155 逆転の変態アシュレイP!
「それにしても学園の敷地内は、校舎内も外も異様に歩きやすいな」
「ああ、『床磨き部』が磨いたり『変な形の石見つけよう部』が丸い石以外拾って保全してるから」
「なんだその部活は!?」
文化祭を共に楽しむことになったわたしとヴァイスくん。
彼のおかげで過剰な声かけもなくなり、アイス買ったりジュース買ったりで快適に過ごせるようになっていた。うめ、うめ……!
「しかしハロルドめ、売上対決とは愚かなことを。レイテ嬢は現役の領主で、領地に人を集めるために様々な策を考えてきたというのに」
「そーでもないわよ。わたしは基本、店だしたいってやつにお金渡してただけだからね。内装まで一から考えたのは今日が初めてよ」
「そうなのか。それは緊張しただろう」
「ふふん。逆よ、逆」
慣れないけれどそれだけ楽しめたわ。
このレイテ様が手ずから飾りとかも作ったりしたし~~~!(※アシュレイ、カザネに上手さで完全敗北したけど)
「いい経験になったわ。ハンガリア領に帰ったら活かして、さらに強大な悪の都にしちゃうんだから! 目指せ、王都越えよ!」
「ふはっ、そうか。それは国王として負けられないな」
レイテ嬢が引っ越したくなるほどの街を目指そうと、ヴァイスくんのほうもなにやらやる気だ。
これは王国の未来も安泰ね。
「さて、そろそろ昼の時間も終わるな。売上勝負はどうなっただろうか?」
「さぁねぇ。そういえばわたし、ハロルド先輩たちの出し物を知らないわ」
まっ、どんなのを用意してても負けることはないでしょう!
「このレイテ様の力にかかればけちょんけちょんよー! おーーーほっほっほーーーーー!」
なんて笑っていた――そのとき。
「た、大変ですレイテお嬢様!」
「!?」
店をやっていたはずの執事長、アシュレイがこちらに駆けてきた!
って、
「なによその格好は!?」
アシュレイの姿は、ごてごてのピンクと銀に輝いていた!
というのも、なにやら『銀髪の女の子』のイラストが描かれた缶バッチやらキーホルダーやらを、全身に纏っていて……って!
「それ、もしかしてわたしぃ!?」
「はぃいい! 恐れ多くもレイテ様グッズを勝手に売る店があり、わたくし、怒りながら全品購入してきました!」
「すんなぁッ!?」
売上貢献してんじゃないわよカス執事が!
「わ、わたくしめらの執事喫茶も大変好調なのですが、なにぶん『回転率』という面で、グッズ販売店には及ばず……! しかも人気のお嬢様のグッズとなればぁ~……!」
い、いったいどこの誰よ!
勝手にこのレイテ様をグッズ化して、売りまくる不届き者は!
「――あっ、まさか!」
わたしは、気付いてしまった……!
「ハ、ハロルド先輩たちねーーーー!?」
◆ ◇ ◆
「完売! 聖女レイテ様グッズ、完売でぇす!」
『そんなあああーーーーー!』
……例のわたしグッズ販売店に向かってみたら、そこには想像通りの光景があった。
多くの客たちがうなだれる中、さわやかな笑みを浮かべた法被姿のイケメン店員たちがいて……!
「ハロルド先輩にッ、セラフィム会長!」
「おぉっ!? これはこれはレイテ様じゃないですか! みなさま~、レイテ様が降臨しましたよーーー!」
『やったああああああーーーー!』
うがああ客ども盛り立てんな腹黒万能野郎! 帰らせろー!
「あ、あんたどういうつもりよ!? 勝手にわたしのグッズ売ってぇ!」
「ふっふっふ。いやぁなに、レイテ様の『わたしの力、見せてあげるわ』という宣誓を聞いて、思いつきましてねえ……!」
法被をばっとめくるハロルド先輩。
そこにはわたし風女の子のイラストがついた缶バッチが、ずらりと並んでいた!
「ならばレイテ様の人気にあやかって、レイテ様グッズを出せばいいと考えたのですよぉーーーーー!」
「ふざけんなぁああああ~~~~!?」
無法にもほどがあるだろコイツッッッ!
どんだけわたしに勝って世界的聖女にしたいわけ!? わたし自分のグッズで負けちゃうのぉ!?
「わ、わたしの肖像権どこいったぁ!」
「おっと勘違いしないでください。こちらはあくまで、『レイテ様という名の銀髪女の子オリキャラ』を売っているだけですから!」
ファッッッ!?
「これらはレイテ様であってレイテ様じゃあありませええええええん!」
「悪質同人屋があああああああ!!!!」
クッソ! こいつ禁忌すれすれなことやりやがって~~!
「ちょっとセラフィム会長! あんたも止めなさいよー!?」
「だ、ダメなことだったのか? それに俺もレイテ殿もグッズは欲しかったのだが……!」
「箱入り非オタ王子の隠れファンがッッッ!」
ぐぬぬぬぬぬ。そういえば会長が聖王になれたきっかけは、一応わたしってことだったか。
ヴァイスくんが勝手にやったようなものなのに……!
「ふふふふふ。レイテ様は悪女を目指しているのでしょう? ならば多少のダーティプレイに腹を立ててどうします」
「うっ……」
そ、それはまぁたしかに……。
「……どうするレイテ嬢? キミが許さないと断じるなら、俺は剣を抜くが?」
「いえ、いいわヴァイスくん。なんでもかんでもあなたに頼るわけにはいかないし」
それにッ、
「相手は本気でこっちを大聖女にしようとしてきてるの。ならばこっちもきっちり勝負に勝って、大悪女だと示してやらなきゃ!」
さぁ、二本目の出し物で勝負よと、わたしはハロルドに指を突き付けた!
「ふははっ、やはりあなたは抗ってくれますねぇ! ここまで私に挑んできた者は初めてだ!」
「うっさいわ腹黒野郎! それより、一本目では出し物を教えたんだから、二本目ではそっちが教えなさいよ!」
「ふふ、いいでしょう。こちらは『レイテ様をイメージしたドリンクや食べ物を出す店』を開く予定で……」
「勝手にイメージすんなああああああーーー!」
まぁたわたしで売る気かいチクショウ!
こいつもはやわたしのことプロデュースしてるでしょ!?
「ふ、ふんいいわよっ。正面堂々打ち破ってやるから。なにせこっちの二本目の企画は、『グラビア猫ちゃん撮影会』という神企画で……!」
「レイテ様の企画力って女子児童ですよね」
「なんだとこらぁああああ~~!?」
そうして、「これは勝負はいただきましたか」と、腹立つハロルドがほくそ笑んでいた――そのとき。
「フッ。こうなればやるしかありませんか……」
執事アシュレイが、冷たく眼鏡を光らせた。
「ア、アシュレイ……!?」
「お嬢様。あなたを世界に称えられる存在にせんというハロルドの目的には賛同できますが、しかし。そのためにあなたに敗北の屈辱を味あわせるなど、本末転倒……!」
アシュレイの長身から、燃えるような闘志が満ち溢れる……!
こ、こんなに本気でシリアスなアシュレイ、ヴァイスくんや『地獄狼』との決闘以来だ!
「もはやヴァイスだけに良い格好はさせない! このアシュレイがッ、お嬢様を勝たせてあげましょう!」
「アシュレイ……!」
「二本目の企画、わたしに任せていただいても!?」
ああ、そんなの。
「問われるまでもないわ。わたしの最高の執事っ、あなたに全部を任せましょう!」
だからどうか勝たせなさいと、わたしは彼に命令を下すのだった!
「イエスッ、マイロード! ならばッッッ!」
そうして彼は、燕尾服の内側からなぜか様々な『女性もの衣装』を取り出し――!?
「『女装』させます」
……えっ?
「顔は最高に綺麗なのにドブのような人格と本性をしたカザネくんとジャックくんを、『女装』させます」
「!?!?!?!?!?!?!?」




