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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

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143 電撃君臨、レイテちゃん!


「――フム。しかし即日で国を落としにかかれ、とは……」



 少々の冷静さを取り戻したところで、セラフィムは口を開いた。



「シャキール王子も無茶苦茶を言うものですな。さすがに急過ぎでは?」


「そうでもないさ」



 かつて『地獄狼』に受けた奇襲を模倣した、実質ヴァイス単騎による革命。

 それを聖国の王子らが受け入れたところで、ヴァイスはふとしたぼやきに答えた。



「シャキールを舐めるなよ、猫撫で生徒会長」


「ねっ、猫撫で生徒会長……!? レイテ殿はそんなことまで貴殿に報告して……」


「我が友は頭がいい。レイテ嬢から学園の様子を聞いて、安楽椅子探偵よろしく特定していた」



 ヴァイスは足元の砂利を一粒拾い、



「セラフィム。貴様、こいつに監視されているぞ」



 瞬間、ジュバンッッッッ! と、ヴァイスは亜音速で砂利を弾いた――!

 空中で半ば赤熱化する砂利。それは赤い軌跡を描きつつ、意味の分からないコントロール精度で、少し離れたところの岩を過ぎたところでカーブし、



「――うひゃああああ~~~!?」



 ……死角となる岩陰より、少年の悲鳴を響かせたのだった。



「っ、この声は!」



 それはセラフィムにとって聞き覚えのあるものだった。

 無表情で岩陰に向かうヴァイスに続き、彼もその背に続いていく。



「お……俺は、いわば人質だった。エルザ兄さんが聖国に手を出したら殺される、そんな条件の……」




 ルクレール聖国はどこまでも悪辣で効率的であった。

 不死に覚醒したエルザ王子。その命を奪えないなら、即座に『命より大切なものを盾にしてやろう』と思いつく程度に。



「だから……どこかに俺の監視役が潜んでいるとは、思っていたが……」



 そうしてセラフィムは見てしまった。

 岩陰に潜んでいた者の、柔らかな栗色の髪を。



「おまえだったのか、コルベール」


「あはは……バレちゃったかぁ」



 コルベール・カモミール。

 同国の出身者にして、学園における外務科トップ。そして生徒会の仲間である少年である。

 水着の裾を岩に食い込ませた姿で、彼はそこに立っていた。



「なぜだヴァイス殿……なぜコルベールが……」


「単純に適任だからだろう」



 呆然とする若者にヴァイスは語る。

 無情な瞳にわずかな憐れみを込めさせて、



「監視者に大事なこと。それはバレないこと以上に、〝なにがあっても排除されないこと〟だ」


「それは……ああ」



 セラフィムは思い出した。

 広報担当・コルベールの誇る、異様な異能を。



「自身への害を逸らす能力、『死への銀弾』……。それがおまえの異能だったな、コルベール」


「うん、そーいうこと。ごめんね、会長」



 気付けば簡単なことであった。

 同国で、同世代で、社交的な仮面が被れる上、排除困難。

 これほどセラフィムを見るに適した『目』はあるまい。



「……もしも、ヴァイス殿が聖国侵攻を先延ばしにしていたら」


「本国に伝えていたよ。それが僕の役目だからねぇ~」



 というか今すぐ駆け出すところだったし、と。コルベール・カモミールは悪びれもせずに言う。



「というわけで、無敵な監視役の僕なのでしたと。けど……うぐぐ」



 水着のズボンをひっぱるコルベール。

 しかしどれほど砂利は岩に深く食い込んだのか、巻き込まれた布地はまったく外れる気配がなかった。



「どうなってるのさ、ヴァイス陛下……。僕、無敵のはずなんだけど? なんで砂利が当たったんだよ」


「知れたこと。貴様の異能が最大限に効果を発揮するのは、貴様『自身』に害が及ぶときだ。ならば衣服を狙えばいい。異能出力が低い状態なら、あとは膂力で押し切れる」


「なんだこの人ー……」



 かくしてあっさりと捕縛された模様。

 彼の異能など、今のヴァイスにはそう大したものではない。



「レイテ嬢の側に居ると、妙な異能者たちが次々集まってくるからな」


「あー……あの子、トラブル引き寄せ体質だもんね」



 その結果が今の経験豊富なヴァイスである。

 栗毛の少年は肩を落とし、「こりゃぁ詰んだかな」と呟いた。



「改めて、ごめんねーセラフィム会長。実は僕は送り込まれた存在で、会長の仲間になったのも、仕事だからでした」


「そうか……」


「怒ってる? 失望してるー? あはは、これでエルザお兄ちゃんと同じく、身内に裏切られ仲間だね~」


「そう、だな……」


「まぁーどれだけキレても無駄だよ。僕を傷付けることなんて無理だからねぇ~。代わりに、恨み言なら好きにどうぞー」



 無敵さゆえの余裕なのだろう。

 どこまでも笑顔のままで、コルベール・カモミールは、表情を暗くするセラフィムを煽った。

 例外的に拘束されても、どのみち相手に攻撃手段は皆無。なによりヴァイスと違い、セラフィムの能力は〝小動物への憑依〟。極めて貧弱で、本当に何もできないだろうと舐め切っていて――、



「ごめんな、コルベール」


「…………え?」



 だからこそ。

 心からの〝謝罪〟という奇襲には、まったく対処できなかった。



「はっ……え? ごめんって……え? なにがだよ会長? 僕、裏切り者なんですけど?」


「違う。悪いのは全部、俺だろうがよ」


「え……?」



 金色の髪を垂れ下げ、セラフィムは真摯に頭を下げた。

 ――青春を奪ってしまって、すまないと。



「俺が全ての元凶だろうが……。俺が人質にならなければ、エルザ兄さんは好きに復讐できたし、おまえだって監視役になることはなかった。自由に青春できた」


「おい……」


「若くして仕事を押し付けられ、学園に押し込められるのは嫌だったろう。好きでもない俺と仲良くしなければいけないのは、ストレスだっただろう……!」


「おい、待てよ……」


「だから、俺は! おまえの時間を奪ってしまったことが、心から申し訳なくッ――」


「だから待てよッ! ちょっと黙れよ!」



 そこで、飄々とし続けていたコルベールが、初めて声を荒らげた。



「くそっ……勝手に色々決めつけんなよ」


「コルベール……?」


「無駄な時間だけ過ごしてきたように言うなよ……。それ、失礼だぞ」


「だ、だが」


「うるさい。解釈違いで頭さげんな」



 柔らかな栗毛をクシャクシャと掻き、コルベールは吐き捨てるように続けた。



「そりゃぁ面倒なこともあったさ。僕は人を騙すことは好きだけど、仕事を押し付けられるのは嫌いだからね。ほとんど(・・・・)嫌々な日々だったけど……」



 顔を背けながら、ぽつりと。



「でも……少しくらいは楽しかったよ、会長」


「っ、コルベール……!」


「だからもう謝んなよ……っ。好きに革命でもなんでもして、偉くなっちまえよ! バーーカ!」



 侵攻の容認。

 それは、事実上の裏切りの宣言だった。

 今度はセラフィムに対するものではない。

 自身を使役する聖国に対し、監視者は二重の裏切りを仕掛けたのだ。

 栗毛の少年は、友の味方になる道を選んだのだ。



「――決まりだな」



 若者たちが言葉を尽くしたところで、最後にヴァイスが締めくくる。



「これで好きなだけ暴れられる。革命後にも国際バランスを維持できる、優秀な外務担当を確保できたからな」


「な、なんだって……?」


「コルベール・カモミール。働かされるのが嫌なんだったな。ならば、取引しよう」



 拳を突き出し、ヴァイスは告げる。



「おまえを聖国の、次なる『外務大臣』にしてやる」


「!?!?」


「指折りの大権力者だ。これでおまえに嫌な仕事を押し付ける者はいなくなるだろう。代わりに」



 それから王は、泣きそうなセラフィムに目を向けて。



「このブラコンを支えてやれ、コルベール。俺にとっての極悪令嬢(レイテ)がごとく、小さくても頼れる背中になってくれ」


「……うるせーよ」



 コルベールはぶっきらぼうに吐き捨てると、突き出された拳に、自身の小さな拳をおもいっきりぶつけて、



「言われなくてもやってあげるさ。セラフィムは……僕の友達は、頼りないからね」



 あと小さい言うなと、栗毛の少年は笑いながら言うのだった。



 ◆ ◇ ◆



 で、夜!



「うええええええーーーーん! 海賊のお宝も異能具も、ぜんぜん見つからないんだけどぉ~~~! このレイテ様がめっちゃ必死で探したのにぃ!」



 臨海学校も一日目終了。夕食のバーベキューイベントで焼かれた肉をはぐはぐしつつ、わたしはぼやいていた。



「はぁ~~あ。あれからドクターはお父さんのラインハート先生に見つかって、なんか耳引っ張られながらどっか行っちゃうし。幼馴染(ケーネ)変態執事(アシュレイ)は相変わらずわたしの心動かそうと、なんか魚とか獲ってくるし」



 全員、宝探しする気がない模様。

 わたしの身が無事ならそれでよくて(給料あげてるからかしらね)、わたしが万能変身野郎(ハロルド)に負けたら〝世界的聖女にされちゃう〟って罰ゲームについては、



『まぁ、別にいいのでは……?』



 って感じだし! ぐぎいいいいいいーーーーー!!!



「くそぉ。わたしが真剣にそこらへんの浜辺掘ったり、ちょっと息抜きに砂でお城作ったり、野生の猫ちゃんと遊んだりして一生懸命に宝探ししてるあいだに、男共ときたらぁ~……!」



 と、わたしがぐぬぐぬしながらお肉食べていたときだ。

 不意に、「レイテ嬢」と聞き覚えのある声が。



「あっ、ヴァイスくん!」


「すまんなレイテ嬢。野暮用で少し消えていた」



 現れたのは長身金眼の水着国王様、ヴァイスくんだ。



「いいのよいいのよっ。ヴァイスくんのことだから、どこかで真剣に宝探ししてたんでしょ!?」


「あぁうむ。宝と言えばまぁ手に入ったな」



 やっぱりーーーー!?

 きゃーーーーーっさすがは頼りになるヴァイスくんさん! やるー!

 それで、海賊のお宝はどこどこー!?



「喜んでくれ。ルクレール聖国の宝物庫は、いずれキミのものになる」


「……………えっ?」



 聖国の、お宝……?

 え、なに言ってますの? えっ?



「手短に言おう。実は、ルクレール聖国でちょっと革命を手伝ってきてな」



 ファッッッッッ!?



「セラフィムが王となり、エルザが次期国王となった」


「会長が王様でエリィが次期国王!?」



 お昼の間になんでそんなことに!?



「だがセラフィムは権力に固執する気がないらしく、在位期間を十年以内にするとのこと」


「いやまってまってまってまって」


「そしてエルザも乗り気じゃないらしく、『できればお嬢にあげてください』とのことだ。数年後、考えておいてくれ」


「待ってーーーーー!?」



 ヴァイスくんさんは、いったいどこで宝探ししてきてるのぉーーーーー!?





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地獄狼よりはやーい!ハイスピード革命過ぎるわ
えっ。早っwww レイテ嬢が宝探ししてる間に革命終わっちゃったwww
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