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ベアードブースの討伐

レベッカの後を着けながらの熊捜索。

やっぱりこう言う場面は緊張するな。

しかしだ、ワイルドハントの時とは違い

今回はのどかな雰囲気は無かった、理由はすごく単純

騒がしいからだ、木々を殴る音も聞えるし、木が倒れる音も聞える。

もうすでに何処かに何かがいると言うことが分かる。

狩りのコツとやらを知らない俺でも分かる簡単な物音だ。


「予想通り、かなり荒れてますね」


木に隠れながら移動し、例の熊のモンスターを発見した。

あんなにドデカい音を鳴らしてたらすぐに場所が分かる。

自分は狩る側、狩られる側に回るとは思って無いと言う事だな。

しかし、近場に見える木にあった大きな引っ掻き傷。

木の芯まで削られているように見える。


「一撃でざっくり、ですね」

「あぁ、見て分かるよ、あいつが暴れてる姿を見れば」


あの熊のモンスターはガンガン木を破壊して行ってる。

それも殆ど一撃だ、深い一撃で綺麗に倒している。

何と綺麗な切れ跡か、こりゃ相当鋭利だな。


「どうも切れ味が相当ある様ですね、あの熊」

「名称なんだっけ」

「ベアードブースだったと思います、でも、熊の方が言いやすいですね」

「だな、熊で良いか」


別に熊がこの場に居るわけじゃないし、熊でも問題無いだろう。

その方が分かりやすい、姿そのままだからな。


「しかしどうしましょう、隙だらけな背後ですね」

「狙うか?」

「…いえ、少し危険だと思います、失敗したときが不味い。


あそこまで荒れてる奴への攻撃が失敗したとなると相当やばいからな。

一気に俺達へ攻撃が飛んで来る、それはちょっと不味い

いや、ちょっと所じゃ無い、超不味いか。


「もう少し近付きましょう」

「恐いな、それは」

「確実に当てられる距離まで近付かないと不味いですからね」

「分かったよ」


俺達は慎重に暴れ回ってるあの熊に接近していった。

一撃を確実に当てるために、出来るだけ近くに。


「じゃあ、俺は少し移動する、何かあったときに死角を作れるよう」

「お願いします」


俺はこそこそと移動し、あの熊の側面に付いた。

ここなら、もし何かあったとしてもすぐに動ける。


「よし、この位置なら、マリスさん」

「うん」


2人が弓を構える、しかしよほど耳が良いのか、弦が軋む音に反応した。


「まさか…」

「ち」


俺は不味いと判断、わざと木の枝を踏むことで音を立てる。


「が!」


確実に大きな音を出した、俺の方にあの熊はすぐにむき直した。

さて、これは想定通りだが、足止めをするのは辛い。


「くぅ、動きが速い…」


流石に動きが速いか、これは何とか止めないと、マリス達が動けない。


「がぁ!」

「ち!」


俺は急いで剣を抜き、熊の爪による攻撃を止める。


「うぉ!」


重い! い、一瞬腕が持って行かれそうになった!

筋力その物は格闘(特大)の影響でかなりあるはずなのに

それでも一瞬、俺の剣を引っ張りそうになる位の怪力!

これは、何度も受けられない、ち! 前に遭遇した熊より強ーぞ!


「この!」


何とか後方に飛び退き、熊の追撃を回避することは出来た。

だが、このままでは照準が定まらないだろう。

俺が逃げていれば、マリス達はこいつを狙えない!

素早い動きに対処するのは難しいだろう。

いや、狙おうと思えば狙えるのかも知れないが

1発失敗したら全滅の可能性が濃厚になってくるこの場面だ、そう打てないはず。


「マリスさん、そのままここに」

「う、うん」

「合図をしたら」

「分かった」


さて、あの2人はどう動いてくれるかな、この猛攻を避け続けるのは正直厳しい。

ん? 何だ? レベッカが動き始めたぞ? マリスの位置は変ってないのに。

……もしかして、一瞬動きを止めるために…良いだろう、その作戦、乗ってやる。


「この!」


マリス達の狙いは間違いなく意思を動かすことだ。

俺への攻撃では俺が逃げ続ける限り狙いが定まらない。

だがしかし、どんな場合でも一瞬止まるタイミングはある。

不意を突かれたときだ、その時、不意を突いた相手を見るはず。

そりゃそうだ、危険な相手が増えた状況だ、確認は必須。

俺でも確実にそっち方向を見る、その時に止まるはずだ。

その瞬間をマリスかレベッカが突き、矢を叩き込む。

だから、俺がやるべき行動はその条件がよくなる場所へこいつを誘導すること!


「このぉお!」


俺は熊へ攻勢を掛ける事にした、少し危険を感じたのか

熊は後方に跳び下がる、だが、俺の方から視線は逸らさない。

当然だ、今、熊の感覚的に標的は俺1人。

複数に囲まれているとは考えていないだろう。

だからこそこれが出来る、下手に俺が熊の反対側へ移動すると

身を隠してるマリスかレベッカが見付かる可能性がある。

それを避ける為には、こっちが攻勢を掛け、熊が自分の意思で

下がるように誘導する必要がある。


「そら!」

「ぐ!」


俺の一撃は、熊に命の危機を感じさせるには十分な物だったようだ。

その怪力は自分の力さえ止めるほど、下手に食らえばヤバいと分かってるんだ。

だからこそ、そこを利用させて貰おう。

俺はそのまま熊へ攻撃を仕掛ける、何度か反撃を食らいかけたが

全力の攻撃では無いから回避は出来る。

そして、ようやくだ、ようやくその場に誘導できた。


「……」


レベッカがマリスを無言で指差した、マリスはすぐに意図を把握。

弓矢を射出する。


「ぐ!」


矢は俺を狙っていた熊の腕に当る、ほう、こりゃ良い。


「よし!」

「ナイスです!」


同時に、背後から飛んで来たレベッカの矢は熊の後頭部を貫く。

普通なら勝負があった、だが、相手はモンスター。

レベッカの矢はピンクキャットのメンバーが使っていた

矢よりも小さいからか、致命傷には至っていない。


「ぐがぁあ!」


激しい激痛を受け、熊は派手に暴れ出した、無我夢中に暴れ始める。

出血をしている状況で、そんな適当に身体を動かしては寿命を縮めるだけだ。


「好都合ですね、撃ち込みましょう!」

「はい!」


マリスとレベッカの総攻撃が開始したのを確認し

俺はすぐに近場にあった木に上った。

あのまま地上に居てはマリスとレベッカの邪魔になるからな。

木の上なら矢が飛んでくることも無いし、何かあったときすぐに制圧に動ける。

こんなにも混乱しているんだ、上空からの奇襲は想定するまい。


「良い調子!」

「このまま!」


2人の攻撃は勢いを増していく、だが流石の熊もやられるがまま

と言う事はあり得ないだろう、どんだけパニックになっていたとしても

不意に冷静になる瞬間はある、人間でもあるだろう。

その瞬間に反撃が飛んで来る可能性だってあるんだ。

だから、油断は出来ない、俺は剣を抜き、いつでも飛び降りれる体勢を取った。


「が、がぁあ!」


そして、熊が冷静になった瞬間、俺はすぐに木から飛び降りた。


「くたばれ! 熊!」

「が!」


俺は熊の脳天に剣を突き刺し、そのまま熊と一緒に地面に落ちた。

ま、熊は落ちたというか倒れただけどな、俺の場合は落ちたで良いけど。


「よし!」


流石の熊も上空から力と体重を乗せた一撃を急所に喰らえば息絶える。


「や、やったぁ!」

「ふふふ、いいとこ取りになったな」

「いえ、お陰で助かりました!」


今回は森の中だと言う事で、何とか撃破することが出来た。

これがもし、街道での戦闘となると、苦労しただろう。

熊が興奮してたりという異常事態もあったが

今回はその暴走を利用することで撃破出来たんだ

好都合だったという感じかな、危険を逆に利用する

ピンチをチャンスに変えるってのは、気分良いね。


「よし、それじゃ帰るか」

「うん!」


俺達が森から出ようとしてすぐだった。


「ひ、ひゃぁあ!」

「な!」


街道の方から女の叫び声が響き、俺達はすぐに森から飛び出した。

そこにはさっきの熊とは違う、別の熊が商人を襲っていた。


「この!」

「ぐ!」


レベッカの矢がその熊に向って行く、しかし不意打ちだったはずなのに

熊はレベッカの矢を弾く、これは少し驚いたが、問題は無い。

注意がこっちに向いたと言うだけで十分だ!


「その人から離れろ!」

「がぅ」


熊に飛びかかり、剣を振り下ろすが、この熊は俺の剣を軽く弾く!

力の差が相当ある! 力比べをして良い相手じゃ無い!

さっきの熊よりも怪力だとか、冗談じゃねぇぞ!


「お姉ちゃん!」


熊は剣を弾かれた無防備な俺へ一撃を喰らわせようと腕を伸ばす。

マリスの悲痛な叫び声が聞える、だが、俺はまだ死なない!


「なろぉ!」


体勢を崩しながらも、俺は熊の腕を蹴り上げ、すぐに接近しこぶしを熊に叩き込んだ。


「が…」


熊は俺のこぶしで少しだけ後方に仰け反った、全力の一撃で少しだけって…

こいつ、マジで強いぞ…今まで戦った2体の個体よりも断然!


「あ…あぁ」

「しょ、商人さん、急いで逃げてくれ」

「は、はい!」


…商人は震える足を無理矢理動かし、急いでダート村へ走って行った。


「連戦…やるか」

「うん、お姉ちゃん」

「私も大丈夫です」


例え強くてもやるしかない、ここは街道、モンスターが居て良い場所じゃ無い!

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