ。ばれたわん。てっきり話に夢中で、こっちは見ていないものとばかり……。
残念。割と目ざといわん」
「あのにゃあ。親友が悩み事を打ち明けて、相談に乗ってもらおうとしているのにゃよ。もちょっと、真摯に耳を傾けてもいいと思うのにゃけれども」
「まぁそこまでいうなら、アタシもいわせてもらうわん。
親友にこんなことをいうのもなんだけどね。話を聴いているうちに、相手をしていること自体がなんだかアホらしくなって、というか、億劫になってしまったのわん。
それでね。ぼちぼち逃げ出そうかなぁ、っとぉ」
「にゃあに冷ややかにゃ視線と口調にゃのにゃ。
ミーにゃんもウチと同様、既にアホの泥沼に、どっぷりと浸かっているのにゃよ」
「どういうこと?」
「ミーにゃんは花の愛妖精。イオラにゃんは愛女神か愛精霊。
今後はそう決められてしまったのにゃん」
「アタシだけじゃなくてイオラも? 一体、誰に?」
「ネイルにゃん。ウチのご主人様に」
「冗談じゃないわん。勝手にそんな……い、いけないわん!」
きょろきょろ。きょろきょろ。
「どうしたのにゃ? ミーにゃん。急にうろたえ始めたのにゃけれども」
「壁に耳あり、だわん。今のを聞かれた気が」
「誰に、にゃん?」
「イオラに。イオラってこういうのが結構好きで」
「大丈夫にゃよ、ミーにゃん。イオラにゃんはさっき森のパトロールとかで、大霊蛇とにゃって出ていったばかりにゃもん」
「それもそうだわん。ほっ。杞憂にすぎなかったわん」
『そうね。決められてしまった以上、やるしかないわ。
ミーナちゃん、期待しててね。帰ったら早速、新しいワタシを、愛精霊のワタシを創造するわ。もちろん、新しい愛妖精のミーナちゃんも。
そうそう。精霊の間も一新しましょう。ピンク色のスプレーを、「これでもか、これでもか」っていうくらい、ふんだんに使って愛精霊と愛妖精に相応しい住まいにするの。今まで見えなかった新しい世界が見えてくるんじゃないかしら。楽しみだわぁ』
「ミ、ミーにゃん。い、今の霊覚交信、聞こえたのにゃん?」
ぞくぞくっ。ぞくぞくっ。
「し、しかと聞いたわん。ノリノリだったわん。
イオラは一体なにを始めるつもりなの? ピンク色のスプレーでなにをしたいの?
こ、怖くなってきたわん」
ぞくぞくっ。ぞくぞくっ。
「そ、そうにゃん。ウチ、急ぎの用事があったのにゃ。いやあ、すっかり忘れていたにゃあ。……ってことで、ミーにゃん。今日はこれでおさらばにゃ。お話の続きはまた明日、いや、来週、いや、来月、いや、来年にでも」
のっしのっし。のっしのっし。
「待てぇ! ひとんちにトラブルの種をばらまいておいて、自分だけが、すたこらとんずら、なんて許さないわん。ぜぇったいに逃がすもんかぁ!」
びゅうぅぅん! ばっ!
「ふにゃ! 両腕を拡げての『通せんぼ』にゃん!」




