バガー男爵side
昨夜第一皇子のカールハインツ殿下の側近としてコルネリウス家の長男ギルベルトが選ばれたと通達があった
コルネリウス家のギルベルトはワシも噂は聞いたことがある
魔界始まっての天才、いや天災だ!等と言われている奴だ
どうせデマだろうが
コルネリウス家には過去に汚職事件で散々世話になった
良い機会だからあの目障りなテオフィルスの代わりにその息子ギルベルトを殺してやろうと思い通達があった直後に暗殺者を二人送り込んだ
その夜は次の日が楽しみで良く寝れたわい
しかし昼になっても送り込んだ二人は帰ってこない
何故だ、失敗したのか?
いや、その場合はワシが既に捕らえられているはずだ
「何故連絡が来ない
高い金を払って二人も雇ったと言うのに……」
イライラとしながら王宮の人通りが滅多にない離れの通路でワシは連絡を待っていた
「ば、バガー男爵やはり……
やはり、あの噂は本当だったのではありませんか?」
するとワシの従者である者が若干怯えながら血迷ったことを言い出した
馬鹿なこと言うなと怒鳴ろうとしたところに後ろから声をかけられた
「こんにちはバガー男爵
こうして直にお会いするのは初めてですね」
その声を聞いた途端身体中の毛穴が一斉に開いた
まるで心臓を直接握られたような気分だ
振り向けば自分の膝丈程しかない身長の幼児がいた
「双黒……」
双黒、そしてこの流暢に言葉を巧みに操る幼児
コルネリウス家のギルベルト
ワシが呆然としていると従者が思わずという感じで声をかけた
「あ、あのその血は……」
そう、血ミドロだったのである
「ああこれですか?
これは家で殺った時についたんですよ
おもいのほか飛び散りましてね
このように汚れてしまったのですよ」
イカれているこの幼児
昨夜送られてきた暗殺者を自らの手で殺しなおかつその首謀者の前に血ミドロの状態で現れる
何故笑顔なんだ
何故笑っていられる!
「あの、お怪我は……」
「無いですよ
まぁお遊びみたいなものですし……
それよりも自分達の心配をしたらかがですか男爵?」
本当に何なのだこの幼児は!!
ワシはこんな得体の知れないモノを殺そうとしていたのか
オソロシイオソロシイオソロシイオソロシイオソロシイ
「「ヒッ」」
微笑みられた瞬間おもわず逃げ出してしまった
あれが闇の世界の者が畏怖と尊敬の意を込めて呼ぶ殺戮人形