第八十二話
緒方と大塚が生徒会室から帰ってきたのは思ったよりも遅く、22時を過ぎた頃だった。二人ともぐったりとしていて生気が感じられない。緒方は神埼の顔を見るとすっ飛んだように突進してきた。疲れました。。暗い顔で感情を表す緒方を神埼は可愛いと思った。緒方と大塚が帰ってくる前、神埼は林と近くの弁当屋に晩御飯を買いに外へと出かけていた。夜の暗闇のなかで風がひんやりと冷たい。緒方は肉が好きなので、焼肉弁当とおやつのデザートを選ぶ。「焼肉か。いいな。大塚は麺類が好きだからカレーうどんでも買うか」林は唐揚げ弁当とお茶を買っている。神埼は焼きそばを買った。できたての弁当がほかほかで温かい。弁当を受け取りながら神埼はふと寂しくなる。今頃緒方たちは先輩たちと話し合っているだろう。緒方を送り出したものの、心はすっきりしなかった。緒方の力になれないのは寂しい。できればそばにいて何かを手伝いたい。生徒会の仕事はよくわからないがこのまま待っていると心が苦しくて落ち着かない。真っ暗になってしまった空を見上げる。夜はいつも緒方がいた。この夜空も温かくて優しく思えた。でも今日は苦しくて寂しい。緒方に早く帰ってきてほしい訳じゃない。そばには林がいて今は一人ではない。でも寂しい。緒方が頑張っているのに力になれない。ただ待つことしかできない。神埼はそれが嫌だった。「悔しいな。。。」きっと自分ができることは緒方を信じて大人しく待つことだろうと思う。帰ってきたら労って話を聞いて笑って励ます。緒方が安心して休めるように気を配ること。だから今寂しいと思っている自分は弱いし、我が儘なのだ。でも、本音は緒方と一緒に何かをしたかった。「俺って。。欲張りなのかな。寂しいなんて女々しいよな」買ってきた焼肉弁当をじっと見つめる。どうしたのだろう。無性に緒方の顔が見たい。どんな顔でもいい。拗ねても怒っていても。会いたい。自分の気持ちを落ち着かせるように神埼は大きな息を吐いた。「神埼くん。。。私は疲れました。。頑張りました。。。演説なんてもうこりごりです」がらがらと扉が開いて突進してきたと思ったら神埼の腰にしがみついて首を左右に振り離れない。神埼の腰をがっしりと掴んでいる。可笑しくなって神埼は優しく頭を撫でた。なんでもできて羨ましいと思ったが、緒方の顔色が悪い。こんな疲れた緒方は初めて見たので大変なのだろう。神埼はこっそり、ごめんなと呟いた。「ほら。焼肉弁当だぞ。肉だぞ。焼肉ソースだぞ。デザートも買ってきたからな」弁当をずいと緒方の前に持ってきた。焼肉の匂いが届くように手で扇ぐ。緒方は顔を上げて弁当を見ていたが、再び顔を神埼の胸にうめる。そのままぎゅっと力を入れてきた。「わわ!お前。。食べなきゃ力出ないだろ?ほら、まず食べろよ」力強くしがみつかれて椅子からずれ落ちそうだ。神埼は慌てて座り直そうとした。机に手をのせて力を込めたのだが緒方が体重をかけてくる。腕に力が入らない。「こら!!ちょっと!!離れろって!!危ないだろうが!!」緒方の肩を叩きながら再度力を入れようとした。その時だった。急に自分の体が軽くなって緒方の腕の力が強くなったような気がした。ふわっと宙に浮いて緒方の頭が下に見える。ぼんやりしていると急に体が重くなる。「危な!!」倒れる!咄嗟に緒方の腕にしがみついた。緒方は黙ったまま神埼を受け止め抱き締めてくる。何が起こったのかわからない。全身が緒方の腕に抱かれていて身動きが取れない。体全体が熱かった。緒方の熱が神埼に流れ込んでくる。少しもがいてみると、さらに強く抱き締めてくる。体の少しの動きも許されず封じ込まれてしまった。緒方の体が熱い。為されるがままだ。「お、緒方。。?」不安になって名前を呼ぶ。強い力は変わらず神埼を閉じ込めている。緒方は何も言わない。「神埼くん」急に名前を呼ばれ思わず顔を上げた。緒方の顔がすぐ近くにある。目が合ってじっと見つめられる。熱い。何もかも。体も心も。熱くて目が離せなくて。緒方に捕らわれてしまったかのように動かない。ゆっくり近づいてくる緒方の顔を見つめながらそっと神埼は目を閉じた。「美味しいですね!神埼くんが買ってきてくれたと思うとまた、美味しいですね!!」緒方はすっきりとした顔で弁当をガツガツとほおばっている。その横で神埼はぐったりとしていて少し息が荒い。顔も赤いし辛そうだ。寒い中、弁当を買いに行ったのがいけなかった。風邪を引いたかもしれない。林は少し心配になった。「大丈夫か?やっぱり俺一人で買いに行った方がよかったな。。。緒方。。お前、食ってばっかりじゃなくてだな」心配する林に、うふふふ。神埼くん、風邪ですかね?じゃあ温かくしないといけませんね!と緒方が嬉しく笑い、神埼はキッと鋭く緒方を睨む。神埼の目がいつもより鋭いのは気のせいなのか。緒方、早く食べろ。緒方の頬をつまんでいる。緒方の機嫌が異様に良いような気がしたが、神埼とやっと会えて嬉しかったのだろう。これは痴話喧嘩だなと林は納得した。「神埼、風邪っぽいし。緒方にまかせるから」二人の雰囲気がいつにも増して温かい。林の言葉に緒方はにんまりと笑って神埼を見ている。大塚に話を聞けば丸く収まったと言っていて、本当に頑張ったのだなと安心する。何よりあの緒方がだらけているので何とかなったのだろう。「今日、神埼は大変だろうなぁ。まあ、頑張れよ」カレーうどんを味わいながら仲むつまじい二人を見て、大塚がぼそりと呟いた。
皆様、おはようございます(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?
昨日のフィギュア見逃しました。。!睡眠に負けてしまった。。。ガッカリです!!なので再放送を待ちたいと思います!ああー。。
少し落ち込んでいるニケでございますが、皆様、これからも素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)




