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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

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148 海賊の遺産、それは――!


「うあああああああ~~~~~んっ、もうやだああ~~~~!」



 ――パイセンと別れたあとのこと。

 右の道を行ったわたしは、それはもう数多の罠に引っかかった……!


 矢が飛んでくる罠。落とし穴の罠。毒ガスが出る罠に天井が崩落する罠になんか爆発する罠と、殺す気マンマンのラインナップだ。


 まぁ、みんなのおかげで無事ではあるんだけどね……!



「大丈夫だレイテ嬢。なにがあっても俺たちが守ろう」


「あ、ありがとう。けど、できれば最初から罠には引っかからない方向でいきたいわ……!」



 最強王子に暴風幼馴染に撲殺執事らが、なんとかはしてくれた。

 だけどわたしはもちろん、みんなも引っ掛かってはそれを無理やり打ち砕くような、セルフ問題解決スタイルなのよねぇ。



「はぁーあ。ドクター・ラインハートみたいに、罠が見抜ける人がいたらいいのに」



 あの人ってば、なぜかお父さんにキレられながら連行されちゃうんだから。

 なんか悪いことしたのかしらね?



「一応、見抜けそうな人自体はいた気がする(・・・・・)けど……」



 じと~っと、真後ろの空間を見る。

 そこには洞窟の壁面が広がるだけだが、しかし。



『なははっ、悪いな嬢ちゃん!』



 胴間声と共に、なにもない場所に彼は再出現した。



「俺みたいな玄人が罠を全部なんとかしたら、冒険にならねーだろ? あんたらがなんとかする姿を愉しみてーんだよ」



 と言いながら現れたのは、白の放射光を纏った元海賊団船長・エイハブだ。ようやく脳が(・・・・・・)彼の存在を思い出す(・・・・・)

 これが彼の異能らしい。罠にまみれる道すがら、説明してくれた。



異能(ギフト)密室の白鯨(インザホワイト)』。他者の認識から消える力とか、犯罪者が持っちゃ一番やばいやつでしょ……」



 そう。彼は物理的に消えていたわけではない。

 ことわざの〝部屋の中のゾウ〟よろしく、このクソデカオッサンはそこに存在しているはずなのに、周囲の人間が意識を反らしてしまうのだ。

 この二十年間で捕まらなかったのも、たびたびその力で認識を薄めてたかららしい。



「流石は異能海賊団の王様。そんなずるい力で今まで、なにやらかしてきたんだか」


「っておいおい。そんなに使ったこたぁないんだぜ? この異能の使用中は、海軍打ち破る武勇伝あげてもだーれも認識してくれねーし、船員との連携もできなくなるからな」



 派手好きな海賊にゃぁ余計な力だよ、なんて言うけれど。



「馬鹿おっしゃい。同じ悪人として、悪人の理性なんて信じないわよ。どうせちょいちょい使ってなんかしてたんでしょ?」


「……はい。ご近所のおかずを味見したりしてました」


「するなッッッ!」



 くっっっそ迷惑なオッサンね。

 新手の妖怪なんじゃないの?



「レイテお嬢様離れてくださいッッッ! どうせこいつシャワー覗いたりしてますよキシャーッ!」


「それはあんたの願望でしょアシュレイ。……それよりも」



 長く続いた罠廻廊の先を見る。

 気付けばいよいよトラップはなくなり、まっすぐな一本道が広がっていた。

 振り返れば、わたしたちが来た反対側にも道が。

 先輩が行った左の道ね。



「どう、ケーネリッヒ? ハロルド先輩まだきてなさそう?」


「ああ。半径百メートル、探知範囲にはいないな。俺たちの勝ちだぞレイテ」



 風を読む力の応用で、人の位置もわかるようになったらしい幼馴染が頼もしい。

 今度隠れてる猫ちゃん探してもらおうと考えつつ、わたしは前を見据えた。



「ふっふっふ。罠もいい加減にネタ切れでしょ。あとは悠々とゴールしてやるわよ~~~!」



 と笑いながら、洞窟の最奥へと向かおうとした――そのとき。



「むっ、レイテ待て! やつの反応ありだ!」


「えっ!?」



 感知していたケーネが叫ぶ。同時に、「これは……やつ以外に、大きなものが迫って……!?」と、何かを感じ取っている。



「な、なーんか嫌な予感が……」


「――レイテさまあああああーーー!」



 はたして、猛スピードで駆けてくるハロルド先輩。

 その背には……、



「あ、あはは、困りましたねぇ。こちらの道、罠はほとんどなくてインスマウスが潜んでいる道で、小動物に変身してそいつらをちまちま避けてきたんですが、最後に……」



 大岩トラップ、踏んじゃいました☆ と、先輩は舌を出しながら言うのだった。

 踏むなぁああ~~~~!



「じゃあ最後は、みんなで一緒に逃げましょうか!!!」


「うるせーーーー!」



 こうして、ゴロンゴロンッと転がり走る大岩を背に、わたしたちは全力ダッシュで逃げるのだった――!




 ◆ ◇ ◆




「どうするレイテ嬢、あの岩、爆発させるか……!?」


「って洞窟が崩れたらどうするのよ! なんでもかんでも爆発させていいと思ってるのヴァイスくん!?」


「ああ、俺は王として、実の弟すら大罪人なら爆滅すると決めたヴァイスくんだ!」


「クソデカスケールな覚悟すんな!」



 そうして、転がる大岩に追われ続けること数分。



「――みんな見て! あの奥の部屋っ、すごい輝きが溢れているわ!」



 途中でヴァイスくんに抱えられ、わんわん泣きながら駆けることしばらく。

 薄暗い洞窟の最奥に、わたしたちは輝きを見出した!



「あそこがたぶん、お宝のある部屋ねっ。けど……!」



 わたしたちの背後には、未だゴロンゴロンッと転がり続ける大岩が。



「このままじゃ、お宝まで滅茶苦茶になっちゃうじゃないの!? インスマウスどもはどういう罠設計してるのよ!」


『あはは、所詮は魚人ですからね。魚に高度な知能は期待しないでください』


 ……と、諭してきたのは、途中でダチョウに変身したハロルド先輩である。

 走るにはこの姿が一番とのことで、わたしたちの横を猛スピードで並走していた。



「流石は万能変身野郎。もうなんでもありね」


『ありがとうございます。ところでお嬢さんは誰ですか?』


「ってダチョウの知能に侵されてんじゃないわよッ!?」



 ダチョウは家族の顔も覚えられないことで有名である。

 この人、魚に変身していたときも脳みそ魚になってパーになってたらしいのに、なにやってんだか。



「とにかく……ヴァイスくん!」


「ああ」



 わたしの意を酌み、抱えてくれていたヴァイスくんが立ち止まって振り返る。



「洞窟内じゃ危なかった爆発奥義、解禁よ。仕方ないからやっちゃいなさい!」


「いいだろう。見ていてくれレイテ嬢」



 彼はわたしを下ろすと、深くその場で腰を落とし、引き絞るように拳を構えた。

 そして――!



「“ストレイン流異能拳法”――『居合い拳・撃煌一閃』!」



 次瞬、ズガァアアアアアアーーーーーンッッッ! と!

 目にもとまらぬ速さで拳を放つや、大岩が大爆発!

 砕ける破片もケーネが風圧で跳ね除けてくれて、なんとか危機を乗り越えたのだった。



「や、やったーーー! これでわたしたちはもちろん、宝の部屋も岩で潰されなくなったわ! 不労所得に近づいたー!」


「っておい嬢ちゃん。可愛い顔してドサンピンなこと言ってるとこ悪いが」


「ドサンピンってなによ!?」



 唐突にディスってくるエイハブ船長。わたしが怒鳴るも、彼は神妙な顔でそれを無視し、



「今ので、洞窟にガタがきたみたいだぜ?」



 瞬間――ズズズッ、と。

 洞窟全体に、致命さを感じる鳴動が響いた。

 あちこちの床や壁に、ぴしぴしとヒビまで入り始める……!



「っ、これは……」


「構成する積層が崩れ始めたな。帰り道を考えるなら、いそいでゴールに向かったほうがいい!」


「わ、わかったわ!」



 再び駆けるわたしたち。

 そうして、ついに。光り輝く最奥の部屋に飛び込み――!



「ついたーーーーーー! ここがお宝の部屋ねッ――て!?」



 はたして、そこには。



「お宝は……どこ……?」



 たしかに、光りものならあった。

 どこかから流れ込んだ金貨や、宝石の類がぽちぽちと。

 しかしそれらは『海賊の遺産』というには、少なすぎる。



「ふ、ふむ。輝きを放っていたのは、この水晶のようですねぇ」



 人間に戻ったハロルドパイセンが、わたしと同じく困惑しながら、部屋の天井を見渡した。

 そこには内側から光を放つ大結晶が。



「これは『偽魔晶石』ですね。古き魔獣の堆肥が地層内で圧縮された結果に生まれるものとされ、魔獣から採れる魔晶石と同じにように発光する性質を持ちますが、まぁそれだけです」


「そ、それだけって……」


「光り輝いて綺麗ですが、まぁ元は堆肥ですからねぇ。地面から離すとすぐに光も弱ってしまいますし、売っても二束三文ですよ」


「そ、そ、そんな~~~!」



 わたしはガックリとうなだれてしまった。

 ちょっとぉ、海賊の遺産はぁ!?

 大量のお宝はどこー!?



「せ、せめて異能具だけでもないの!? 海賊団の切り札だっていう国を脅かすような異能具パチって、恐怖の女王様になってやるわよッッッ!?」


「レイテ嬢、それなのだが」



 そこで、ヴァイスくんが気まずげに口をはさんだ。



「少し、おかしいと思っていたんだ。クォド・エイハブ、やつの存在を消し去る異能を聞いたときからな」


「えっ……あ」



 そこで、わたしも思い至った。



「そうだ。エイハブは『年食って自分じゃ宝を取りに行けない』と言っていたけど」


「やつの異能があれば、インスマウスどもを無視して進めただろう。というか」



 ヴァイスくんは視線を鋭くし、なにやら満足顔の船長を睨みつける。



「おいエイハブ。……貴様、無一文で漁師を始めた身にしては、ずいぶんと立派な船に乗っていたな?」



 そう。あんな大型蒸気船を買うお金、どれだけ優秀だろうが稼ぐのは至難なわけで――、



「貴様……とっくの昔に宝を回収して、その金で買ったな?」


「へへっ、正解だぜ王様」



 え、えええええええええーーーーーーー!?

 このおっさんなにやってんのぉおおおーーー!?



「やはりか……。ついでに問うが、もしや貴様、切り札の異能具というのは……」


「ああ、そっちについては最初からねえよ。海軍共を脅すための、ブラフだ」


「悪辣すぎるぞ貴様!?」



 キレて掴みかかるヴァイスくん!

 わ、わたしも同じ気持ちじゃボケー!



「レイテ様怒ったわよ!!! おらっ脛にくらえっ極悪令嬢キック! っていたーい!?」



 うええええんっ、こいつ筋肉かたいよ~~~!?



「よくもレイテ嬢を傷付けたなッッッ!?」


「や、今のはお嬢ちゃんの自爆な気がするが……まぁ落ち着けよ」



 エイハブは、努めて冷静にヴァイスくんの手を剥ぐと、なにやら熱いまなざしでわたしたちを見渡した。



「なぁおまえら……これまでの道中、大変ではあったけど、同時に楽しくはなかったか?」


「えっ……」


「たくさんの危険があった。泣いたし、転んだし、迫りくる魚人や罠の山にによって、たいそう怖い思いをしたよな。けど!」



 エイハブは太い両手を広げ、わたしたちに熱く問いかける。



「常にそばには、仲間がいただろうがよ!? どんな恐怖も、仲間たちと跳ね返したきただろうが! ああ、ソレなんだよ。俺がおまえたちに与えたかった、宝って言うのは――」



 そうして最後に、彼は男泣きしながら……、


「『仲間たちとの思い出』! それが海賊の遺産だったんだよおおおおおおーーーーーー!」



 エ、エイハブ船長……ッ!



「……みんな」



 彼の言葉に、わたしたちはみんなと顔を見合わせた。

 そして、思いを一つに頷き合い――、



「――こいつボコッて捕まえて、海運国に売り渡して懸賞金もらいましょうか」


『オオオオオオオーーーーーッ!』


「っておまえらああああーーーーー!?」



 ――こうして、異能を使う間も与えず、わたしたちはクソ船長を襲撃。

 半ば殺す気でボコグチャにして、大金を手に入れたのでした! くそぼけがー!


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