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ラキへのお礼

「何で私は歓迎されてる?」

「まぁ、手を貸してくれたからだな。

 ひとまず、助けてくれてありがとな

 あん時は言えなかったが、マジに助かったよ」

「お礼を言われるようなことは何も」


あの戦闘の後、俺達はラキを家に招待してお菓子を出した。

こんな風に歓迎される事に慣れてはいないのか、少し困惑している。


「……うーん、歓迎されるのは何かなれない」

「お姉ちゃんを助けてくれたから当然だよ。

 でも、どうして助けてくれたのかな? やっぱりよく分からないよ」

「はへぇ、この子が吸血鬼のラキね、人間と大差ないような気がするわね」

「……」

「でも、やっぱり警戒はされてるのね」


警戒していない奴の方が少ないからな。

マリスは一切警戒をしては居ない。俺がラキを警戒していないからなのか

マリスも警戒などは一切していなかった。

そしてイリアさんとクロは警戒を行なってはいない。


「まさか吸血鬼と知り合いとか予想外よ」

「…あなたアリスだったっけ、結構強いのね」

「ま、まぁ、これでも元冒険者だしね、一応高ランクだったし」

「ふーん、どれ位だったの?」

「別に知らなくて良い情報だと思うわよ?」

「低いんだ」

「今となっては必要無い情報だからよ、過去の名声なんてくだらないわ」

「……あなた絶対に強いでしょ。弱い奴はやけになるけど

 本当に強い奴はそこに興味を抱かない」

「例え強かったとしても所詮過去の話、今は負傷して役立たずの事務員よ」


アリスさんはラキの言葉を軽々とあしらっていく。

精神面でもどうやらアリスさんはかなり達者なのだろう。

でも、焦ると周りを見えなくなる悪い癖はあるみたいだけどな。


「…アリスさんの実力…気になるわ」

「強いのは知ってるけど、何処まで強いのかはよく分からないしね」

「実力はさっき見せたでしょ? あまり役にたってたとは思えないけど」

「負傷した状態であそこまで戦えてたって事は」

「万全な状態だったらどうだったのかって? ふふ、そんなの知っても意味ないわよ。

 昔は昔、今の私はあの程度よ」


気になる、負傷した状態で力を込められなかったのにあの強さだからな。

頭のキレもかなり良いと思えた。攻撃への対処も的確で負傷は無しだったしな。

ラキは何カ所も怪我をしていたが、アリスさんは無傷だ。

まぁ、ラキのスタイルはバーサーカースタイルだからな。


「ふーん、じゃあ次だけど、クロだったっけ」

「何?」

「あなた、意外と強い?」

「私は強いよ、魔法使いだし」

「そう言えば言ってたね。逃げる事しか出来なかったと思ったけど

 案外強いのは予想外、高威力の魔法使えるんだね」

「私の魔法で消し炭にならないか試してみる? 回復力凄そうだし」

「遠慮するよ、威力は十分でも1人じゃ弱いんだもの」

「……」


クロに対しての挑発、クロはラキの挑発を受けて少しムッとしているが

ここで更に食いかからないって事は本人もその通りだと感じているからなのだろう。

クロの魔法は確かに高火力ではあるが、発動までの隙が大きいからな。


「で、ポーラだったっけ、意外と体力あるんだね。

 私と戦ったときは一撃だったのに」

「あれはあなたが不意打ちをしたからで、正面から戦えばあなた程度!」

「そう? 楽しみ。試してみたいな」

「いや、私は遠慮しておくわ。私じゃ勝てそうに無いし」

「ポーラ! 何で弱気になるのよ! 吸血鬼相手に!」

「私はあの子の動きを見て、勝算なんて無いと感じただけよ。

 セイナに引けを取らないほどに動きは速いし一撃は重い。

 再生力も凄まじいし、私じゃ勝算は無いわよ」

「正しい判断。私とセイナは同じくらい強い」

「どうかな、俺とお前がやり合って、俺が強いとは限らないぞ?」

「…私に2回も勝ってる癖に何を言ってるの?」

「2回、そんなに戦ったの?」

「正確には3回戦った。そして私は2回負けた」

「俺が勝った1回は地の利を利用しての勝利。

 もう1回は自分でもよく分からない勝利ですけどね。

 純粋にやり合って1回負けてるんですよ」

「純粋に吸血鬼と力比べが出来るって地点でヤバいけどね。

 それにその子、再生能力から考えて真祖レベルよね」

「そう、私は真祖の血を引く吸血鬼…と言うかセイナ

 あなたは純粋な勝負で私に負けたと言っているけど

 あの勝負だって、本来ならあなたが勝っていたはず。

 あなたが私に同情をしなければ、あなたはあの時勝てていた」


確かにあの時は不意打ちで勝ってるからな、あくまで不意打ちだけど。

正面からやり合って勝てるとは思えないから、あんな風に立ち回る事しか出来ない。


「あなたは甘い」

「はん、今回はその甘さが功を奏したんだ。甘さも悪い物ばかりじゃ無いね」

「…確かに、3回の勝負、その何処かで私を殺していたら

 あなたは今回、どうなってたか分からない。

 でも、あなたは2回目の勝負の時、私を殺さなかったせいで窮地に陥った。

 偶然、異常な程に強くなったから事なきを得たけど

 あなたはあの時、自分の甘さで最悪のシナリオへと足を進めていた」

「それはお前もだよ、ラキ。今回義理を通したせいでお前は俺を得る機会を捨てた。

 あの時だって、さっさと吸血してりゃ俺を魅了状態に出来たかも知れねぇのに」

「義理を通すのは当然の事、依頼を受けて話を通さないわけには行かないし

 助けて貰った恩を仇で返す訳にはいかない」

「逃げ出したときのあれはノーカウント?」

「あの時は拘束という誤った選択をした結果、私が逃げ出しただけ。

 あの時もあなたが躊躇ったせいで立場が逆転したと言うだけ。

 でも、3回目は違う。完全に見逃された形だったから私はあなたを助けた

 あなたに貸しを作ったと感じて、それを返そうとした感じ」

「そうか」


こいつが恩義を感じるタイミングは良く分からないが

相手の選択ミスで状況が変化した場合は恩などは感じないけど

完全に相手に救われた形であれば恩を感じると言う事なのかな。


「そして、今回の件であなたへの恩は返せたと思ってる。

 だから、今度会うとき、あなたと私は敵同士で

 私はまたあなたを私の物にするために戦う。


 倒すなら今のうちよ? これだけ人数がいるしこの家は密室。

 私の素早さは案外役にたたないかも知れないし強力な助っ人もいる」

「馬鹿言え、ここは俺達の家だぞ? 家で暴れられたら迷惑だっての。

 ま、少なくとも今は戦うつもりはねーよ」

「そう…じゃあ、後悔してね。それじゃまた」


そう言い、ラキはお菓子の中にあるクッキーを口に入れた。


「……」


その後、出ていこうとしたのかも知れないけどクッキーが美味しかったのかな

少しクッキーを凝視した後、もう1枚口に入れる。

そして、満面の笑みを見せる。


「お、美味いか」

「う…」


その様を見た俺は、ついつい笑いが出て、からかうように味を聞いてみた。

俺の言葉を聞いて恥ずかしかったのか、ラキは顔を真っ赤にして俯き

そのまま恥ずかしそうに席を立って、扉の方に向かいドアを開けた。


「……」


しかし、ドアを開けた直後にラキは足を止める。


「どうした? 帰るんじゃねーの?」


何でドアを開いたのに静止したのか、その理由を理解していた俺は

またまたからかうようにそう告げる。


「……よ、夜になるまで…休ませて…」

「あはは! 締まらねぇな! おい!」

「う、うるさい!」


あはは! 帰るのが少し遅すぎたせいで朝日が昇っていたのだ。

もうすでにかなり日が出ていたせいで、日の下を派手に動けないラキは

この影1つ出来そうにない、丘の上にある我が家から出られなかった。


「ふふ、意外と可愛いわね、吸血鬼」

「か、可愛いって言うな! こ、これでも凄く強いんだから!」

「ふふん、美味しいお菓子を食べて笑って

 そして日が出ていることに気付かずに扉を開けて固まって…いやぁ、ドジね!」

「こ…く、くぅ!」

「あれ? 案外恐くないんじゃ無いの? この子」

「あ、そうだ! もうしばらくいるならもっと沢山クッキー焼くね!」

「あ…ありがとう」

「マリス、クッキーよりも朝飯だろ、そろそろ作ってくれよ腹減ったんだ」

「あ、うん!」

「まぁ、この人数を作るのは大変だろうし、俺も手伝うよ」

「えぇ!? ほ、本当!? やったぁ!」


お、俺が料理を手伝うと言ったら、マリスが尻尾を振ってぴょんぴょんと喜んだ

あれ、凄く可愛い…鼻血出そうなんだけど。


「お姉ちゃんとお料理! えへへ!」

「ふ、任せろ!」


いつにも無くやる気が出るぜぇ! ひゃっはー!


「……楽しそうだね」

「騒げば楽しくなるもんだ! お前も騒ぎなよ。暴力沙汰は勘弁して欲しいがな」

「……ん、そうする」


よっしゃ! 料理作るぜ! マリスと2人で!

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