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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第九十四話

しばらく三人で泣いていると突然大塚が笑う。林は不信に思いながら大塚の肩から顔を上げた。緒方も心配そうに覗きこんでいる。俺ってここに来るといつも泣いているな。大塚の目が赤い。まだ涙は流れていて止まらず、笑いながら泣いている。その目線を緒方は優しく受け止めて笑った。そうですね。と嬉しそうに返事をし、隣で、バーカと林も笑っている。大の男が三人固まって涙を流しているのを改めて実感して、大塚は嬉しいような、滑稽な姿だなと笑った。誰かが自分の考えを最後まで聞いて、受け止めてくれる。途中で中断されることもなく。真剣に向き合ってくれる。もうずいぶん長い間、諦めていたこと。こんなに心が楽になるなんて。自分のそばで泣いている二人の顔を大塚はもう一度よく見た。二人とも真っ直ぐ自分を見ていて、温かい優しい光が瞳の中に強く宿っている。その強い光がすっと自分の中に入ってきて、ここにある悲しく苦しい想いをゆっくりと解かしていくような、不思議な錯覚を感じた。親からも、近所の人たちからもこんな温かい眼差しを受けたことはない。小さい頃からなんでもこなしてきたけれど、もしかしたらそれは親や周りから自分を見てもらいたかったからかもしれないなと苦笑した。どんなに褒められても、嬉しいのは一時だけで、しばらくすると悲しい、寂しい想いが心の奥から溢れてくる。弟が自閉症だとわかって、母親は仕事を一度辞めたが、ほどなく弟を親戚の家に預けて仕事に復帰した。「両親は仕事が大好きなんだよ。近所でも評判の、絵に描いた優しく裕福な家庭。弟の面倒をよく見る家族思いの家庭だって。中身は全然違うのにな」弟が親戚の家に預けられていることも、あんなに素晴らしい両親が預けるのだから、大変な弟なんだと思われている。弟の分まで親孝行してね。近所の人たちから言われるだび、大塚はどんな顔をしていいのかわからなくなる。「一回、俺がキレて両親に反発したことがあるんだ。自分と弟のことをちゃんと見ろって。見かけばっか大切にしないで、その二面性をやめろ、正直にさらけ出せって。そうしたら、今まで見たこともないような形相で殴られたよ。体の見えない所を。あれは悔しかったな」先生に相談しても、信じてもらえなかった。結局、両親を逆恨みしているか、自分に注目してほしい寂しさから嘘をついているのだろうと言われ、信じてもらえなかった。それから誰にも怖くて打ち明けられなくなった。自分の感じたありのままの気持ち、心にあるこの感情。伝えても伝わらない。嘘つきだと言われる悲しさ。大人が、両親が信用できない。自分が今まで感じてきたこの感情は間違いなのか。勘違いなのか。思ってはいけないただの逆恨みなのか。わからなくなる。悔しかった。苦しかった。大人を信じられないことが。自分を信じられないことが。「でも、今、こうやって俺のこの抱え込んでいた想いをしっかり聞いてくれるから。あ、この感情って持ってていいんだなって思える。嬉しい。。嬉しいよ」自分を見てくれる友人たち。ちゃんと受け止めてくれる存在。その存在がいるから、人を信じようと思える。自分の感じたままでいいのだと自分を信じられるようになる。信頼できる存在がそばにいてくれるから、人を自分を信じようと思える。大塚はとても嬉しかった。「ありがとうな。本当に。俺のそばにいてくれて。俺のこの気持ちを信じてくれて」信頼してくれてありがとう。受け取ってくれてありがとう。溢れる涙が少し軽くなる。心の奥も軽くなった。この友人たちがどれだけ自分を支えてくれているか、大塚はよく知っている。大切にしたいのだ。両親とは決着をつけなければならない。塾を辞め、目の前のこの友人たちの力になりたい。そばにいたい。「大塚はアホだな。そんなの当たり前だろ。でも、その当たり前のことをお前は経験していないんだよな。。。ごめん。気づけなかった」あんなにそばにいたのにな。林はまた下を向いている。悔しいのだろう。声を抑えながら泣いていた。涙が畳の上にぽたぽたと落ちていく。大塚は笑いながら林の肩を優しく撫でている。ありがとうな。俺のために泣いてくれて。その言葉は林にとって悲しかったようで、抑えていた声が少し大きくなる。緒方も悲しかった。「大塚くん。うどんできたよ。いっぱい食べて。俺、話聞くから。これからいっぱい、いっぱい。大塚くんが今まで聞いてもらえなかった分も。だから、その」鍋を机の上に置いた後、神埼が大塚のそばにやってきた。大塚の背中にくっついておでこを当てている。背中のシャツをぎゅっと掴んで離さない。緒方も大塚の手を握って肩に頭を乗せてくる。先程泣いていた林がまた肩に頭を乗せてきて、大塚は三人にしがみつかれる形になった。三人分の体重と温かさが一気に体にのし掛かる。大塚は笑った。こんなに温かくて、こんなに重い。人の温かさや重さがどんどん伝わってくる。一人ではない。信頼してもいい存在が自分のそばにいてくれる。自分が想いを伝えたら、ちゃんと受け止めて返してくれる。これからもずっと。嬉しい。家族といてもなぜか孤独で、悲しかった。両親が心のどこかで怖かった。自分の親に恐怖を感じるなんて。自分を責め、感情を押し殺した日々。あの時はここにいる友人ができるなんて想像できなかった。誰かにこの想いを話せる時が来るなんて思わなかった。両親は変えられない。どんな親でも、自分の親であることは変えられない。自分が変わるしかないんだと、自分の感情をコントロールしようとしてきたけれど。ありのままでいい、感じたまま受け止めればいい。どんな感情でも、大切にしていいんだ。それは自分を認めることなんだ。大塚は長い間、心の奥でずっと葛藤していた悲しさに一つの自分なりの答えが出せたことを感じていた。重いって!もう!泣くなよ!!嬉しくて自然に笑みがこぼれてくる。ありがとう。感謝せずにはいられない。この友人たちに。その友人たちは先程から相変わらずしがみついていて、大塚のそばから決して離れない。三人からぎゅうぎゅうと押されるとくすぐったくて、たまらず声を上げた。大塚が大丈夫だと何度も伝えても、この三匹のくっつき虫たちはなかなか離れてはくれなかった。

皆様、おはようございます(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?

布団が心地いい~。ニケでございます。これは魅惑の極みですね。。魅了されまくりです。ふふふ。

では、皆様、これからも素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)

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