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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第五十三話

今日は早めに起きてきた。神埼はふとんの上ですやすやと寝ている。昨日寝ていると神埼が寝ぼけて自分に抱きついてきた。眠気が一気にぶっ飛び頭が妙に冴えてくる。神埼の温かさが伝わってきて嬉しい。自分をこんなにも信頼して身を委ねてくれるのも嬉しい。嬉しいが、この頃は辛い。緒方は神埼を抱き締めながら目を強く瞑った。神埼の痛みも苦しみも、喜びも楽しさも、すべて受け止めたい。抱き締めあっていると、神埼の心の奥の何かが感じられるようで嬉しい。手を繋ぐと寒くても繋がっているような気がしてずっと手を握っていたい。体と心は繋がっているというけれど、本当みたいだ。だけど。自分は男だ。触れれば触れるほど、辛くなるものがある。緒方は神埼にどう伝えればいいか、悩んでいた。「。。。好きだから、繋がりたいのは自然なことだと思いますよ。それだけ神埼くんが好きなのでしょう。」こんなときはどうしても二番目の兄、元気に会いたくなる。電話をかけて会いたいと伝えたら、すぐ家から出てきてくれた。いつもの公園で二人、今日は寒いからとおでんを買って待っていてくれる。神埼はぐっすりと眠っていたから、ご飯とお味噌汁を作ってメモを残しておいた。「。。しかし、どう伝えればいいのか。。私は神埼くんを大切にしたいのです。。」胸の辺りが苦しい。ずっと押さえていたからだろう。元気の前で本音を言おうとすると、じりじりと傷む。こんなにも我慢していたのだろうか。緒方は自分の感情の大きさに眉をひそめた。元気は黙って背中をさする。不意に元気は笑みを浮かべながら緒方に言った。「愛、神埼くんが愛を求めている姿を見たくはないですか?どんな風になるんだろうとか。」どんな風に身を委ねてくるんだろうとか。神埼が自分を求める。。。?しばらく時間がたったあと、ぼっと顔が赤くなった。神埼のあのセクシービームを思い出す。可愛くてドキドキして、ずっとそばにいたくて堪らない。そんな神埼が甘えたようにねだってきて。。横で緒方の反応を見ていた元気が吹き出した。神埼の姿が消える。緒方は恨めしそうに元気を見つめた。元気兄さん。。。と呟けば、すみません。つい。。と言ってお腹を抱えている。笑いの壺にはまったようだ。「元気兄さんにまでからかわれるなんて。。。私はこれから、誰に相談すればいいのですか!」赤い顔のまま腕を振ってあたふたしている。その腕がぽかぽかと当たり、体は大人びていても心はやっぱり弟なのだなぁと元気はしみじみと思った。謝りなから頭を撫でる。大丈夫、大丈夫。そう想いを込めて。緒方は自分の経験したことがない感情や出来事に怯えているようだ。神埼への想いに罪悪感すら感じている。本当に自分は神埼を愛しているのだろうか。欲望だけではないか。それがわからなくて怯えている。元気は緒方の目を見て言った。「愛。セックスは心と体のコミュニケーションです。愛する気持ちを伝え合うのですよ。それもお互いが信頼し合ってできる神聖なものです。素晴らしい愛のコミュニケーションです。恐れないで。」そう、愛すること、愛されることを恐れないで。愛を送り合うことを恐れないでください。こんなにも愛したい大切にしたい存在に巡り会えたことは素晴らしい奇跡なのだから。元気は緒方の頭を何度も撫でて伝えた。愛、幸せをたくさん感じてくださいね。にっこりと笑う。「。。わかりました。元気兄さん、ありがとうございます。なんだかすっきりしました。私は神埼くんを大切にしたいから体が熱くなるのですね。」欲望だけではなかったんだ。そのことに緒方はほっとしたようだ。おでんをものすごい勢いで食べている。これも純粋な神埼への想いだとわかって、押さえることをやめたのだろう。表情がイキイキとしている。「元気兄さん、ありがとう。もうすぐ神埼くんが目を覚ましますから、帰ります。またここでおでん食べましょうね。」さっと片付けると手をふりながら去っていく。そのまま前を向いて、猛スピードで走っていった。その変わりように元気は一人公園で声を立てて大きく笑う。相変わらず切り替えが早くて己の感情に素直だ。弟は変わっていない。ひとしきり笑ったあと元気は空を見上げた。星が少しずつ見えなくなっていって、明るい青色になっている。朝は近い。今日は大学の講義だったなとぼんやりと思った。家族には内緒にしておこう。1つ大きな伸びをすると、元気は家への帰り道をのんびりと歩いた。

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