第四十六話 決戦! 風雲! 赤城城! その参
残心から居住まいを正し、朝陽さまと陽月さまのお部屋に入り。
朝陽と陽月さまのご無事なお姿を確認。
暁姉上と、梓さんの無事も確認。
無事じゃないのは、天井?
大きな穴がぶち抜かれて、星空が見えてる。
「皆の者、大義だったわ! 特に、朔! 貴女から送られた知恵の輪とこんにゃくに救われたわ! ありがとう!」
花丸つきの笑顔で褒めてもらえるのは嬉しいけど、知恵の輪とこんにゃくが、修羅場のどこで、どのように役に立ったのか、梓さんの眼がなかったら、激しくツッコミたいんですけど。
「百合は、梓と暁の姿を見たら逃げ出した」
天井の穴を見上げる陽月さま。
愛宕百合。
逃げっぷりは、思い切りが良いわね。
「わたしたちは、もう大丈夫。父上たちの元へ参りましょう」
朝陽さまは、あたしたちの顔を確認するように視線を流してから。
「今から見せるのは、秘中の秘。他言無用よ」
知恵の輪を壁に放り投げると、知恵の輪が大きくなり、人間が出入りできそうな大穴に。
「父上たちの元へ、一直線の近道を形成したわ。皆の者、続きなさい!」
朝陽さまと陽月さまたちが、躊躇する間もなく、飛び込んでいくので、あたしたちも無言で続くと。
穴をくぐり抜けると、そこは城主の間だった。
抜刀した青嵐おじいさまと葛城家当主、雷電さまの前に対峙するのは、愛宕家当主の撫子!
青嵐おじいさまの背後に庇われた、優陽さまと睦月さまに合流すると、あたしはすぐに【月光の聖域】を展開する。
「暁、朔! 優陽さまを頼んだぞ!」
「梓は、睦月さまを!」
青嵐おじいさまほどではないけれども、雷電さまの構えも堂に入ったもの。
そんな超達人と達人二人組からの打ち込みを、難なく受け流す、愛宕撫子の実力はあなどれないわね。
「愛宕よ! もはやこれまで! 汝にもはや、勝ち目なし! 潔く、自刃せよ!」
優陽さまの大喝にも、撫子は顔色を変えずに、おじいさまたちと白刃を鳴らし合う。
「赤城の血統は絶やさねばならん! 親子ともども、血の海に沈めてやるぞ」
無表情のまま、呪詛を吐く撫子、キモすぎてダメ。
ノーモーションで、手元の槍を釣り竿に変えて、撫子に突き出すと。
まさに、入れ食い。
釣り竿から放たれた釣り糸の先に、撫子が大口開けて食らいついた!
その隙きをを見逃す、おじいさまたちじゃない。
青嵐おじいさまは両足の腱を断ち切り、雷電さまは首を刎ねる!
血しぶきともに、刀傷から吹き出すのは、虫というか蛆?
飛び散った蛆が、空中に集まって人影を描き。
「うざ・いえい! うざ・いえい!
いかあ、はあ、ぶほう-いい!
らん=てごす! くとぅるう! ふたぐん
らん=てごす! らん=てごす! らん=てごす!」
邪悪な影が、呪詛を謳い上げる間、誰も身動きが取れず!
忌まわしい呪詛のあとには、巨大な化け物の姿が!
亀のように丸い胴体には、無数の吸盤が蠢き。
魚のような、でも三眼の頭。
蟹のようなハサミの触腕。
【ラン=テゴス】!!
撫子の正体は、禍ツ神そのものだったのか!
「kguwwwuuuuuuu! おノレ、ヲノれ! くぉのスガタを晒させたな!」
禍ツ神の三眼の先には、朝陽さまと、陽月さまが!
「【悪しき女神】の名のもとにィィィッッっっっっッl
九頭龍奥義ィィィッッっっっっッ!
陰陽流転灰身滅智撃ィィィ!」
この技は、まだあたしには使えない!
凍りついたように動けない、お二人の前へと飛び出し、あたし自身を壁にして遮るしか!
あたしが音の壁を突き破ることで、ソニックブームが発生して、下屋敷の壁が吹っ飛ぶものの、ラン=テゴスは微動だにしない。
ハサミつきの触腕に奥義の力を込めて、あたしの脳天と、心臓に叩きつける!
ぎゃあァァァァァァァ!
消える、消えちゃう、消えちゃう!
この技は、陰陽の気を逆回転させることで、対象を消滅させて無に帰すという、物理的にも霊的にも、攻撃力最大マシマシのトンデモ奥義。
対抗するには、同じ技で、さらに陰陽の気を正回転させることで中和すればいいらしいんだけど。
あたしには、使えない技なので、自分の陰陽のバランスをとるために、必死に気を練ることしか!
しか、しししかししかししかかか!
あ、あああたししし、ききききええええちゃうううううううううう!
「水晶防球!!!
禍ツ神に支配された、腐り果てた空気を一掃するように、鈴の音のような甘い声がして。
気がつくと、禍ツ神からあたしを庇うように、黄金の魔法少女の姿が!
「なぜ、なぜなぜなぜ、扶桑の子がここにいるぅう!!」
禍ツ神は、赫怒しながら、球形の水晶とハサミの触腕が鍔迫り合いするも、増えていく水晶たちの前に、ジリジリと押されていく。
さすが、地球最強の魔法少女!
強すぎて、頼りになりすぎ!
「朔ちゃーん。皆の治療が終わったから、助っ人に来たよーん。やっぱりボクが一番頼れるよね! ね!」
禍ツ神を前にしても、いつもどおりマイペースなリズちゃんの姿を見て、あたしだけでなく、皆が正気を取り戻すけれど。
「もはや、これまで! この勝負、預けていくぞ!」
どさくさに紛れて、逃げ出そうとする禍ツ神、往生際が悪すぎいい!
「どりゃあぁぁぁぁっっ!」
猿声とともに、天井から逆落しに、前世のあたしが落ちてきて、懐刀を禍ツ神の魚頭に突き刺すと。
禍ツ神の姿が、みるみると崩れて、消えてしまう。
「手応えがなかった。逃してしまったな」
くるりと空中で身を翻し、前世のあたしがリズちゃんの隣へと舞い降りるのを見て。
そろそろ、気絶してもいいかしらん?
色々と限界が来ていたあたしは、膝から崩れ落ちて、意識を手放してしまった。
ようやく、投稿のペースが戻ってきました。
次回のタイトルは、「亀、逃げ出したあと」を予定しております。
(追記)
愛宕の名前が間違っていたので訂正。
月ではなく、撫子です。




