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常識くんと愛さん   作者: ニケ
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第四十九話

もっと話そう。もっと分かち合おう。苦しさも楽しさも切なさも喜びも。今日は早く目が覚めた。緒方は穏やかに寝ている。いつも朝御飯は緒方が作ってくれて、神埼は美味しそうな匂いで起きていた。神埼は緒方にもその穏やかな、安心する朝を感じてほしい。ふとんからそっと抜け出した。昨日は案の定、緒方は夕方に起きてきた。居間にいる神埼を見つけてにこにこしている。急に近づいてきたかと思うと、可愛いです~と言って抱きついてくるから神埼は思わず後退ったけれど。それでもめげずに抱き締めてくるから。神埼は照れるが好きにさせていた。緒方と抱き締め合っていると、何か心と心で言葉のない会話をしているような気がして落ち着く。緒方は寝ぼけているのだろう。がっしりと抱き締めてきて、痛いくらいだ。いつもはもっとふわっとして優しい。加減をしていたんだなぁと神埼はぼんやりと思った。目を閉じて緒方のことを考えてみる。言葉はいつも思い付かないけれど、温かさや優しさや、鼓動や。緒方はこんな温かさでこんな風に力強くて。ずっと胸の奥の何か大切な場所にこの想いを納めておきたいような、そんな温かな気持ちになる。緒方の鼓動は穏やかで少し早い。体は熱くて強くて。それ以上に心から何かが自分の心のなかに入ってくる。それは心地よく自分の心の奥の部分を満たしていく。ほっとして神埼は息を吐いた。痛みが消えていく気がする。ちくりと痛くなって、すっと消えていく。なにもなくなったと思ったら、穏やかな想いがどんどん広がっていく。安心してゆったりとしてしまう。神埼は目を閉じたまま緒方を少し強く抱き締めた。昨日の緒方とのことを思い出しながら神埼は台所へと向かった。顔が少し熱い気がする。気にしないようにして冷蔵庫を開けると、卵がある。ウインナーもあるし、レタスもある。ご飯も炊けていて美味しそうだ。今日は時間があるのでお味噌汁を作ろう。神埼は準備へと取りかかった。お味噌汁の具は緒方の好きなワカメと豆腐を入れてやるか。あと、ご飯は食べやすいようにふっくらとかき混ぜておこう。卵を割ってかき混ぜながら神埼は炊飯器の蓋を開けた。緒方と一緒にいることができる喜び。学校へと行ってクラスメイトや先生たちに出会える喜び。朝御飯を作りながら神埼の心の奥でじわじわとわき上がってくる思い。温かい。優しい。嬉しい。がさごそと奥の方から音がした。ペタペタとした足音も聞こえてくる。あくびをしながらその足音の主はやってきた。台所にいる神埼を見ると、さっと動きが機敏になったかと思うと、そばにきて神埼の頭を撫でている。その顔がいつにも増してにやけているのでまた、その頬をつまみたくなる。そんな気配を感じたのだろう。緒方は神埼の頭を撫でながら、もう一方の手で両側の頬をガートしている。神埼は無言で緒方の頬を狙った。「痛いですよ~。神埼くんは反射神経がいいんですから~。」手加減してくださいと訴えてくる。緒方、おはよう。学校に行くぞ。神埼は緒方の頬をやっとつまめたことに満足しながら大きく笑った。

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