第三話
「コロッケが、食べたいですねぇ。。」仕事が一段落して、仮眠室でぼんやりと呟く。今日は朝からオペが立て込んでいて、休む間がなかった。ゆっくりと休めたのは、もう周りが暗くなって、町の明かりがちらほらと見える刻限。仮眠室のベットに腰を掛けると、どっと体が重くなる。思いの外、疲れていたようだ。緒方は、ゆっくりとベットに横になった。朝から、神埼には病院に泊まってくると伝えてある。きっともう今は温かいベットのなかでぐっすり眠っているだろう。昨日、二人でケーキを食べて、珍しくお酒を飲んだ。普段、あまりお酒を飲まない神埼が嬉しそうにケーキを食べて、お酒を飲む。理由を聞いても笑って何も言わない。何か、嬉しいことでもあったのだろうか。聞いてみたいし、聞いたらもったいないような気がして。緒方は、嬉しそうに笑う神埼のことを見ていた。お酒を飲んだ後の神埼は、2、3日はゆっくりと眠れる。お酒の力を借りるのが嫌いな神埼は、安眠のためにお酒を飲むことを避けるのだけど。彼が楽に穏やかに眠れるなら、晩酌もいいものだ。おかげで彼とこうして離れていても、少し、気が紛れる。「彼のコロッケが食べたいです。。はぁ。。」神埼と会えない日は、どうも落ち着かず、もやもやする。彼と出会う前の自分はこんな時間をどう過ごしていたのだろうか。もっと、あっという間に時が流れて、寂しい、という感情もあまり感じなかった気がする。「神埼くんがいないと、私はだめですね。」この寂しさは、嬉しさの裏返し。きっと、幸せの裏返し。しばらく、仮眠をとろう。そして、ぐっすり眠ったらすぐ帰ろう。彼の顔をみて、抱き締めたい。緒方は、ベットに潜り込み、深呼吸をした。朝日が眩しい。今日も朝からカウンセリングの予約が入っている。不眠症で悩む患者だ。ベットから起きた神埼は、ひんやりと冷たい隣のスペースを見やった。緒方は昨日、病院に泊まっていて、そこにはいない。それはすいぶんと久しいことだ。朝、目覚めると隣にはいつも緒方がいる。にこにこと自分を見つめて、目が合うと、おはようございます、と目を細めて頭を撫でる。暮らし始めたときは、とても恥ずかしくいてもたってもいられなかったが、いつの間にか心地よくなっていた。「俺、ヤキが回ったのかも。。。」なんだかくすぐったい気分で、ベットから起きる。昨日は一人で晩御飯を食べたので、その残りがある。朝御飯を作る必要はない。神埼は、残りのおかずをすばやく食べると、シャワーを浴びに浴室に向かった。シャワーを浴びて、携帯を手に取ったとき、着信とメールを受信していた。お昼ご飯を一緒に食べましょう。メールを見るとそう書かれていた。「全く、しっかり仕事しろよな。」ほころぶ自分の頬をつまみながら、神埼は病院へと向かう。今日も、忙しくなりそうだ。




