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28話 勝と天音の過去⑥

──知ってる? カナさん親の都合で転校だって。


──へぇ〜知らない、また数ヶ月しか経ってないのにね。


──なんか親が離婚したとか言ってたよ


──なぁ、カナって学校をよく休んでいただろ? 実はあれズル休みなんだぜ、以前街にいるのを俺見たんだよ。


──そうなんだ、やっぱりちょっと可愛いからって調子に乗ってたんだね。


 4時限目の授業が終わりお昼の時間になると、男女数人のグループがお弁当を広げてカナさんの噂で盛り上がっていた。


 勝は虚な目でそのグループに近づくと、軽蔑のこもった声で話しかけた。


「なぁ、お前らにカナさんの何が分かるんだ? あることない事を言って他人を侮辱するのはそんなに楽しいのか?」


 教室はシーンと静まり返って緊張がはしる。噂話をしていた奴らは互いの顔を見合わせて困った顔で目配せをする。


 結局これだ、群れている時は強くなった気になって言いたい放題喚く。でも責められるとすぐに顔を背けて無関係を主張する。


 勝は教室の扉を乱暴に開けて屋上に向かった。あいつらの話はでたらめもいいところだ。


 カナさんがよく休んでいたのはズル休みではなくて闇と戦うためだ。街で見かけたのも闇を払うために街中を回っていたからだ。あと離婚の話だが、そもそもカナさんに親はいない。


 屋上から見下ろすと、いつも通りの街が広がっていた。カナさんが命を賭けて戦った事でこの世界は救われた。


(でも、本当に命を賭けて守る価値はあったのか?)


 さっきの男女数人のグループもそうだが、SNSを見れば簡単に誰かの悪口が見つかる。他人の足を引っ張って邪魔をする奴もいる。それで自分が強くなった気になるバカもいる。


 揚げ足を取ったり、間違った解釈をして対立する事もある。一部を切り抜いて悪く見せる事は簡単で、それに騙される人は後をたたない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もういっその事全てリセットした方がいいんじゃないか?


──なら、負の感情を集めるといい。さすれば凶源の闇がまた現れる……


(………!? 誰だ?)


 突然聞こえてきた低い声に勝は周辺を警戒する。


──お前が求めるのなら力を貸そう。ただしそれ相応の代償を貰おう。


 勝のポケットに入っていたジョーカーが黒い光を放って空に浮かぶ。カードは闇に包まれると、不気味な鎌をもつ死神に変化した。


「なぁ、負の感情を集めるってどう言うことだ?」


──そのままの意味だ。疑心、不安、怒り、それらの感情は闇を呼ぶ。カナが消し去った凶源の闇はほんの一部に過ぎない。負の感情を集めればまた出現する。


「なるほど、凶源の闇を()()()()んだな。それで全てを初めからやり直す……でもどうやってやるんだ?」


──其方の魂を捧げれば闇の力を授けよう。さすれば人の闇を集める事が出来る。


「魂……分かった。やってくれ」


 死神は不気味な笑みを浮かべると、鋭利な鎌を振り下ろした。勝の体が切り裂かれて青白い魂が抜き取られる。


 その代わりに()()()()()()()()()()()注がれていった。


「勝〜 何だか教室が凄いことに……って何してるの!」


 屋上にやってきた天音が、死神と勝を見て大きく目を見開く。


「天音か……少し遅かったな」


 勝の周辺を不気味な闇が包み込む。右手に持ったジョーカーは鋭利な鎌に変化した。


「天音……俺はこの世界をリセットしようと思う」


「リセット? 何言ってるの! カナちゃんが命懸けで守った世界なんだよ!」


 天音もジョーカーを取り出すと鎌に変化させて構えた。


「確かにそうだな、でも本当に命を賭けるだけの価値はあったのか?」


 勝は鎌を握る手に力を込めると、天音に向かって振り下ろした。


「そんなの、あるに決まってるでしょ!」


 天音も応戦する様に振り下ろした。2本の鎌がぶつかって火花が飛び散る。


「ある事ない事を言って他人を蹴落す世界に未練なんてあるのか?」


 勝が指を鳴らすと、闇が鎖の様に伸びて天音を拘束する。


「世界が闇に包まれると全てリセットされる。闇はこの歪な世界を救えられる唯一の希望なんじゃないか?」


「そんな事……勝1人が決めていい事じゃないよ!」


 勝はため息をついて鎌をしまうと、右手をかざして闇のゲートを開いた。


「天音……俺の邪魔だけはしないでくれ。できれば俺も自分の手でお前を始末したくはない」


 勝は親友()()()天音に手を振ると、闇のゲートに足を踏み入れた。




* * *


(ねぇ……私はどうしたらいいの?)


 1人屋上に取り残された天音は、地面に座り込んでため息をついた。


──其方は何がしたい?


(えっ、だれ?)


──其方が求めるのなら力を貸そう。ただしそれ相応の代償を貰おう。


 天音の持っていたジョーカーが黒い光を放って空に浮かぶ。カードは闇に包まれると不気味な鎌を持つ死神に変化した。


「……ねぇ、教えて、私はカナちゃんが救った世界を守りたいの。一体何をすればいいの?」


──簡単な事だ。凶源の闇を完全に()()すればいい。


「完全に封印? どう言う事」」


──カナが封印した闇は一部に過ぎない。また脅威となって世界を飲み込もうとする。そうなる前に完全に封印すればいい。


「なるほどね……でもどうやって?」


──負の感情を集め凶源の闇を誘き出す。そして魔法少女を集めて生贄に捧げれば世界は救われる。


「誘き出して代償を捧げる……それで本当に世界は救われるの?」


──あぁ……救われる。どうする? そのための力が欲しいか?


「………それは遠慮しておこうかな……もう十分貰っているから」


 天音は鞄からスペード、ハート、ダイヤ、クラブのカードを取り出した。


「願い事はまた今度でいいや。もう帰っていいよ」


 死神は無言で頷くと、消えていった。


「誘き出して代償を捧げるかぁ……」


 天音はぼんやりと考え事をしながら街を見下ろした。


(魔法少女を集める。それは地道に探していくとして……問題はどうやって負の感情を集めて凶源の闇を誘きだすか……だよね)


 天音はジョーカーを見つめると、突然、ポンっと手を叩いた。


(そうだ、ジョーカーを使えばいいんだ! 願いを叶えられるのは1()()()()にすればいい。きっと奪い合いが始まって負の感情が集まるはずよ!)


 天音は自分の閃きに満足すると、高校を卒業すると同時に本格的に行動を始めた。


 情報収集と生活に必要なお金を稼ぐために、おじいちゃんが経営していたカフェテリアを引き継いだ。


 次に4枚のカードをそれぞれ魔法少女の素質がありそうな子に託した。皆んな真面目で本当に良い子ばかりだった。


 それ故に純粋な心を疑心や怒りに染めるのが本当に辛かった。どの子にも叶えたい願いがある。どれも素敵な願いだった。


 さぁ、準備は整った。次こそ必ず凶源の闇を封印する。そしてカナちゃんが命懸けで救った世界を守ってみせる!

ご覧いただきありがとうございました!

次回も18時頃に投稿します。

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