第二百十九話:【燃料の貯蔵:木炭生産と労働力の再配置】
第二百十九話:【燃料の貯蔵:木炭生産と労働力の再配置】
帝都の再建が加速する中、サキモリは次なる「構造」の最適化に着手した。
大森林から運び込まれた膨大な木材。
その八割を、彼は迷わず「木炭」への加工に振り分けるよう命じた。
産業革命の動力、そしてあらゆる技術の礎となる燃料を確保するためである。
職人たちの九割を道路整備へ、残る一割を木炭生産へと再配置するサキモリに対し、宰相メイは懸念を隠せなかった。
「サキモリ殿、これほど大量の木材を焼き続ければ、いずれ山は禿げ、地滑りや水害を招くことになりませんか?」
不安げに寄り添う王女シェーレの視線を受け、サキモリは穏やかに、しかし確信を持って答えた。
「元の世界であればその通りでしょう。ですが、この世界のダンジョン資源はリポーン……つまり再生します。不足分は私たちが大森林へ赴き、トレントやゴーレムを『伐採』してきます。誰かが安定してそれを行えるようになるまでは、私が供給を止めません」
サキモリの笑顔にルミナが深く頷く一方で、ミャオだけは「またあの作業をやるのかニャ……」と遠い目をしていた。
現場では、新たな労働構造の実装が始まっていた。
アリサが最低限に抑えた日給を一人ひとりに手渡し、その横でエレンが温かな食事を差し出す。
「お給金は少ないですけれど、このお食事は必ずセットでお渡ししますわ」
エレンの言葉通り、過酷な作業に従事する労働者たちには、干し肉とドングリクッキーによる「食事の無償配給」が保証された。
通貨価値が不安定な今の帝国において、確実に腹が満たされるという報酬は、何よりも労働者の健康と意欲を維持する強力な動機となった。
働けば、食える。
その極めて単純で力強い「正解」が民の心に浸透した瞬間、停滞していた国家という名の巨大な歯車は、かつてない速度で回り始めたのである。
(第二百二十話へ続く)




