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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第五十九話

神埼はこの頃何かを調べているようだ。学校から帰ってきて冷蔵庫をがさごそしていたと思ったら、部屋にこもってしばらくの間居間にやってこない。元気そうなので緒方はのんびりと見守っていた。神埼が何かに熱中しているのは初めてなので良いことだなぁと嬉しくなる。つい前までは神埼を一人にするととても不安そうで、悲しそうに見えたからなるだけそばにいようと決めていた。しかし、この頃は、一人でそっとしておいても前に感じた不安や悲しさは感じられない。何かに集中して夢中になっている神埼は生き生きとしていて、生きている、という印象を受ける。そんな神埼を見るのはとても嬉しかった。「生きてるって、いいですよねぇ。。」部屋にこもっている神埼にコーヒーを持っていった。目をしばしばさせていたから疲れていたのだろう。腰を伸ばしながら受け取っていた。長時間椅子に座って体は疲れないのだろうか。「ホワイトデーのお返しは、クッションにしましょうか。それとも、可愛い料理グッズなんかもいいですねぇ。。」料理をするときに、楽しくなるようなグッズもいいだろう。神埼は料理にも熱心に取り組んでいる。なぜあんなに真剣なのかはわからないが、神埼が楽しそうなのでまた嬉しい。「今日は私の料理当番ですし。目にいい料理でも作りましょうかね。」神埼が部屋にこもってから、自分はずいぶん独り言が多くなったものだ。家族で暮らしていたし、神埼のアパートに住むようになってからは、いつも神埼と一緒にいた。一人でいることが多くなったのは緒方にとって初めての経験だった。「一人って、こんなにも虚しいものなのですね。」声をかけても誰も答えてくれない。このことが寂しくてなんとも言えない。こんな思いを神埼は幼い頃から経験していたなんて。今すぐ部屋へ行って神埼を抱き締めたいが、熱中しているのでそうもいかない。一人になる時間が多くなるほど、神埼が経験してきたものを自分も経験しているようで、寂しいがどこか嬉しい。ぼんやりと考えていたら少し暗くなってきた。今日の晩御飯はなんにしようか。温かくて栄養のあるものにしよう。神埼は麺が好きだ。味噌煮込みうどんでも作ろうか。冷蔵庫を開けて野菜と肉を取り出した。煮込み用の肉をしっかり煮込んで、とろとろのだし汁を作ろう。「神埼くんは、麺が好きなのに猫舌ですから。しっかり煮込んでゆっくり食べてもらいます。」鍋にだしの昆布を入れながら緒方は一人笑う。誰かのことを思いながら料理をするのは楽しい。一人でいた神埼のことを思うと、これからたくさんの見えない思いを感じてほしいなと緒方は思う。受け取ろうと意識すると難しくなるから、わからないまま自然に。この頃は神埼が温かなものを受け取らなくてもいいと思ってきた。受け取る、受け取らない、そんなものは関係なく、したいことをしたいようにして、一緒に生きていけばいい。苦しさや悲しさが溢れてきたら、そのたび抱き締めあえばいい。そんなことを考えている。「鶏肉の方がコラーゲンがたっぷりです。神埼くんの美容のためには。。。」つい口に出てしまう言葉。独り言になってしまうがしょうがない。鶏肉を切っていく。キャベツもとろとろに煮込もう。緒方?何してんだ?後ろから神埼の声が聞こえて隣に寄り添ってきた。今日は味噌煮込みうどんにしようと思います。緒方は答える。うん。嬉しそうに笑う神埼の頭を、緒方は優しく撫でた。「温かくして一緒に食べましょうね。」そう伝えると神埼は嬉しそうに顔をほころばせる。ジャンプしながら緒方の頭を撫でた。

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