予想は無意味
うーん、結構怒られてしまった。
しかしながら、これは仕方ないとしか言えないのだ。
だってさ、女っ気が無い人間だった俺が
いきなり女をここまで身近に…身近というか自分自身だけど
そこまで感じるレベルになって、どうして平常心でいられよう。
そう、俺のような超絶紳士でも、そんな事は不可能なのだ。
……く、女神の監視が無ければ、今すぐにでも触るのに!
「許しませんよ?」
「わ、分かってるよ…」
読まれているというのは非常に…大変な事だ。
く、この状況を楽しめないというのは…何かなぁ。
目の前に極上の料理をおかれて、食べては駄目と言われてる気分だ。
隠れて食べるのが普通なのだが、常時監視ではそれも敵わない。
極上の料理を目の前にして、待てと言われて一生待たねばならぬと言う
こう、犬的な感覚、まぁ、見た目犬だけどね、耳と尻尾犬だけどね。
「お、お姉ちゃん、大丈夫だった? 間に合った?」
「ん、あぁ、大丈夫だったよ」
「ふぅ、安心したよ…でも、お姉ちゃんそう言えばトイレ行ってなかったもんね
昨日は1度も…今思うと凄いけど、どうして?」
「え? あー…さぁ、自分でも良くわかんないかなぁ」
「あはは、それもそうだね、身体って良くわかんないし」
「そうそう」
本当は、何となく分かってはいるのだけど言わない方が良いだろう。
そもそも、所詮何となくでしか無いからな。
ハッキリとした確信がある訳でも無いしな。
あくまで何となく、きっと忘れていたからと言う曖昧な答えだ。
そもそも、身体についてどうこう聞かれても分かるわけが無い。
俺は一応、大学に行ってた経験はあったが
そう言う、人体についてはあまり興味が無かった。
そもそも、身体というのは至極当たり前の事であり
そこに何があったとしても、正直どうでも良いというか。
でも、脳には結構興味を持ってた、覚醒したら能力とか
そう言うのが目覚めてもおかしくないのでは? とか思ってたし。
後は幽霊とかにも興味はあったが、いざ蓋を開け考えてみると
出てくる答えは至極簡単な答えだったというオチもあった。
幽霊は所詮脳が極度の恐怖や緊張感などを抱き
暗闇を前にして自然とイメージが湧いてしまった幻覚でしかないという事だ。
寝ている時に目を覚まし、金縛りに遭い幽霊に襲われるというのも
暗い空間で脳がぼやっと半ば寝ている状態でも意識が目覚めてしまい
その場面で身体が動かないという恐怖を抱き
明晰夢にも似た悪夢を見てしまい幽霊を見たと勘違いしてると予想できる。
とは言え、その場合に発生する不自然や違和感には
カメラや動画に幽霊が移るという部分なのだが。
非常に残念ながら、テレビに出ている物は参考にもならない。
自分でその写真や映像を撮ったというならここに議論の余地はあるんだがな。
そう、そんな状況になった場合に出てくる可能性はおおよそ2つ。
それは幽霊が存在しているという可能性と、人間の恐怖心が具現化し
映像に残ったという可能性、どっちでも夢は広がる。
まぁ、十中八九そんなの機械の故障だと言えるがな。
なんて考えては居たが、実際今の状況はそんな予想を遙かに超えているのか。
色々と考えてたとしても、所詮ただの戯れにしかなってなかったと言う事か。
「あはは…」
今、俺の肩に止まっている蝶、と言うか、妖精みたいな奴は
実は女神で、その女神が気まぐれで作った世界に飛ばされるという
常識を全てぶっ壊した世界にいるんだよなぁ。
しかもこの世界は幻やあり得ないとされている魔法の世界で
更に更にリョナ系エロRPGの世界だというのだから驚きだ。
そんな状況下にいるのに、今更幽霊だとか、能力覚醒だとか
そんな事を考えても全くの無意味である事は間違いないか。
「それじゃあ、お姉ちゃん、お料理作ってくるから待っててね!」
「あぁ」
「うーん! うーん! ふ、ふ、ふぐ、ふぐぅぅぅう!」
「……俺が運ぶよ」
「ご、ごめんね、お姉ちゃん」
重たそうに持っている買い物袋を俺が貰い、台所へ運んだ。
「ありがとうお姉ちゃん! 腕によりをかけるからね!」
「あぁ、お願いするよ」
マリスは腕まくりをし、可愛らしいドヤ顔をこちらに向けた後に料理を開始した。
ふ、ふふ、ふはははは! 可愛い! あのドヤ顔可愛い!
もう正直、境遇だとかそんなのどうでも良い! あの可愛いドヤ顔を見ているだけで
色々と疑問だとか、そんなくだらない事を考える気など失せてしまう!
そんな物はどうでも良いのだ! やはり可愛いが正義!
恐怖だとか不安だとか、そんなのはくだらない邪念でしか無く!
やはり世界の神髄というのは、何よりも可愛いと言うことだ!
可愛いは正義という言葉こそ! 世界の神髄なのだ!
その通りだ! 可愛いこそ正義であり! それ以外は邪な感情でしか無いのだ!
世界が可愛いと言う感情で覆い尽くされたとき、世界から争いは消える!
可愛いこそ正義! キューティクル・オールジャスティス!
(何か意味の分からない英語を使わないでください)
(ふふ、凄く分かりやすいだろう? 可愛いこそ全ての正義なのだ!)
(はぁ、本当無駄にハイテンションで退屈しませんよ)
可愛いは正義! この言葉が全てを物語っていると言っても過言では無い!
可愛いこそ、絶対不可侵で全世界共通の正義なのだ!
(そう言うの良いんで、少しは真面目にしてください)
(俺は真面目だ、大まじめに大マジに可愛いこそ絶対的な正義だと思ってる!
人類は相対的な敵しかいないと言うが、逆に絶対的な正義はあるのだ!
そう! それが可愛いと言う正義! 男は勿論、可愛いは大好きだ!
女の子だって可愛いは大好きだろう!? つまり! 世界共通の正義は可愛い!
ならば! 可愛いが正義となれば、世界は平和になるのだ!)
(ふ、甘いですね晴夜さん、可愛いの中にもあらゆる派閥があるのです。
確かに可愛いと言う言葉は共通に正義なのかも知れませんが
その可愛いにも細々とした派閥がごまんとありますよ。
仮に可愛いが全ての正義となったとしても、当然ながら戦争は消えません!
この可愛いこそ絶対だという意見が台頭していき、戦争は止まらないのです!
そして! 正義の反対はまた別の正義だという言葉がより力を得てくるのです!)
(く、これが戦争の歴史だと言う事か!)
(まぁ、こんなくだらない話で戦争の歴史なんて語るべきではありませんがね)
(ごもっともであります)
そんな軽い話しでも無いしな、ちょっと興奮しすぎてしまった。
(まー、色々と情報収集するべきだと思いますよ、この時間は)
(情報収集? どうやって?)
(この家にも本はあるでしょう? 魔物対策の本とか…いや、そうですね
もしかしたら無いかも知れませんね、貧乏な家柄ですし
そんな事にお金を割く暇は無く、食費に全部回していると思われます)
まぁ、確かにあまり荷物とか無かったわけだし、その可能性は十分あるのか。
俺達が危険な目に身を晒さないといけないほどに追い込まれてるみたいだし。
わざわざ使えるか分からない対策本を買って、取っておくというのも不自然かな。
結構さっぱりした家だし、置いてないというのが最も高い可能性だろう。
部屋中を回った時も、本みたいな物は無かったしな。
(うーん、だったらどうするかな)
(では、私が魔物の設定を解説しましょう)
(設定って言うなよ、メタいな)
(メタいも何も、私はこの世界の創造主ですからね。
メタい所か、分類的、立場的には作者ですよ)
(確かにそうかも知れないが…まぁいいや、教えてくれ)
(いいでしょう、では聞き逃さないでくださいね
あ、いや、別に聞き逃しても構いませんがね、説明はいつでも出来ますし
そもそも、そんな大事な話をするわけでもありませんので)
(じゃあしなくて良いじゃん)
(えっとですね、魔物、モンスターというのは)
うん、俺の制止の声など聞えてないんだな、いやきっと聞えてたんだけど
完全に無視をしたのだろう、意外と自分勝手だ。
(……ほぅ)
(ごめんなさい)
心が読まれているというのは本当に窮屈だよ…とほほ。




