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普通人が行く異世界冒険記  作者: 豆腐斧


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第一話 平均点の男、空から落ちる

勉強も平均。運動も平均。顔も平均。身長も平均。

通知表に並ぶ数字はオール3。

人生を振り返ってみても、突出した才能もなければ、致命的な欠点もない。

そんなとても普通な男の普通じゃない物語

安本大介、二十八歳。


勉強も平均。

運動も平均。

顔も平均。

身長も平均。

通知表に並ぶ数字はオール3。


人生を振り返ってみても、突出した才能もなければ、致命的な欠点もない。

そんなとても普通な男だった。

だからこそ、どこへ行ってもそれなりにやってこれた。


大学を卒業し、それなりの企業に就職し、それなりの給料を貰い、それなりに生きる。

そんな人生になるはずだった。


――少なくとも今日までは。



「安本ぉ!! お前まさか飛ばへんとか言わんよなぁ!?」


耳元で響く大声に、大介は引きつった笑顔を浮かべた。

社員旅行二日目。山奥の観光施設。

目の前には高さ百メートルを超える巨大なバンジージャンプ台。


下を覗けば足が震える。普通に考えて飛びたくない。


だが、俺が勤める会社に『飛びたくない』という選択肢は存在しなかった。


「若いうちは挑戦や!」

「男なら根性見せろ!」

「空気読めや!」


先輩社員たちは口々に好き勝手なことを言う。

断れば何を言われるかわからない。

月曜日からの職場環境が地獄になることも容易に想像できた。


俺は心の中で盛大なため息を吐く。


――いつもそうだ。


強く反対できない。

空気を壊したくない。

波風を立てたくない。

その結果、気付けば流される。

平均的な人生を歩んできた男の悪い癖だった。


「……飛びます」

観念して告げると、周囲から歓声が上がる。


「そうこなくっちゃ!」

「安本ならできる!」

「行け行けー!」


誰一人として代わってくれる気はないらしい。


当然だ。

飛ぶのは自分なのだから。


スタッフにハーネスを装着され、大介は震える足でジャンプ台の先端へ立った。


風が吹く。


足元の景色が揺れる。


怖い。

とにかく怖い。


だがもう後戻りはできなかった。


「3!」


後ろからカウントが始まる。


「2!」


心臓が暴れる。


「1!」


俺は目を閉じた。


そして――。


「うわあああああああああああああ!!」


跳んだ。


体が宙へ投げ出される。


猛烈な風圧。


急速に近づく地面。


そして。


本来ならここで。


ゴムが伸びて反動が来るはずだった。


だが。


――来ない。


「……え?」


視界の端で何かが弾け飛ぶ。


パァンッ!!


乾いた破裂音。


次の瞬間。


足に繋がっていたはずのロープが、宙を舞っていた。


「え……?」


理解した。

理解してしまった。

切れた。

バンジーのロープが。

切れた。


「いやいやいやいやいやいや待て待て待て待て待てぇぇぇぇぇぇ!!」


人生最大の絶叫が山に響き渡る。


平均的な人生。

平均的な男。

そんな自分の最後がまさか。

バンジー事故による墜落死だなんて。


誰が予想できただろう。




迫る地面。

死の確信。

走馬灯すら流れない。

ただただ、


『なんで俺なんだよ!!』


その叫びだけが頭を埋め尽くした。

そして。


地面へ激突する――その寸前。


世界が砕けた。


空が割れた。


光が溢れた。


大介の身体は、眩い白光に飲み込まれる。

落下感覚だけを残したまま。

意識は闇へ沈んでいった。

初作品になります。よろしくお願いします。

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