双眼鏡
「晶くん、おはよう。」
「‥‥‥」
「何で、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてるの?
そこまで驚いてくれると早起きした甲斐があるよ。」
早朝にランニングをしているといきなり彼女の栞里に声をかけられ驚いて声が出ない。
「どうして‥」
やっと絞り出せた言葉は月並みな言葉だ。
「ハハハ
私が何年晶くんの彼女をしてると思ってるの?
晶くんの事なら何でも知ってるよ。
交友関係から性癖まで。」
俺の彼女には全てお見通しのようだ。
「ってか、体育祭のクラス対抗リレーに自分から立候補したから‥」
「いや、それでも俺がこの時間にこの場所を通るのは分かるはずがない。」
仮に早朝ランニングしてる事がバレたとしても、この場所を通るのが何故わかったのだ?
「ハハハ
早朝ランニングについては、正くんに本気で勝ちたいだろうから、練習するのは分かってた。
あとはコースの事だけど、たまたま早起きして双眼鏡を覗いていたら晶くんが家を出ていくのを見かけたから‥。
予測するのは簡単だったよ。」
早起きは理解出来るが、双眼鏡で覗くはどうなんだろう。そもそも栞里の家から俺の家までは結構な距離があるはず‥。
「いくら双眼機でもあの距離は無理じゃない?」
1キロぐらいは離れているから無理なはず。
「ハハハ
一般的な双眼鏡なら無理だけど、軍用のなら楽勝だよ。」
栞里が何処か誇らしげに語っているが、そもそも何で軍用の双眼鏡を持っているんだ??
俺の彼女はたまたま軍用の双眼鏡を覗いていたのか?
正直、この事についてはもっと追求したいのだが今は時間が惜しい。
俺は後ろ髪を引かれる思いで、練習を再開するのであった。




