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27話 勝と天音の過去⑤

「ごめんねミト……ダメかも……」


 カナは昔の事を思い出しながら呟いた。


「もういいんだよカナ……今まで本当にすまなかった……」


 フワッと現れたミトがカナの隣に寄り添う様に体を近づける。


「ミト……お願いがあるの……このカードを次の魔法少女に託して。それと……この世界はどうなっちゃうの?」


「………分からない。だけど世界はまた初めからでも大丈夫だよ」


「そんなの……そんなの嫌だよ! 私は負けたくない!」


 カナの必死な叫びは、鳴り響く豪雨にかき消されてしまう。巨大な闇がゆっくりと近づいて来て今にも飲み込もうとしていた。


(私どうなるの? このまま闇に溶けて……)


 せめて最後を見届けるために闇を見つめていると、2人の人影が現れた。


(えっ、嘘でしょ? どうして!?)


 ここにいるはずもない人物の登場に開いた口が塞がらない。


「カナちゃん、助けに来たよ!」


 人影の1人……天音(あまね)がカナの方を振り返って笑顔を見せる。


「どうして? 来ちゃったの? (まさる)くんまで!?」


 もう1人の人影……勝がカナに手を差し伸べる。


「この前、側で支えるって言っただろ? カナさんを1人にさせたくない!」


 勝の言葉がカナの不安や絶望を吹き飛ばす。自分の胸の中が暖かくなるのを感じた。


「それにしても勝、どうする? 何だか世界の終わりって感じだよ」


 こんな状況でも天音はいつも通りののんびりとした口調で闇を見上げる。


「そんな事は知らない。ただここで逃げたら本当に世界の終わりかもな」


 勝も何処か他人事の様な口調で天音の質問に答える。でも2人とも目は本気だった。その勇気が2人に力を与える。


 雲が割れて空から2枚の黒いカードが天音と勝の元に降り注いできた。そこには死神が描かれてる。


「ねぇ、ミト、あれってもしかして……」


「うん、間違いない。あれは逆転を意味する()()()()()だね」


 カナがどうしても手に入れたかったカードは、天音と勝を選んだ。


「ねぇ、勝、何これ?」


「さぁ? でもこれなら勝てそうだな!」


 天音と勝が手にしたジョーカーはカードの形から鋭利な鎌に変化した。鎌を手にした2人はまるで死神の様に見える。


「行くぞ天音!」


「うん!」


 勝と天音は声を合わせ凶源の闇に立ち向かった。街に飛び散った小さな闇を次々に鎌を振って消しさっていく。


「どうする勝? 数が全然減らないよ! このままだと力押しされるよ!」


 縦横無尽に鎌を振り回しながら天音が勝に声をかける。


「とにかく耐えるしかないだろ! 天音、後ろだ!」


 闇の塊が天音を包み込むように広がって拘束する。


「ちょっと何するの! 離してよ!」


 必死に天音は抵抗するが闇は容赦なく絡みつく。


「天音! 今行く!」


 すかさず助けに入る勝だったが、目を逸らした隙を突かれて闇に捕まってしまった。


「くそ、油断した……」


 勝と天音の手から鎌が滑り落ちてカードに戻る。


「勝くん、天音ちゃん、今助けるから待ってて!」


 カナは2枚のジョーカーを拾うと、空にカードを掲げて力強く宣言した。


「ねぇ、ジョーカー力を貸して!」


 カナの声を聞いて、2枚のジョーカーが黒い光を放つ。カードの周りを闇が包み込むと、2体の死神が現れた。


──其方の願いは何だ? その対価に見合う願いを叶えよう。


 鎌を持って見下ろす姿は背筋が凍りそうなくらい恐ろしい。それでもカナは一歩も引かずに願いを口にする。


「お願い、凶源の闇をこの世界から消し去って!」

 

──それは無理だ……


 片方の死神が低い声で呟く。


「どうして無理なの!」


──其方1人では世界を救うための対価が払えない。


 もう片方の死神も低い声で断言する。


「そんなぁ……」


──ただし、お前の命と引き換えにすれば闇の一部を封印する事が可能だ。

 

 今度は両方の死神が同時に呟いた。


「分かった。じゃあ私の命を持っていって!」


 カナは両手を広げて死神を見上げた。


「カナちゃん! 何してるの! やめてよ!」


「カナさん! ダメだよそんな奴らの事を聞いたら!」


 天音と勝が必死に止めようとするがカナは首を振って2人の方を振り向いた。


「天音ちゃん、勝くん……今まで本当にありがとね。2人に会えて私すごく幸せだったよ……」


 カナの瞳から大粒の涙が溢れる。つられるように勝と天音も視界が滲みだす。


「これからも2人は仲良く元気で過ごしてね。2人は親友なんだから……」


 その言葉を最後に死神の鎌がカナを切り裂いた。


「カナちゃん!!!!」「カナさん!!!」


 天音と勝の叫びが重なる。切り裂かれたカナの体から無数の光の粒子が飛び出して天に登っていった。


 どんよりとしていた雲は晴れて、太陽が地上を照らす。凶源の闇はまるで何もなかったかのように消えていく。


「クソ、どうして! どうしてなんだよ!」


 勝はその場に崩れ落ちると、何度も拳を地面に叩きつけた。悔しさと悲しさが混ざって頭がおかしくなりそうだ。


 そんな勝の絶望とは対照的に、空は憎たらしいほど青かった。

ご覧いただきありがとうございました!

次回も18時頃に投稿します。

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