入院1
目が覚めると知らない部屋で眠っていた。
ここは何処??
全く身に覚えがないので頭を整理しようと思う。
まずは腕に刺さってる管。
ベッドの周りのカーテン。
何処かで見覚えのある服装。
推理もクソもない。
ここは病院だ。
「ハハハ
たかが風邪で入院する?」
思わず独り言を呟く。
あれ?
きちんと薬を飲んで眠っていたはずなのに‥。
何か重要なことを忘れているような‥
何かを思い出そうとしていると見知った声が聞こえてくる。
「正、起きたのか?」
カーテンを開けながら晶が近寄ってくる。
「うん。
ねぇ、俺何で入院してるの?
確か風邪で家で寝てたはずだけど‥
晶が病院に連れてきてくれたの?」
晶がこの場にいるのでそう推測した。
「覚えてないのか?
マジで??」
何故か真顔だった晶が笑顔になる。
「それがお姉ちゃんが学校に行ってからのことが思い出せないんだ‥。
う〜ん、誰かが居たような‥。」
夢だったのか現実だったのか妙にリアルな感覚が残されている。
「だ、誰もいるわけない。
夢でも見たんだよ。
ほら、それより入院の件だけど‥」
晶が慌てて話題を変えようとしてくる。
だいたいこんな時は何か後ろめたい時だ。
「かなりキツそうだったから救急車を呼んだみたいで‥。
診察の結果は軽い肺炎だったけど、完治するまでは入院する事になってる。
先生の話だと7日ぐらいで治るらしい。」
みたい?
まるで救急車を呼んだのが自分ではなさそうな言い回しだ。
「7日かぁ‥
思ったより長いなぁ。」
1日で風邪を治すつもりだったので7日と聞いてガッカリする。
「病気だから仕方がない。
完治するまではおとなしくしてな。
寂しいなら毎日お見舞いに来てやるから。」
晶が笑顔で気持ちの悪いことを言ってくる。
「いや、来なくていいから。
それより、お父さんとお母さんは?」
肝心の親が誰も居ないのが気になっていた。
「お父さんは大事な会議だから今は来れないって。まぁ、夜に来るかも。
お母さんは今コッチに向かってる。」
お父さんには期待してなかったが、お母さんがコッチに向かってると聞いてホッとしてしまった。
ここであの人の事を思いだす。
「お、お姉ちゃんは?」
俺の問いに晶が難しい表情になる。
「もしかして、あんまり心配してない?」
晶の表情からお姉ちゃんの事が読み取れないのでどうしても悪い風に考えてしまう。
「はぁ?
心配しないわけないじゃん!
逆だよ!逆!
心配し過ぎてヤバい行動に‥
あっ、来た!」
晶がそういうと、病室の扉が開かれる。
「正、大丈夫?
お姉ちゃんが来たから大丈夫よ!
今、お医者さんに話をつけてきたから‥‥もう安心。
私がココに泊まり込むから!!」
お姉ちゃんは近づいてくるなり抱きつくと頬を擦り付けながら、とんでも無い事を口にするのであった。




