140 集え、ハンガリアの戦士たち!(※逃亡犯一名)
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「謙遜しないでくれ。キミのおかげで『ディムナ部族連合』の陰謀を暴くことができ、各国立会いのもと、賠償も要求することができた。おかげで王国の復興もさらに早まる。それに『地獄狼』残党の存在も内々に知れて、安心できるというものだ」
語るヴァイスくんに、ハロルドがうんうんと頷いた。な、なによ。
「レイテ様、まさに救国の聖女ですよね~~~?」
ってうるせー! わたしは悪女だしー! 誰がどういっても悪女!
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前話、ほめ描写追記!
あとヴァイスくんを黒髪赤目と描写してるところがありました。ただしくは金眼です。
書類仕事つづきで充血してたと思ってください……!(´;ω;`)
――超危険な兵器『異能具』が落ちてるかもなビーチで宝探しすることになったわたし。
それだけでも泣きそうな上、相手は『万能』のハロルド先輩。動物にでもなれるやつだ。
で。先に彼が見つけたら〝宝を全部レイテ名義で募金して大聖女にしてやりますよ〟という犯行予告をもらっている……!
そんな追い詰められた状況の中――、
「大丈夫だレイテ嬢、危険からは俺が守る。……そ、そ、それはそうと、時間はあるのだから一緒に海の家にいかないか……!? あそこにはカカッ、カップルジュースというのが、あっあっ」
……無表情のままなぜか挙動不審に震えているヴァイスくん。
そして、
「――レイテお嬢様ァァアアッ! 海藻を取ってまいりましたァ! 加工すればぬるぬるの液体になるらしいので、私と一緒に作りませんか!?」
「――レレレレレレレレイテよ! そそそそその水着っ、にあっ、にあっ、あああーーダメだ俺には直視できない~~~~!」
「――だはははははは! ほぉら三人とも、ちゃんとアプローチしないとレイテくんの『心メーター』は動かないヨォ~~~!?」
三人の、頼れるんだか頼れないんだかわからない、変な助っ人たちがわたしの前にいた……!
◆ ◇ ◆
――数分前。
ハロルド先輩に〝危険な異能具まじってますよ〟と告げられたわたしは、もうイヤになった!
「わたし、極悪令嬢レイテ様!!! あぶく銭は欲しいけど危険はいらないです! それとなんかもう運が悪いことは自覚してきたので、絶対にその異能具踏んじゃったりして爆発しちゃうかもです!」
「そんな不運なレイテ様に追加の危険情報があります」
ファッ!?
「凶悪な異能海賊団『奈落鮫』。彼らは強力でしたからねぇ。生き残りは、私だけじゃないかもですよ?」
「えっえっえっ」
「まあ嵐の中でしたから、私のように異能具の位置はわからなかったでしょう。が、海運王は極秘調査の果て、このあたりにあると暴いてしまった。その情報をもしも彼らが掴んでいたら……レイテ様のトラブル巻き込まれ度を考えたら……!」
ファーーーッ!?
「また、変な集団とバトルになるかもですね♡」
「っていやああああああああああーーーーー!?」
めめめめめんどくさいんじゃあぁああ~~!!!
わたし世界一の悪女にはなりたいし負ける気はないけど、だからって率先してバトルは嫌よ!?
危ないし疲れるし! わたしは地元でぬくぬくと民衆嬲りたいスローライフ系極悪令嬢なのよー!?
「探索期間は二日としましょう。ちょうど、臨海学校が終わるまでです」
「そ、それはなんでよハロルド先輩」
「レイテ様。あまり長く探していると、『ナニカを探している人間』の姿が呼び水になってしまうんですよ。〝宝探しっぽいことしてる人がいるから、自分たちもしてみよう〟――なんて、一般人が集まらないとは限らないでしょう?」
なるほど、それはたしかに。
海賊の宝を見つけるだけならまだしも、何も知らないヒトが危険な異能具を拾って暴発させたら、大惨事ね。
「現在は臨海学校中。一般の民衆らは、貴族子女とのトラブルを避けるために、自然と掃けております。不特定多数に情報が流れることもない」
「ふうん。それで臨海学校が終わるまでに」
先ほど語った『奈落鮫』の生き残り。
彼らが海運王の調査結果も知らなかった場合、冗長した探索は、情報を与えてしまうことになるしね。
「ええ。このイベントはいいカモフラージュになります。ですよね、ヴァイス様?」
ヴァイスくんに問いかける先輩。
にこにこと底知れず笑う彼に、ヴァイスくんは「……そこまでお見通しか」と呟く。
「そうだ。国王の俺が急にビーチにきては不自然だからな。そこで、アリスフィア学園が臨海学校を開くにあたって、俺は〝暇を見つけ、レイテに会うために来ている〟ことになった」
おおっなるほど!
「レイテ嬢は『救国の聖女』。国王の俺がいくら気にかけても、民衆たちは違和感を覚えんからな。……そ、それと、レイテ嬢の人気を考えれば、伴侶にしても反対は……!」
うんうんなるほどなるほど。納得したわ。
周囲の人間は貴族の子供たち。王族をビーチで見かけても、一般人ほどは騒がないしね。
そっかーーー。
「ヴァイスくんは仕事のためにきたのね。本当はわたしのことどうでもよくて」
「それが違うッッッ!!!!!!!!」
って声デッカ!? なに!?
「えっえっ? わたしみたいなどうしようもない悪女、そんな構う価値はないでしょ!? ねぇ先輩?」
「……ヴァイス様。成人になったらこの人、一度無理やり組み敷いて〝わからせ〟てやるのも手ですよ?」
なに言ってんのハロルド先輩!?
言葉の意味は分からないけど、怖いこと!?
あっヴァイスくんもなんで考え込む顔してんの!?
「ふふふ。レイテ様といると面白そうなことばかり起きる。――では、おしゃべりはこのへんにして」
「っ!?」
そこで、光と共に一陣の風が起きた。
咄嗟に庇ってくれるヴァイスくん。彼が厚い胸板で覆ってくれている、その間に。
『――私はこの姿で探すとしましょう。少々変身に手間取りますが、魚よりは賢いですからねぇ』
ザッパァァァァァァァンッと、側の海面より、激しい音と共に水しぶきが立った。
なんとハロルド先輩は、おっきなクジラになっていたのだ!
どひぇえええ~~~~~!?
「さ、三十メートルくらいはあるんだけど!? そんな姿にもなれるの!?」
『なれるホエ。……おっと、クジラ化の影響が出てしまった』
クジラ化するとそんな語尾になるの!?
『では私は悠々と、海中を探し回ることにしましょう。さぁて、レイテ様はどう探しますかねーーー? ヴァイス様が増えようがたった二人。しかも地上しか探せない身で』
「安心しろ」
と、そこで。ヴァイスくんが不敵に笑ってみせた。
えっ?
「レイテ嬢を舐めるなよ元『地獄狼』。悪の女王たる彼女には、俺にも負けないくらいの、素晴らしき配下たちがいるのだ――!」
瞬間、今度は三つの光が浜辺に奔った――!
『ッ!? これはまた、面白くしてくれるホエ……!』
クジラ先輩が身を震わせる中、爆光放つ灰色。紅。それから新緑。
同時にザッと、三人の男たちが砂地を踏む音が響いて……!
「レイテ嬢よ。彼らも、宝探しに混ぜてくれるか?」
「っ、アシュレイ! ケーネ! ドクター・ラインハート!」
――かつて共に戦った、ハンガリア領の英傑。
わたしの悪の戦士たちが、水着姿で現れたのだった……!
「アシュレイは表社会に出てきてもいいんだ!?!?!?」
「そこに驚くんですかお嬢様ッッッ!?」




