エピローグ:絶滅宣言
――終わった、と思った。
わたしの神企画『猫ちゃんグラビア撮影会』を潰してまで執事が提案してきたのは、なんと『腐ってるのに顔は最高な男子たちの女装撮影会』である!
き、き、き、きしょすぎるぅうううう~~~~~~!
そんな企画当たるわけないでしょうがバァァアアアカじゃないの!?
よしんば顔は綺麗は認めるとしても、内面が終わってることをタイトルにする必要ある!?
しかもカザネもジャックくんも恥ずかしがり屋だから、絶対にファンサービスなんてしないだろうし!
あーもう意味わかんない意味わかんない!
こんなの負け確定よッ――と。
そう思っていたのに……しかし。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお傲慢姫男子と陰キャ殺人鬼男子なんてご褒美しゅぎりゅうううううううううッッッッ!!!!』
『カザネちゃんッジャックちゃぁあんッッッ!』
『こっち向いてぇええええええ!!! 目線くださぁあああああああい!』
『ローアングルいいすか!? ローアングルいいすかぁああああ!?』
……待っていたのは、はてしない客たちの大熱狂だった!
「や、やめろぉ撮るなぁ! 斬るぞ変態共!」
「く、くそっ、くそぉ! もういつかおまえら殺してやるッッッ!」
顔を真っ赤にしてブチ切れるカザネ先輩と、殺人鬼の本能がおっぴろげになりそうになっているジャックくん(異国の女子制服装備!!!)。
ガチでこいつら強いので危ないのだが、客たちはなぜか大興奮だ。
そんな中をアシュレイが「はーい、シャッター一回に付き100ディナールですよー! ポーズ指定は300ディナールでーす!」と、すんごいいい笑顔で集金してまわっていた……!
「ではこれより、握手会をはじめまーす! こちらは一回5000ゴールドですが、好きな罵倒セリフを言ってくれるサービスつきでぇええす!」
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッッッ!!!』
――こうして。
わたしも訳が分からないままに、ハロルド先輩との売上対決は、空前絶後の大勝利を迎えてしまうのだった!
「どどどど、どうしてこうなったあああああ~~~~!?」
こんな勝ち方っ、ありなのぉ~~~~~!?
「ねえヴァイスくんどうなってんの!? ねえ!?」
「…………俺にもわけがわからなくて頭が真っ白なんだが、なあ、レイテ嬢」
な、なに?
「――女装というのは、こんなに大人気なのか? 王国の復興に取り入れるアイデアはありか?」
なしなしなしなしなしなしいいいいいいーーーーー!!!!
◆ ◇ ◆
――かくして、夜。
校庭の中心に巨大な焚火が輝く中、生徒たちは各々、打ち上げの会を開いていた。
「あっはっはっは! いやぁ~~負けましたよレイテ様! まさかあんな方法で負けるとは!」
「うっさいわハロルド先輩! あんな変態な勝ち方、わたし認めないわよぉ~~~!」
わたしたちも同じだ。
今はそれぞれ適当な食べ物を持ち寄り、隅に座って、適当にダベっている。
ちなみに、しれっと混ざろうとしたヴァイスくんにはお帰りいただいた(※すごいショックな顔をしていた模様。部外者なんだからしょうがないでしょ)。
「しかしカザネ様とジャックさんがあんな恰好を……ぷふー!」
「うーっ、もう切腹するしかないでござる……!」「僕、厳格な法務官志望なのにあんなぁ……!」
負けたのに上機嫌そうなハロルド先輩と、逆にまだ顔を赤いままでうなだれているカザネ先輩とジャックくん。
そして、
「ふぅ、いい仕事をしましたねぇ!」
……無駄にいい顔をした執事アシュレイがうざすぎる!
「はぁ~~やれやれだわ。学園生活のしめくりが、あんな変態なことに……」
「フッ、まぁいいじゃないかレイテ殿」
といってジュースを差し出してきたのは、生徒会長のセラフィムだ。
なによ。こっちも負けたのにさわやかそうねぇ。
「無茶苦茶だったが、それでも楽しい結末だった。あんなカオスな展開は、大人になったら味わえまいて」
「そりゃそうかもしれないけど……」
いやいやいや。カオスにもほどがあるでしょうに。
「俺は満足した。ハロルドも、もちろんだよな?」
「ええ」
会長の問いに、ハロルド先輩は珍しく、満足そうな顔で頷く。
「ふふふ……たったの一敗ですが、それでも私の負けです。この万能のハロルドが、まさか敗北する時は来るとは……」
世の中ままなりませんねぇ、と。負けたくせに本当に楽しそうね。マゾかな?
「私にとってもいい青春になりました。――カザネ様も、実はそうだったり?」
「誰が!!!」
ってちょいちょい。カザパイが認めるわけないでしょ。
今回一番ダメージ受けたのは彼なんです。
「が……まぁ、うむ。アキツ和国の男子として、一生モノの恥を食らったが……それも、青春かもなぁ……」
「って、ええええええ!?」
あ、ああああああのカザパイが、恥辱を受けてなお、ちょっといい顔をして笑ってるぅ~~~~~!?
まさか!
「メス堕ち!?!?!?」
「違うわあああ! 貴様ぁレイテ! 貴様が一番拙者のこと舐めているだろう!?」
刀を抜こうとしたカザパイをジャックくんが「わーっ!?」と押さえ、うっかり暗殺体術SSSSSSSSSランクのせいでスッ転ばせる!
「うわあああごめんなさい~~~!?」
「あははははは! ざまぁですねぇカザネ様! 大人しくしてたら人を散々こき使ってくれたバツですよバツ! ぷぎゃああああ!」
それを見てハロルド先輩が馬鹿笑いしたり、「貴様ぁハロルドぉおおお!?」と本気でキレたカザパイが飛び蹴りかまして、それをハロルド先輩が避けたことで会長に当たったり――あぁまったく。
「本当に、騒がしい奴ら」
でも。
「あんたたちのおかげで、楽しい学園生活が遅れたわ」
『――!』
だから、ありがとう、と。
今日ばかりは素直な気持ちで、彼らに笑顔で礼を告げるのだった。
「レ、レイテ様……」
「ん、なによハロルド?」
「今の笑顔、聖女度マックスでした。やはり世界的聖女になるべきでは?」
「って誰がなるか~~~!」
いい加減に諦めなさいっつの!
「まったくもう……!」
――こうして、わたしが学生として過ごす最後の夜。
へんてこだけど面白い仲間たちと、穏やかに終わると思っていた……そのとき。
闇の粒子が、夜空に咲いた。
『――あー、あー。テステス。みんな見えてる? 聞こえてるぅ~~~?』
「ッ!?」
同時に響く少年の声。
誰もが驚く中、わたしも続いて空を見上げる。
そこには……ああ。
かつて、『地獄狼』が襲い掛かったときのように、暗黒光で造られた巨大な投影映像が浮かんでいて……!
『聞こえているようだねえ。僕はハクヨウ、よろしくぅ~♪』
喋っているのは、角の生えた謎の少年だった。
白く艶やかな民族衣装に、見れば吸い込まれそうなほど整いすぎた顔。
だが、異様極まる『魔獣』のような角と、まるで獲物の虫を見る爬虫類のような目が、全てを台無しにしていた……!
『あ、なんか喋るの飽きてきたや。というわけで人間ども~単刀直入に言いま~す』
彼はどこまでも軽い調子で、わたしたちを見下ろしながら――、
『アキツ和国は、僕ら〝魔人〟の手に堕ちました~』
ここから、『人類絶滅』をはじめるよん♪ ――と。
ハクヨウなる少年は、全人類に宣告したのだった……!




