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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四章:不沈の防波堤、獅子王の進撃

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第十九話:奇跡の一射、管理者の「逆襲」

第十九話:奇跡の一射、管理者の「逆襲」


1.終焉の直前


「牙の門」の前に広がる戦場は、もはや地獄の色彩すら失い、ただ不気味な静寂を孕んだ「処刑場」へと変貌していた。

サキモリは、砦の石壁を背に崩れ落ちている。


折れた槍を支えにどうにか膝を立たせているが、その瞳からは生気が失われ、焦点はどこにも結ばれていない。


「……終わりだ、防波堤。貴様の身の程知らずな抵抗も、ここで潰える」


獅子王が、血に濡れた大剣を無造作に振り上げた。

サキモリには、それを防ぐ術はもう残っていない。二十年の経験が、肉体の終わりを冷徹に告げている。


(……。守れ、なかった……ですか)


意識の深淵で、サキモリはただその「失敗」を噛み締めた。


大剣が夕日を反射し、最期の弧を描こうとした、その時。


「――おじさんの、バカぁっ!!」


戦場に響き渡ったのは、凛とした、しかし怒りに震える少女の叫びだった。

その直後、夕闇を切り裂く一筋の青白い閃光が、上空から飛来した。


2.怒りと涙の強襲


「な、んだ……!?」


獅子王が剣を止め、空を仰ぐ。

そこには、純白の翼のような魔力の光を纏い、空を駆けてくる二つの影があった。


ルミナとエレン。

二人は、サキモリが残した手紙を読み、怒りと、それ以上の恐怖を胸に、限界を超えた速度でこの地を目指した。


「勝手に一人で死のうとするなんて、そんな不条理、私が許可しませんわっ!」


エレンの叫びと共に、彼女の大弓から放たれた無数の「光の矢」が、サキモリの周囲にいた獣人の精鋭たちを薙ぎ払う。

彼女の瞳には涙が溜まっている。だが、その指先はかつてないほどに確かな「弾幕」を構成していた。


「おじさん! 誰が無事に帰るって約束したのよ! この、大嘘つき!!」


ルミナは、空中で狂ったように魔力を練り上げていた。

彼女が展開しているのは、一介の魔法使いが一生に一度触れられるかどうかの最高位回復魔法《原初たる生命の息吹ジェネシス・ブレス》。


通常、この魔法は静止した対象に時間をかけて施す儀式魔術だ。

しかし、ルミナはそれを「弾丸」へと圧縮し、エレンの矢に無理やりエンチャント(付与)するという、正気の沙汰ではない戦術を選択した。


3.「逆転」の構造


「エレン、いくわよ! 私の全部を、あんたの矢に預けるから!」


「承知いたしましたわ! サキモリ様、受け取ってくださいませ――っ!」


二人の意思が重なり、一つの「構造」が完成する。

ルミナの膨大な魔力を纏った一射。それはエレンがこれまでの人生で放ったどの矢よりも速く、どの矢よりも重い。


光の矢は、獅子王の牽制を潜り抜け、サキモリの背後へと一直線に突き進む。

本来なら、傷ついた者にこれほどの質量をぶつければ、その衝撃で命を落としかねない。だが、エレンの射撃精度とルミナの魔法制御は、その衝撃すらも「再起動」のためのエネルギーへと変換する計算を解き明かしていた。


「――っ!?」


衝撃。

サキモリの背中に、光の矢が直撃した。


その瞬間、サキモリの枯渇していた魔力回路が、爆鳴と共に強制的に再連結された。

濁っていた血液が瞬時に浄化され、砕けた骨が、裂けた筋肉が、神速の細胞分裂を繰り返して元の形を取り戻していく。


「……全システム、オーバーロード。……再、起動」


サキモリの唇から、無機質な、しかし力強い言葉が漏れた。

彼の瞳に光が戻る。それは単なる回復ではない。ルミナの最高位魔法によって一時的に限界を突破した、過剰なまでの自己修復状態――「万全オーバーロード」への突入だった。


4.境界線の再策定


「……。ルミナ先生、エレン殿」


サキモリは、ゆっくりと立ち上がった。

折れていた槍が、彼の溢れ出す魔力を吸収し、禍々しいほどの輝きを放つ「真の姿」へと修復されていく。


「怒らせてしまったようですね。……それは、計算外でした」


サキモリは小さく、本当に微かに、申し訳なさそうに微笑んだ。

そして、彼は再び、獅子王を無機質な瞳で射抜く。


「お待たせしました。……ここからは、効率重視で行きましょうか」


サキモリの纏う空気が一変した。

先程までの「耐える防波堤」ではない。それは、あらゆる障害物を排除し、平らにならすための「殲滅の嵐」の予兆だった。


空には、まだエレンの放った弾幕の残光が輝いている。

背後には、自分を叱り飛ばすために駆けつけた二人の管理者がいる。


「……私の構造に、あなたたちという『不可欠な変数』を組み込みます」


サキモリは槍を構え、獅子王へと一歩踏み出した。

その足取りに、もはや迷いも、揺らぎもなかった。

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