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褒美

人型のモンスター達を捕縛することに成功した。

そして、今回の事で俺達の存在は公になった。

本来ならばこの事態になるまでまだ時間が掛ったはずだが

アイルが捕まった事により、時期が一気に進行してしまった。


「セイナ・ドライ。前へ」

「はい」


更には感謝の印として、女王様直々に褒美を貰うという事態に。

こんな事態になってしまうとは、正直俺は想像もしていなかった。

とは言え、イリアさんに見いだされた地点でこうなることは確定に近かったそうだ。


今回の褒美は全員への褒美ではあるが、最も活躍したと判断された

俺が代表してその褒美を貰う事になってしまう。

と言うか、俺以外が完全に硬直してしまったため、俺くらいしか冷静に行動出来な事態に。

その為、俺が代表をする事になってしまった部分もある。


そりゃあ、唐突に女王様の姿を見て、更には近付き褒美を貰えとか衝撃がでかすぎる。

俺は既に、3人で面会しているから、まだ緊張はしないけどな。

とは言え、この場面はやはり緊張してしまう。


何せ、女王様の雰囲気も前までとは全然違うお仕事モードだし

周囲にはクソ大量の兵士達が居るし。

民衆も滅茶苦茶こっちを見ている。そりゃ緊張するよ。


「此度、あなた方は人類に潜伏したモンスター達の拘束に多大に貢献してくださいました。

 兵士達の手に負えないモンスターとも共に戦い、勝利を収めてくださいました。

 よって、その活躍を称え、直々に褒美を与えましょう」

「は、はい、み、身に余る光栄でございます」


こう言う場合、どう言うのかはイリアさんから教わった。

しかし、咄嗟の場面で台詞を忘れてしまい、ありきたりな事しか言えなかった。

更には緊張のあまり、声が上ずってしまう…恥ずかしい!

やっぱり無理だよ! この場面で緊張しないでとか!

た、確かに俺は女王様よりも上の人物と知り合いではある。


と言うか、この世界の創造主と知り合いではあるが、あいつは威厳無いし!

何か別に緊張する要素無いし! 神様とは言え、神様っぽくないし!

蝶々だし! めっちゃ蝶々だし! 


(……あのですね、全て聞えてますよ? 威厳がないとかふざけてるんですか?)

(……)

(…まぁ良いですよ、余裕無いでしょうし)


何も言えない、何かを言う余裕は全く無い! 目の前の光景がヤバすぎて何も言えん!


「そう緊張なさらないで、私は国の主ではありますが、あなたは国の英雄。

 国を統治する者と、国を救った者。緊張をする間柄ではありません。

 我々は、守られた立場なのですから」

「ひゃ、ひゃい!」


緊張をほぐそうとしてくれているのかも知れないが、全くほぐれない!

しかし、俺のこの反応を見た女王様が、イリアさんと3人で話をした時みたいな

楽しそうな笑顔を見せてくれた…そのお陰か、何だか肩の力が抜ける。


「ふふ、慣れない場では仕方ありませんか」

「……は、はい」

「どうやら、少しは緊張がほぐれたようですわね。

 では、褒美を授けましょう」


女王様は近くで待機していたイリアさんから首飾りを受け取った。

その首飾りにはいくつもの宝石と、モニアドールの紋章が刻まれていた。


「此度は国を救っていただき、感謝いたします」


そして、女王様の前で跪いている俺にその首飾りを掛けてくれる。

どうやら、これが女王様が言っていた褒美だったようだ。


「ありがたき幸せ」


何処かで聞いたような台詞を言い、俺はゆっくりと立ち上がる。

そして、女王様にお辞儀、更に振り向き、民衆やら兵士やらに大きなお辞儀を行なった。

この行動の直後、民衆達から歓喜の声が上がる。


「お姉ちゃん…」


そして、我が妹マリスが嬉しそうに俺の姿を見ているのを確認した。

目をキラキラとさせ、何だか尊敬の眼差しも感じる。

この姿を見たお陰で、俺の中にあった緊張は一気に無くなった。


「これからも我がモニアドールをお守りください」

「はい、お任せください」


俺は国の為に何かをしたいわけでは無いけどね、と

心の中で呟くことが出来るだけの余裕があった。

女王様の微笑みとマリスの姿を見たからだな。


その後、この式は終了し、俺達はいつも通りにイリアさんの家に戻る…前に

女王様から呼ばれて、前に話し合いをした部屋へ全員で向うことになった。

そして、大きな扉の前で俺達は立ち尽くした。


「……嘘、ちょっと待って。え? 本当? え? 嘘よね!」

「お、落ち着きなさいメリー! 落ち着くのよ!」

「む、無理無理! だ、だって…じょ、女王様がこの扉の向こうに居るのよ!?」

「なんで緊張してるの?」


この場で緊張をしていないのは俺、イリアさん、マリスの3人だった。

マリスは多分、女王様が何なのかいまいち把握していないのだ。

俺とイリアさんは普段の女王様を知っているから緊張はないけど。


「だ、だって! 女王様よ!? じょ、女王様がこの向こう側に!

 し、しし、しかも、わ、私達だけで会うとか!」

「わ、私、隠れる」

「クロちゃんもちゃんと来ないとダメよ?」

「い、いや、わ、私は!」

「折角綺麗なドレスを着てるんだし」

「た、確かにドレスは綺麗、マリスのドレス可愛い。

 悔しいけど、セイナのドレスも可愛い」

「なんでさらっと褒めてんの?」

「で、でも、私のドレスは可愛くないというか、私が可愛くないから!

 じょ、女王様に見せたら何だか悪いし」

「何言ってるの? 可愛いわよ?」

「む、無理!」

「だ、駄目よクロ、あなたも一緒に行くんだから。

 ひ、1人だけ何処かに行くとかあり得ないし!」

「女王様とご対面できるんだから、凄く名誉な事よ? 何で逃げようとするの?」

「め、名誉が重すぎて、私が潰れる!」

「わ、私も…と言うか、なんでちょっと前は田舎の村で過ごしてたのに

 この短期間で女王様と面会をする何て事に! 無理です! 私も緊張が!

 て、手が、手が震えますぅ!」


レベッカの緊張がヒシヒシと伝わってくる。

まぁ、あの式に呼ばれたってだけでガクブルだったしなぁ。

とは言え、これは仕方ない事だ。俺も最初、女王様と話ってなった時

どうしようも無い位に緊張したし…


「ほら、そんな風に怯えないでも大丈夫だって。

 誰もあなた達を殺したりはしないし、食べたりもしないし」

「へ、下手な事を言ってしまえばきょ、極刑に!」

「なるわけ無いでしょ? あの子は暴君じゃないから」

「む、無理です! 引っ張らないでぇ!」

「ひぃ!」


そのまま強引に、俺達は全員を扉の向こうへと連れて行く。


「ふふ、随分と緊張なされてるのね」

「ひゃひ! じょ、女王様!」


扉が開かれ、女王様を前にした全員が緊張で硬直。

少しして、クロが俺の背後に身を隠した。

俺の背後なんだ…てっきり、マリスの背後に隠れるかと。


とか思ったが、マリスの背後に隠れるのはあり得ないのか。

何せ、彼女はマリスの姉になりたがってるからな。

妹の背後に隠れるのは姉としてのプライドが許すまい。


「そう緊張なさらないで、さ、こちらへ」

「ほら、行くわよ」

「あ、足が震えてぇ…」

「もぅ、怯えないで」


何とか皆を誘導し、俺達は女王様の前に座る。

その後、扉が閉まり俺達だけの空間になる。


「……ふぅ、全く随分と緊張してるわねぇ」

「へ?」


扉が閉まり、少しすると女王様の雰囲気が変る。

これは俺も経験したことで、彼女が本来の性格を出しただけだ。

当然、この女王様の豹変を見たメリー達は唖然としていた。


式の時はあんなにもお淑やかで凜としていた女王様が

扉が閉まると同時に、ここまで垢抜けた性格になるのだから。


「緊張する必要無いって、私、そんなに緊張されるような奴でもないからさ」

「え? あ…え?」


メリー達の動揺は止まらない。ここまで変わると誰が予想できようか。

予想は出来ないだろう。知らない限りこんなの想像出来るはずがない。


「いやぁ、驚いてるわねぇ」

「そりゃね、式の時はあそこまでお淑やかな感じだったのが

 いざこの場になったら、ここまで垢抜けてたらね」

「い、イリアさん!?」


イリアさんの無礼な態度にメリー達が驚いた。

俺も最初驚いたし、この驚きは当然だな。

だって、女王様に対してあの口調だぜ? そりゃビビるわ。


「あぁ、そんな驚かないで、私とイリアねーさんは親しい仲だし」

「へ!?」

「この子達に詳しい話してないの? 通りでこんなに緊張してる訳だ」

「セイナちゃんに話した時みたいにちゃんと話しましょうか」


イリアさんは全員に自分達の関係を解説してくれた。

何でこの場ではここまで垢抜けた性格になるのかも詳しく。

全員は動揺を隠しきれてはいないが、多少強引に納得する。


「さて、と言う訳で今回の1件。本当にありがとね。

 お陰でモンスターの脅威を押さえる事が出来たわ」

「いえ、女王様が協力してくださったからですよ」

「あはは! 協力してくれたのはそっちの方だけどね。

 しかし、ぷふ、式の時のあなた、本当に面白かったわ!」

「う…」

「だって、あんなに緊張しちゃって! 声まで上ずって

 あはは! あげく噛んでたし! ぷふー!」

「そ、それはあんな場面だったら流石に!」

「くく、いやぁ、普段は凜としててめっちゃ頼りになる感じだったけど

 あれね、あなたも案外同じ人間で、そんで子供だって分かったわ!」


普通の子供ならば、あの場面でしっかりと受け答えは出来ないと思う。

中身大学生だからこそ出来る荒技だ。

それでも、あの場面は緊張したというかマジ無理だった。


「ま、本当に感謝してるわよ。しかしごめんねー

 今回の件であなた達を公に示しちゃって。

 本来はあまり目立ちたくなかったんでしょ?

 でも、私としてはどうしてもね、ハッキリと示したくてさ」

「いえ、お気になさらずに」


その後、ささやかな話をした後に俺達はイリアさんの家に戻る。

メリー達は終始硬直したままで話には参加しなかったが

仕方ないだろう。

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