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山上の道

…目を覚ますと、少し理解できない状況になっていた。

ここ、何処だよ…何で山の上に居るんだろうか。

と言うか、左側すぐ崖で何か恐いし。

うーん、通常ルートで行っていれば山なんてないだろうに…

いや、確か山を登る場所もあったけど、距離的にまだだと思うし

あのルートは崖なんて無い筈。

それに、何か尻尾が重いし…あ、イリアさん…抱き枕にしないで欲しい。

まぁ、俺の尻尾はもふもふだし、抱きしめたい気がする。

でも、自分の尻尾だし…動かせば自分で抱けるか。


「ふぁぅ…おはようさん」

「あ、おはよう、お姉ちゃん」

「なぁ、色々と聞きたいんだけど、まずはイリアさんをどかして欲しい」

「う、うん」


何とかイリアさんの腕を動かして尻尾を離させた。


「さて、それじゃあえっと…ここは何処だ?

 どう考えても最短ルートじゃないよな?」

「うん、実はね」


ひとまずマリスとレベッカにここに移動することになった経緯を聞いた。

真っ昼間から歩き回るアンデッド……どうなんだろう、普通か?


(なぁ、アンデッドが昼間に動くのは)

(異常ですね、アンデッドは基本夜間に動きます。

 お昼では活動できません、大体のアンデッドがそうと言うイメージがあります」

(なぁ、俺もそんなイメージがあるけど…じゃあ、なんで昼間に…)


少し、いやな予感がした、きっとアリスさんから色々聞いたからだ。

本来夜間に動く筈のアンデッドが真っ昼間に活動。

これは既に異常、しかしながらこんなこんな事態が実際起こっている。

この事態を起すことが出来るのは何だ? あぁ、当然最初に出てくるのは

ネクロマンサー…そいつがこの場所に来ている可能性があるという事だ。


「排除すればそのルートを通れたとは言え

 やはり異常事態ですし、私も嫌な予感がしたので

 独断でルートを変更させて貰いました」

「あぁ、ありがとう。

 でも、山のルートを選んだのは何でだ?」

「嫌な予感がしたので、全体を見渡せるようにですね」

「あぁ、だから今は止まってるのか」

「はい」


ひとまず俺も馬車からでて、周囲を見渡すことにした。

…んー、ワーウルフの特性か、結構見えるけど

しかしアンデッドの群れは見えないな。

チラホラ動いてるアンデッドは見えた…


「だが、やっぱり正規ルートの方が良かったかもな。

 道中の村が襲われてる可能性もあるし」

「あの道に村はしばらくありません、村がある可能性が高い道を選んでます」

「こっちがそうなのか? こんな山上に?」

「山をくだれば村がよく出てくるんですよ」

「ふーん、そうか、なる程」


だからこの道を選んだのか、村が多い方が良いしな。

とりあえず地図を開いてこの道を……えっと、俺が寝る前の場所がここで。

で、ここから近場の山を通る道は…あ、あった、そうかそうか。

こっちの道だと到着時間が3日ほど伸びそうだ。

だからこっちのルートを選ばなかったんだ。


「しかし、なんでアンデッドが集団行動してないのかね」

「アンデッドは基本集団行動はしませんよ?

 集団行動するのはゾンビ位です、性欲が活性化してる方の」

「いやまぁ、そんな話は聞いたことがあるんだけどな。

 でも、今回の件はどう考えても異常、夜間にしか動けないはずの

 アンデッドが昼間に活動しているんだから」

「どんな現象が…いえ、私も少し想定はしてますけど…話は聞きましたし」

「だろう? だからレベッカも道を変える選択をしたんだろ?

 その可能性があったから」

「その可能性って?」


マリスの疑問に対し、俺とレベッカは同時に口を開き告げた。


「あのアンデッド達がネクロマンサーの配下であるという可能性」


現状、俺達が知ってる情報を総合し、最も可能性があるのはこれだ。

と言うか、これしか考えられないんじゃ無いかな。

だから警戒してこっちに移動したんだろう。

もしかしたら偵察であると言う可能性もあるわけだし。

とは言え、それよりも重要なのが村の保護だったかも知れないが。

現状、依頼人の護衛をしている最中に危険に首を突っ込むと言うのは

間違いなく褒められたことではないだろう。

しかしながら、この選択がお互いにとって最善策であると言うのは違いないはず。

最短ルートで移動して、アンデッドに位置を把握されて襲撃を食らうよりは

可能な限りアンデッドとの接触を避けるルートを選ぶのは正しい選択だろうしな。

村を守るというのは…正直、あまり効果はないだろうが、

何もしないよりは足止めになるだろうからな。


「ネクロマンサー?」

「…あぁ、聞いたことあるわ、最近湧いてる面倒なモンスターだっけ?」

「い、イリアさん!? お、おはようございます」

「おはよう、いやぁ、もふもふの抱き枕が無くなったから目が覚めちゃったわ」

「そ、それは災難でしたね」

「そう思うなら、もう一度その尻尾を抱きしめさせて頂戴?」

「いえ! 尻尾を触られるのは得意ではないので!」

「あら、連れないわねぇ」


尻尾をこれ以上、抱き枕にされるのは本当勘弁して欲しい。

触られると変な感覚になるんだから…心臓に悪いような感覚に。

あんな物、マジで勘弁して欲しい、もう2度とあんな感覚には陥りたくない。


「でも本当、凄く抱き心地良いのよね、その尻尾」

「は、はぁ」

「……」


あれ? 何で喋らなくなった? 何を考えているんだ?


「……その尻尾を剥いで売れば、お金になるかしら」

「な!?」

「へ!?」

「はぅ!?」


イリアさんの一言に、この場にいる3人全員が同時に反応。

レベッカも反応したため、馬の操作が一瞬狂い、馬車が大きく跳ねた。


「あらぁ! いったあーい!」


その勢いで馬車を転がり、イリアさんが後頭部を強打。

同時に俺達は1箇所にかたまる。


「な、何という恐ろしい事を…」

「し、尻尾を剥いだら、し、死んじゃいますよ!」

「じょ、冗談よ、そ、そんな全員で隅っこに寄って震えなくても…

 そもそも、私が正面からあなた達に挑んで尻尾を剥げる筈が無いわぁ~

 寝込みを襲わないと」

「恐いんですけど!? 手段を啓示した事でリアリティーが増しましたが!?」

「勿論冗談♪ うふ、からかうの面白いわぁ~」


有名所の商人であるという事、超が付くほどのお金持ちであるという事。

あそこまで1人で旅をしていたという事、色々と考えて

この人の冗談を冗談だと理解できるはずも無い。

と言うか、最初に冗談だと思えない…

割とマジに聞える、と言うか、本気なんじゃ無いだろうか…


「それにね、剥ぎ取ると言う面倒な行動はしないわよ。

 どう考えても生産効率が悪すぎる物」

「いや、否定の仕方まで恐いんですけど、生産効率が悪いって…」

「でも、尻尾を剥いでも1日で尻尾がまた生えてくると言うなら結構」

「止めてください! 冗談でも恐い!」

「大丈夫大丈夫、尻尾を剥いで売っても、腐るから売り物にならないし」

「否定の理由がさっきっから現実的すぎて恐い!」

「剥ぐくらいなら、抱き枕店を経営して、ワーウルフをがんじがらめに拘束して

 で、尻尾だけを隣接する部屋に出して、抱きしめて貰うわ」

「恐いんですよぅ! そう言うのぉ!」

「うふふ、可愛いケモミミちゃん達が馬車の端っこに寄り添って

 お互いを抱きしめ合ってる姿…眼福…あら、いけない、鼻血が出て来そう

 愛おしい子供達を愛でるのはやっぱり幸せねぇ!」

「愛おしい子供だと思うなら! 苦しんでる姿を見て楽しまないでくださいよ!」


うぅ、なんて事だ、さらっと恐ろしい方で、お?


「な、何だ!?」


俺達が馬車の隅っこで抱きしめ合ってると、馬車が大きく揺れた。


「う、馬止めたんじゃ無いのか!?」

「と、止めたはずで、ひ!」


馬車の中に矢が飛んできた!? おいおい、冗談じゃ無い!


「アンデッド!? スケルトンです!」

「やっぱり弓矢を撃つのは骨の方なんだな」

「お、お姉ちゃん! 悠長なことを言ってる場合じゃないよ!

 い、急いで攻撃を!」

「因みに俺がアンデッドの立場で馬車を狙うという状況なら

 やっぱり相手の希望を断つために包囲をする、そして馬を潰す」

「え? 何を言って」

「じゃあ、ハッキリと言う、馬を守りながら走り抜けろ、正面突破だ!」

「は、はい!」


俺は急いで馬の背中に乗る、馬車から少し身を乗り出せたことで

周囲を少し見渡せた、あぁ予想通りアンデッドがこっちに来ている。

ここは山、左側は崖だから左方向からの攻撃はほぼ無い。

攻撃の可能性があるのは正面と右側面。

背後からは馬を狙えず、右斜めからも馬を狙うのは難しい。

特に全力疾走の馬を撃ち抜くのは困難を極めるだろう。

ならば、攻撃が可能なのは正面と右側、そこを迎撃する。


「マリス! 左の馬に乗って! 正面のアンデッドを撃ち抜いてくれ!」

「分かった!」


マリスは左の馬に飛び乗ると同時に弓矢を構え

正面のこちらを狙っているスケルトンの頭蓋骨をぶち抜く。


「急げぇ!」

「はい!」


マリスが道を開いたのを確認し、馬車が加速、正面突破を計った。


「っとと!」


その間、飛んで来る矢は俺が剣で迎撃したり、叩き落とす。

だがまぁ、アンデッドの狙いは馬では無く、あくまで乗っている俺達だった。

将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、割と基本的な戦術が出来ちゃ居ない。

この事から考えられることとしては、このアンデッド達には指揮系統が無いと言う事か。

もしくは排除対象をインプットされてて、その排除順位が馬よりも人なのか。

まぁどちらにしても、俺達が馬に乗るという選択をしたのは正しかったと言える。

俺達を囮にして、馬を防衛出来たのだから。


「よし、アンデッドの待ち伏せは!?」

「見えない!」

「上手く行ったか…ん? 何だ、視線…?」


近くの森で何か大きな物が動いた音が聞えた。

何かいたのか? この速度で移動する馬に付いてきてたって事か?

それとも、ただの動物? …アンデッドなら、襲撃を仕掛けてこないのは不自然だし…

でも、何か不気味な雰囲気だな。


「…今日はすぐに村で休むか」

「なんでですか? まだお昼にも」

「この状況で野宿は流石に辛いからな」

「た、確かにそうですね」


アンデッドが何処にいるか分からない状況で野宿は辛い。

それよりは、まだギルドがあるかも知れない村に行って泊めて貰った方が良いだろう。

ギルドがあれば、今回の襲撃についても話したいしな。

っと、村が見えてきた、今日はのんびり休むかな。

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