意気消沈
樹side
ボクのせいで正が入院してしまった。
ボクのせいで‥。
その事を考えると涙が溢れてくる。
あの時‥
正が気絶したので大袈裟かと少し思ったけど、妙な無騒ぎがしたので躊躇なく救急に連絡した。
その後のことはあまりよく覚えていないが、直前に晶くんに連絡した気がする。
「はぁ‥」
ずっとため息ばかりしている。
「正に嫌われちゃったかなぁ‥」
あの時、正を押し倒した事が頭によぎる。
もし正が倒れなかったら最後までしたのかなぁ‥。
「はぁ‥
ボクって最低だ‥
好きな人の寝込みを襲うとか‥」
後悔してまた涙が溢れてくる。
トントントントン
部屋の外から階段を駆け足で上がってくる音が聞こえてくる。
ガチャ
ノックもなくボクの部屋の扉が開けられる。
「いっちゃん!!」
お母さんがすごい剣幕でボクの名前を呼んでくる。
「お父さんから話は聞いた‥
で、あなたは何をしてるの?」
いつもの穏やかではなく怒った口調だ。
「何って、寝てるけど‥」
見たまんまを伝える。
「そんな暇があったら、正くんのお見舞いに行きなさい!!」
お母さんが激怒する。
「でも、面会は駄目って聞いたから‥」
茜さんから伝えられたことをお母さんに教える。
「茜ちゃんが言ったの?
クッ
手が早い‥。
その情報は嘘だからね。
さっき病院に電話したら普通に面会出来るって。
あんた、茜ちゃんに騙されたのよ。」
ってか病院に連絡したんだ!
お母さんの行動力すご!!
「でも、ボクが行っても迷惑かも‥」
正に嫌われている可能性があるので躊躇する。
そんなボクに見かねてお母さんが抱きしめてくれる。
「あの時、いっちゃんが悩んでるのを気づいてあげられなくてごめんね。
いっちゃんがあんなに悩んでいるとは知らなかったの。
いっちゃんがずっとずっと苦しんでたのを救ってくれたのは正くん。
正くんがいなかったらどうなっていたか‥。
いっちゃんのことを本気で心配してくれる正くんが、今回のことで嫌いになるわけないでしょ。
大丈夫だから‥」
お母さんがボクの頭を撫でてくれる。
「でも‥」
お母さんの話を聞いてもまだ正のところに行くのが怖かった。
「でもじゃない!
正くんを誰かに取られていいの?
私の勘だけど、茜ちゃんは正くんの事が異性として好きなはず。
茜ちゃんは頭が良いからどんな手を使ってでも目的を果たすはず。」
ドクッン
お母さんに正を取られると聞かされた瞬間、心臓が高鳴り始める。
「こんな所でいじけてないで、早く正くんのところに行きなさい!」
バッン!
ボクの頭を優しく撫でていた手が背中を叩く。
それはまるで魔法のようでボクに力を与えてくれる。
「ボク、正のところに行ってくる!!」
ボクはベッドから飛び起きると病院に行く準備を始める。
「正、待っててね。
今から逢いに行くから!!」




