リバーススキュラ
リバーススキュラは俺達に気付いたようで
大きな悲鳴のような叫び声を上げた。
ヒステリックを起してる女性のような甲高い声。
その悲鳴は何を意味しているのかは分からないがな。
俺達を見付けたことに対する歓喜の雄叫びか?
俺達を見て、怯えて威嚇をするための雄叫びか?
醜い姿を見られた事で発狂した悲鳴か?
そのどちらだったとしても、俺達があの化け物に挑む未来は変らない。
動揺はあるかも知れないが、躊躇いは存在しない。
俺達があの化け物に挑む…この未来は変らない。
「さぁ、来たぞ」
リバーススキュラが俺達の方へ向って、素早く這いずり近寄ってくる。
地面が揺れる程の大きな振動が俺達を襲った。
まるで地震だ。しかし、あいつはずっと這ってるが、腹とか痛くないのかね?
「どんな場合でも、先に優位性を手にした方が有利だ。クロ、新魔法…試してみるか?」
「ん…」
「じゃあ、一緒に使って見るか。先制攻撃だ」
「はぁ? 何でお前と一緒に使わないと行けないの? マリスと一緒なら別に良いけど」
「おいおい、俺に威力で負けるのが恐いか?」
「は! 上等。どっちが強力か勝負!」
俺をライバル視しているようだからこう言う場面では扱いやすい。
俺達は2人で背中を合わせ、リバーススキュラに指先を向け、意識を集中する。
「合わせろよ?」
「お前が合わせろ」
伸ばしている手をお互いに引っ付けて見る。
同時に近い場所でぶっ放せば高威力になるかと考えたからだ。
「ポイントショック!」
指先から目にも止まらぬ速さで放たれた魔法。
近場で発動したからなのか、魔法は巨大化し、リバーススキュラを貫いた。
「うるさ!」
同時にリバーススキュラが女性の悲鳴のような叫び声を上げる。
その叫び声は、最初に聞いた声よりも巨大だった。
当然、結構な破壊力だったようで彼女の脳天を完全に貫いた。
この一撃でリバーススキュラは頭部を破損、背中から出ていた
3匹の犬の内、真ん中の犬が動かなくなると言うという大打撃だ。
リバーススキュラはその場から動かなくなるほどに強烈だったようだ。
「一緒に撃ったからどっちが破壊力が上だったか分からなかった。
と言うか、私に引っ付くな」
「同時に指先からぶっ放すなら、この格好の方が威力出そうでね。
まぁ、実際は最初から勝負するつもりはなかったし俺は構わないが」
「な! 騙し!」
「喧嘩しないで…」
「……分かった、でもリバーススキュラ弱かった。
SSランクとか絶対嘘」
「…いた、警戒をとかないで」
「ん?」
レベッカの言うとおり、今は警戒を解かない方が良い。
リバーススキュラは頭部の損傷を治しているように見えた。
このまま再び動かれたら、また結構面倒だぞ。
「間髪入れないで攻撃だ! 動けないうちに叩け!」
「う、うん! れ、レベッカ! 私達も新しいスキルを!」
「そ、そうね!」
「…この場合どっちが良いのかな? えっと…決めた! 瞬撃だよ!」
「ば!」
瞬撃のスキルは瞬時に間合いを詰めて5発叩き込む技!
そんなのをこの場で使えば、瞬時にあいつの近くまで移動するだろ!
使い方次第じゃ、良い不意打ちになるが、ここは不味いって!
「それ!」
「マリス! それじゃないって! 間合い詰め過ぎだ!」
俺の足は既に動いていた、マリスが距離を詰めた瞬間に動いていた。
自分自身は意識してないけど、勝手に、無意識に既にマリスの方へ走っていた。
マリスの攻撃は5発、リバーススキュラに炸裂する。
瞬撃は距離移動が激しいため、場合によっては緊急回避にも使える。
しかしだ、今回の瞬撃は敵に近付き5発たたき込み、更に相手の向こう側に距離を取った。
と言う事は、マリスは今完全に孤立している状態になる訳だ。
最悪の可能性はマリス攻撃後、リバーススキュラが目覚めマリスに攻撃を仕掛けること。
こうなると、マリスでは回避は困難だし、防御もほぼ不可能になる。
そして嫌な予感は大体当るのが関の山。すぐにリバーススキュラは起き上がり
孤立状態になってしまったマリスへ攻撃を仕掛ける。
「あ…」
「俺の妹に手を出すなぁ!」
反射的に身体が動いていた俺は、ある程度の間合いまで距離を詰め
ギリギリブレイブスマッシュの射程内へ入れた。
「ブレイブスマッシュ!」
ルアに大剣を手元に出して貰い、全身全霊を込めてぶっ放す。
俺がぶっ放したブレイブスマッシュはリバーススキュラの腕を破壊。
マリスへの攻撃を強制的に中断させることに成功した。
「セイナ!」
「げ!」
だが、大きな隙が生じる大剣によるブレイブスマッシュ。
その隙が発生している間に、蛇が毒液を俺へ飛ばしてきた。
正直、この状態で体勢を立て直して毒液の範囲外に逃げるのは困難!
「させない! 鳳撃!」
俺へ飛ばされてきた毒液、だが、その毒液は俺に当る前に蒸発する。
背後から飛んで来た、鳳凰のような形状をした火を纏った矢。
その矢が俺へ飛ばされた毒液を貫き、焼き払い、リバーススキュラを捉える。
「マリス! 急いでこっちに!」
「う、うん!」
鳳撃により大きな隙を作ったリバーススキュラ。
その間に、マリスを何とかこちら側に連れ戻す。
だが、リバーススキュラはマリスを狙い腕を伸ばした。
「させるかこのキモいの!」
その手を、俺は大剣で叩き潰し、切断して無理矢理抑える。
だが、もげた手首がすぐに独自に動き、俺を掴もうと飛んで来る!
「自立で動けるとかキモい!」
「それはさせない! ショートスナイプ!」
「うぉ!」
俺の方に飛びかかってきた手が俺の死角から飛んで来た弾丸を食らい
一瞬だけ動きを鈍らせ、少し仰け反るが、すぐに戻ってやって来た。
「させないわ!」
だが、その手をポーラさんが止めてくれる。
「ありがとう、お陰で助かりました」
その後、体勢を立て直し、その手を切り捨てる。
大剣は高威力だからな、手なら簡単にきれちまう。
流石に手、単体が真っ二つになった場合は自立しないようだ。
同時にあのリバーススキュラが小さな声を上げる。
何かピンクっぽい小さな塊が結構な速さで飛んでくる。
確か本体は魅了の魔法を使うとか! まさかこれが!?
「ポーラさんごめんなさい!」
「うわ!」
その塊に気付いていないポーラさんを蹴り、射線から逃がす。
俺もすぐに後方に仰け反り、射線から逃げる。
「ホーリーショック!」
背後に飛び乗っている間にリバーススキュラに向けて追跡弾を放った。
俺の手元から真っ白な綺麗な光弾が出て来て、対象へ飛んでいく。
この光りの弾はリバーススキュラに接触すると同時に強く光り輝いた。
何があったかは分からないが、その強い光の後
リバーススキュラが大きく怯んだところから考えて
見た目以上に高威力だったのだろう。
「でも、別に動く部位がいくつもあるってのは困るって!」
しかしだ、あいつの背後に付いている巨大な犬が動き
本体が怯んでいるというのにこちらを焼き払うように炎を吐く。
かなりの広範囲! ヤバいって! これは逃げ切れないぞ!
「マリスは死んでも守って、インサーレーション」
俺達の目の前に青っぽい壁みたいな物が展開されて
犬の頭が放ってきた炎を全て弾いてくれた。
これはクロの防御魔法…へぇ、魔法使いって色々出来るんだな。
とは言え、こう言うタイプは基本貫通に弱いと相場が決っている。
だが、向こうは面の攻撃だから、この壁は貫けない。
「よし、マリス。合図したら鳳撃を、ターゲットは犬だ」
「分かった」
多少距離を取り、クロの防御魔法が消えた直後に俺はマリスに指示を出す。
同時に俺は指先をリバーススキュラに向けた。
「ポイントショック!」
「鳳撃!」
マリスの鳳撃はリバーススキュラの犬を貫き焼き払い
俺のポイントショックはリバーススキュラの正面から完璧に入り
彼女の頭頂部から骨盤までを綺麗に貫いた。
「……」
上は潰し、本体と思われる方にもかなりのダメージを与えたはずだ。
とは言え、警戒は怠れ無い…何処までの損傷なら癒やすのか分かりゃしない。
「さぁ、どうだ…」
俺達は全員、武器を構えてリバーススキュラの動きを見る。
マリスとレベッカは弓を引き、リバーススキュラを狙い
メリーは銃口を向け、クロはグリモワールを僅かに開き
片手で持ち、腕を伸ばして敵に向けている
少年漫画とかでよくあるな、確か八双の構えとか言ったっけ。
それを本でやるのか、まぁ格好いい気がするけど。
「ん?」
リバーススキュラの全身の皮膚が一瞬、虫が這ったように動いた。
嫌な予感がすると同時だ、リバーススキュラの皮膚をぶち破り
大量の血しぶきと共に、中から滅茶苦茶な量の触手が飛び出してきた。
やはり嫌な予感は的中する。
「ひ……う、うぅ…き、気持ち…悪い…」
「テメェ! よくも俺の妹の気持ち悪い映像見せてくれたな!
グロか! グロ系か!?」
「最初から見た目キモいのに、更に気持ち悪くなるとか聞いてないわよ!」
「ど、動揺してる暇は無い! 迎撃しないと!」
「マリス! お前は下がってろ! レベッカの後ろに隠れさせて貰え!」
「う、うぅ…こ、腰が抜けて……う、動けないよぅ…」
た、確かにあの血しぶきが飛び散る瞬間は…マリスにはショッキングすぎるか。
とは言え、もう触手はこちらに向かってきてる…マリスを逃がす暇は無い!
「なら、そこを動くなよ!」
俺はマリスの前に立ち、触手達の射線からマリスを隠す。
……マリスはまだ小さい。あんなの見せられたら腰が抜けるのは仕方ないだろう。
「お、お姉ちゃん……」
「何だよ!」
「じ、実は……お、おしっこ…」
「それは後で! 我慢しろ!」
「……してたの」
うん、最後の一言で察した! だが後ろを見る暇は無い!
最悪なのは俺ではなく、どう考えてもマリスだよな。
とにかくやるしか無い! マリスは死んでも守ってやる!




