泥酔後の朝
「…ッハ!」
あ、ありゃ? ベットの上? え? 何で何があったの?
知らない間に外もかなり暗くなっている気がする。
何だったっけ、マタタビを嗅がされて…それから…
「はい、サンドイッチにされてましたよ」
「あ、ルア…姿見せて良いのか?」
「皆さんはもう寝てますからね、ベットはセイナさんが独占で
後の皆さんはリビングのソファーで眠っていますよ」
「な、なんで?」
「イリアさんの判断で…同じベットで眠らせたらどうなるか分からないからとか」
「お前は起きてたんだ」
「えぇ、かなり苦しかったですけどね。私もプレスされてましたし」
「そうなのか?」
「えぇ、私の場合はクロさんとセイナさんにプレスされてましたね。
いやぁ、私が普通の蝶々だったら確実に潰れていました。女神で良かった」
ど、どんな状態だったんだよ…マタタビを嗅がされたところしか覚えてねぇ。
「その様子だと、全く覚えてないんですね」
「あぁ、全く…何があったの?」
「はい、クロマリサンドイッチにされてました」
「む! なにやら魅力的な単語!」
「詳しく言えば、クロさんに正面から抱きしめられて
更にマリスさんが背後から抱きしめていた状態でした。
完全にセイナさんを取り合う形で」
「ん? 何でクロが?」
「酔ったあなたが可愛すぎたんですよ、普段とのギャップが凄まじいから」
か、可愛い? 普段とのギャップ? どんな状態だったんだ俺は!
まるで記憶が無い…ただただ頭が痛いだけだし。
「そしてその光景を見たイリアさんの結論は
あなたにマタタビを嗅がせるべきでは無かったです。
マタタビを嗅がせた場合、セイナさんでは無く周りが暴走しますから」
「ほぅ、俺は暴走していなかったのか。流石俺。これでも元は20だからな」
「大学生でしたもんね」
まぁ、酒は基本飲まないけど。1度興味本位でビール飲んで
クソ苦かったから結局酒は飲まない状態になった。
「でもまぁ、酔った状態でも妹では無く姉としてならって言ってましたし
姉としても誇りみたいな物はあるんですね」
「は? 何の話?」
「酔ったセイナさんに魅了されたクロさんがセイナさんも妹にしようとか考えて」
「はぁ!? あいつの妹とか嫌だなぁ、姉ならまだしも」
「やっぱりお姉ちゃんなんでしょうね、あなたは」
「まぁそうだろ、出来れば兄になりたかったけどね。
マリスにお兄ちゃんとか言われると思うと…ふへへ」
「ロリコンが」
「ロリコンで何が悪い! 大丈夫、リアル幼女には手を出さないから!
リアル幼女に対してはマジ紳士だから!」
「まぁ良いでしょう。自分が幼女になって幼女にモテてるわけですしね」
「……そこは悔しい」
「あなたは面白いから小さい子に好かれやすいんでしょう」
「面白い? 意外と褒めてくれるではないかルアさん」
「褒めている…? 若干貶してますけど」
「面白いは褒め言葉では無いのか!?」
「私の場合は貶し言葉も入ってます」
「くぅ! 何故俺に対してそこまで辛辣なんだよぉ!」
「いや、からかいやすいと言いますか、別に不幸な生い立ちがあるわけじゃ無いんで
からかっても良心が痛まないですしね」
「酷くないですかね?」
確かに特別不幸な生い立ちがある訳では無いけどさ。
「逆に不幸な生い立ちがあったらどうしてたんだよ」
「普通の異世界に…と言っても、結局災難続きになるでしょうけどね」
「どうしてだよ、こうチート能力くれてさ、スローライフを満喫させてよ。
そうすれば俺はほら、やれやれ系主人公として振る舞うから。
出来れば戦いたくないんだがなぁとか目立ちたくないんだがなぁとか言って
チート能力で美少女助けまくってハーレム作るから」
「あー、チート能力授けるとしても、強すぎる能力はちょっと。
全属性適性とか、即死魔法とかは授けませんよ。
使い方次第だと強い能力や魔法なら授けますけど
別に特に何も考えなくても超強いスキルはね。
むしろ敵の方にそう言うチート魔法が出て来ますからね」
「なんで!? 俺最強! とか出来ないじゃん!」
「いやほら、世界のバランス崩壊すると困りますので」
あ、そこはちゃんと女神様っぽい感じなんだな。
普段の振る舞いからそんな風には思えないけど
意外と世界のバランスとか気にしてるんだ。
「因みにあなたの能力はそれなりに…ワービーストは結構強力ですし」
「発動条件が厳しすぎるんでもっと使いやすい能力でお願いします」
「土壇場での大逆転は良いでしょ? 最後の切り札的な」
「せめて極限状態で瞬時に発動させて欲しい」
「諦めてください」
「マジすか」
確かに格好いい。追い込まれている状態で覚醒して
敵をなぎ払い味方を助け出した後に気絶する主人公というのは。
しかし発動条件があまりにも厳しすぎるから簡単には使えない。
これはプラスポイントを全て吹き飛ばすほどのマイナスポイントだ。
そもそもさ、追い込まれている状態って言うと味方も壊滅状態じゃん?
そんな状態で発動まで時間が掛るワービーストって発動準備中に無力化されるて。
「まぁ、仲間と協力すれば何とかなりますよ多分」
「そうだと良いんだけどなぁ」
「で、そろそろ良い時間ですね」
「んー? あ、マジだちょっと明るんできた」
結構話し込んでいたと言う事か、ルアとはたまに滅茶苦茶話すよな。
ひとまず起きて朝飯の準備をするべきなのだろうか?
しかしなぁ、俺って料理得意じゃないし-、殆どマリスに作って貰ってるし。
いや一応、マリスの料理を見て、ある程度は出来るようにはなっているが
客人が来ているこの状態なら、やはりマリスが作った方が良いよね。
「よし、二度寝する!」
「料理を作るとか無いんですか? 早起きイコール料理作ってみました的な」
「ふ、イリアさんが来ているんだぞ? 俺が料理を作るより
マリスが料理を作った方が美味しい料理が出来るに決って居るではないか。
あいつはハイスペックなのだ。炊事洗濯家事裁縫、家庭的な物は全て出来る!
完璧な世話焼き系妹!」
「おやおや、世話焼き系妹キャラは、たまにドジをするのが可愛いのでしょう?」
「ば、馬鹿な!」
ルアの言葉を聞いた瞬間、俺に電撃が走るような感覚が…
そうだ! 世話焼き系妹キャラはたまにするドジが素晴らしく愛着がある!
しかし、マリスは完璧! パーフェクトシスターなのだ!
ど、ドジをする場面をあまり想像出来ない!
俺が居なくなると一気に沈んで失敗ばかりをすると言う感じだけど。
あ、そっちの方が可愛いかも知れない。
「…だが、甘いなルア! 例えドジをする事があまりないマリスでも
あ、でも結構ドジする様な気がするけど殆どドジをしないマリスだが
マリスという地点で可愛いのだ! 甘えん坊でお姉ちゃんっ子で
たまに世話焼きして失敗したりして落ち込んだり泣いちゃったり
お姉ちゃんが自分以外の子と仲良くしたら嫉妬しちゃったりと
ドジ的な部分があまり…あまり? 無くても可愛いのだ!
俺はマリスの全てが可愛いのだから関係ないね!」
「うわ、ガチ勢キモ」
「いやそんなドストレートに言わないで、ネタ解答したのに
ガチの感想言わないで、ネタにマジレスとか無いわー」
「ま、まぁ…そのですね。話かなり脱線した気がしますけど
料理くらい作ってあげたらどうですか? マリスさんに頼りすぎて
体調崩したりしたらどうするんですか?」
「そ、それは確かに…マリスに頼りっきりというのもあまりよろしくないか。
仕方ない、今日は早起きしたお姉ちゃんらしく料理を作ってみるか」
「何処まで出来るんですかねぇ?」
「俺を舐めるんじゃぁないぞ? 料理の手順を1度でも見ていれば丸暗記など余裕!」
「暗記とか頭おかしいんじゃ無いですかね?」
「覚えようと思ったことはしっかり覚えるタイプだから」
とまぁ、ひとまず俺はマリスが料理をしてくれている時の動きを思い出す。
うむ、可愛らしい尻尾と陽気な鼻歌が俺の頭の中にリピートされる。
あ、ちょっと料理がし難かったから、少し大きめの足場を持ってきたな。
そして包丁や食材を洗って、丁寧に料理を開始した。
ふむふむ、なる程、これは千切りか。おぉ、なんて速さだ。
「……あのセイナさん」
「何だよ、俺は今メモリーをリピート中だ」
「いやその…何でその…あなたの頭の中には映像が流れているのですか?
しかも鮮明に、テレビみたいな感じで…」
「え? 記憶をリピートしてるからだろ?」
「……そして、何故私はその映像が見えているのでしょうか」
「俺の心を読んだからだろ? 何言ってるんだよ」
「いえ! あなたの頭の中でマリスさんのお料理タイムが放映されてることに問題が!」
「は? 記憶を全力で呼び起こしたら映像になるだろ、何言ってるんだよ全くよ」
「マリスさんの動きが事細かに流れているのがおかしいです!
何で足場を変えた映像が流れてるの!? 尻尾の動きも細かい! 耳も細かい!」
「マリスは可愛いからな、我がメモリーの中に永久保存するのだ。
あ、でも流石に普段の光景は記憶してないぞ。記憶しようと思ったことだけ」
「あなた、頭おかしいですよ」
「何だとぅ!? 何か変な事を言ったか!? 貶されるようなことはして居ないぞ!」
「そ、そうですね…」
全くルアめ、何か変な事したか? まぁいいや、料理の続きしよーっと。
よし、今度は塩胡椒だな、ほいほいっと。量はこれ位かな。
おぉ! こっちを向いて味見をお願いしてきた! むむ、ちょっと薄味?
あ、お礼を言った後にちょっと塩胡椒を足したな、こっちが正解か。




