第百五十二話:【竜の加護:身体の再構築】
第百五十二話:【竜の加護:身体の再構築】
聖域の頂を覆うのは、古龍ニドヘグの深淵から溢れ出した、濃密な蒼い魔力の奔流だった。
それは横たわる四人の肉体を飲み込み、天を突く光の柱となって吹き上がる。
これは、単なる傷の治癒ではない。
「理」の書き換え――再構築だ。
「……あ、っ……、ぁ……」
サキモリの視界が白濁する。
血管の一つひとつに、溶岩のような熱と、絶対零度の冷気が同時に流れ込む感覚。
竜の因子が、分子、原子のレベルを通り抜け、魂の基盤へと直接流し込まれていく。
脆く、一〇%の出力でさえ悲鳴を上げていた「人間の肉体」という器が、神の理を許容し得る「竜族に近い高密度な存在」へと強引に組み替えられていく。
内側から溢れ出す光が、ボロボロになった皮膚を焼き、新たな「外殻」を形成していく。
古い皮を脱ぎ捨て、神域の圧に耐えうる真の強靭さを得るための、痛切なまでの新生。
血液は、より純度の高い魔力伝導体へと変質。
筋肉は、鋼よりも密に、鞭よりも柔軟に編み直される。
神経は、コンマ数秒の遅滞すら許さぬ超高速演算を可能にする回路へと、一本ずつ丁寧に、かつ苛烈に書き換えられていく。
(……壊れる。いや、これは……)
サキモリは、意識の混濁の中で確信した。
これまで自分を縛り付けていた「限界」という名の壁。
一〇%を常態とし、九〇%で魂を削り、一〇〇%で死に至るという、人間としての絶対的な法則。
その厚い壁が、竜の加護という名の暴力的な進化によって、音を立てて砕け散っていく感覚を。
肉体はもはや、脆弱な檻ではない。
神の息吹を宿し、存在の密度を極限まで高めた「最強の兵器」へと変貌を遂げようとしていた。
意識が遠のく刹那、サキモリは己の手が、かつてないほどの力を湛えて強く握られる感触を得た。
(第百五十三話へ続く)




