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勇者と真亡者の一つの約束  作者: 夜月 ノウ。
第0章 7年後の友達へ
9/12

9.約束VS服従

何気ない思い出だ…


「レインさあ。二つ名がもらえるとしたらなににする?」

シオンが急に言い出した。


「急に何…」

僕は当たり前の返しをした。


「いつかもらえるかもじゃん!」

シオンは自信満々に言った。


本当に彼女は心配なんてないんだな…


「僕はそういうのは興味がないから…」

「いらないかな…」

僕はそう答えた。


「なら私が決める!」

シオンが僕を無視して言った。


「"雷雨の弓士"…」

シオンは呟いた。


「なんか、強そうだね?」

僕はシオンに聞いた。


僕は強くない…

シオンよりも、弱い。

そんな僕に、二つ名が与えられる訳がないのに…

そう思っていると、


「強いよ!」

「レインは私にとって、勇者だから!」

シオンは元気に答えた。


何気ない思い出だ…

僕たちがまだ、2人でいたときの…

何の変哲もない、


日常だ。

シオンとの思い出は、

全部が新鮮で、

全部が楽しくて、

全部が忘れられなかった。


そんな彼女と対峙するなんて、

誰が考えられただろうか…


少なくとも僕は、思ってもいなかった。






キランと音がした。

転移魔法だ。


「…みんな!」

僕が声を出したときには、もう誰もいなかった。


さっきまで魔王領の端にいたはずなのに、

僕も、知らない場所にいた。


《どこだここ?》

今の状況に驚いていると、足音が聞こえた。


「…ようこそ。"勇者"レイン。」

誰かの声がした。


聞き覚えのある、いつも元気で、うるさかった"彼女の声"が…


僕が振り返ると、そこには立っているはずのない"彼女"が立っていた…


「…シオン?」

思わず声に出た。


シオンだった。

紛れもないその声、あの日から変わらないその風格。


「なぜ私の名を知っている…」


「…愚族が。」


シオンなのか?

シオンはそんなことを言うはずがない…

シオンが…


「魔王軍新幹部、シオン・フォアバー。」


「あなた達の言う、暴者(あばれもの)だ。」


僕は絶望した。

嗚咽が漏れる。

自分にしか聞こえないほどの声量の…




僕はあの時の戦いから、何を学んだんだ?

シオンが死んだと思って、

前を向くと決めて、

シオンがいなくても約束を果たすと決めて、


それなのに、今はどうだ?


《何も変わっていない…!》


今目の前にいるシオンも、

きっとシオンじゃない。

これは、シオンじゃない…!


《なら僕は、全力で…》


一瞬、空気が止まった。


《この"まがいもの(シオン)"を、倒すんだ…!》




「…愚族の勇者、心の整理はついたか?」

シオンが、その暴者が聞いてきた。


「その声で…汚い言葉を使うな…!」

僕は憤慨して言った。


「僕は、"箙執(ふしつ)の勇者"レイン…」

「本当の勇者が生かした…レイン・アンリミトだ!」


僕は自分の名を叫び、弓矢を構える。


「やはり、愚族だな…」

シオンが言った。


矢与魔法(しよまほう)(ほむら)の矢。」


矢が赤く染まる…

放たれた矢は、シオンめがけて飛んでいく。


シオンがそれを避ける。


(ほむら)火の矢(ファイアアロー)と何が違う?」

シオンが聞いてきた。


「最後まで見てから聞いてご覧よ…」

僕が答えると、シオンは後方に振り返る。


瞬間、

矢がシオンの右側腹部を掠る。


「…何?」

シオンが驚いていた。


「僕の矢与魔法は、魔力を込めて追尾することができる…」

「君にも、見せたはずなのに…」

僕は独り言のように呟いた。


これは、僕の主創(オリジナル)魔法の基本…

何度も、見せたものだ…


それも、こいつは知らない。


「…人間からの火傷で、私たち魔族は死なない。」

シオンはそう言い、大剣を振り上げた。


魔族であるこいつには、効かないのか…

だけど、それは戦わない理由にはならない…!


そして、風を切る音とともに、

シオンが眼前まで迫ってきた。


僕が避けると、

シオンは僕ではなく、小さな岩を攻撃した。


そして、砕けて飛び散った岩の破片を、

大剣でうち飛ばす。


《危ない…!》


僕は跳んで避ける。


このめちゃくちゃな攻撃…

間違いなくシオンのものだ…


僕がそう考えていると、

シオンの一撃が、空中にいる僕を落とした。


《今は、戦いに集中しろ…!》


せめて勝つまでは、

戦いのことだけを考えろ…!


僕は立ち上がって、

シオンと距離をとった。


そして、再び弓矢を構える。


矢与魔法(しよまほう)(こおり)の矢。」


矢が青く染まる…

放たれた矢は、シオンの大剣を氷らせる。


さらに攻める…


矢与魔法(しよまほう)(あらし)の矢。」


矢が白く染まる…

放たれた矢は、シオンの体を吹き飛ばする。


シオンは、地面に膝を着いた。


雪の矢(フリーズアロー)風の矢(ウィンドアロー)…」

「あなた、他属性使い…?」

シオンが聞いた。


「…どちらかと言えば、違うかな。」

「基本を大切にしているだけさ…」

僕は答えた。


基本魔法の応用であるこの魔法は、僕が最初に創った主創(オリジナル)魔法だ。


「僕の属性は雷…」

「"雷雨の弓士"だからね。」

僕は小さな声で呟いた。


君が決めたんだ。

君が、強いと言ったんだ。

だから、

僕は、

強くなって、

君を、助ける!


「君は、誰だ?」

僕が聞いた。


こいつはシオンではない。

ならば、何なのだ?


「最初にも言ったが、私は新幹部シオン・フォアバーだ。他の何者でもない。」

シオンは答えた。


「なら、何で僕の名前を知っていた。」

僕はさらに聞いた。


「それは、"勇者"の名前くらい、知っていてもおかしくは…」

シオンが取り乱して言った。


「君は新幹部、7年前の魔王討伐ではいなかったはずだ…」

僕は考えを話し始めた。


「それ以来、僕たちは一度も魔王領に来ていない。つまり知ることはできない。」


シオンが反論しようとしたが、それをおさえて僕は続けた。


「魔王は僕と同じような気がした。考え方も、戦い方も…」

「君の強くするなら、そんな情報は教えない。」

僕は堂々と言った。


本当に強くさせたいなら、

自分で弱点を見つけさせて、

戦いの中で成長させるはずだ。


僕が言い切ると、シオンが剣を持ち、立ち上がった。


「黙れ!」

シオンはひどく憤慨していた。


「私はあなたを知らない…はずだ…!」

混乱もしていて、戦いになりそうになかった。


だけど、


「重剣魔法…」

シオンは魔法を使おうとした。


巌撃(がんげき)!」

シオンの最強の一撃が振り下ろされる。


僕はそれを、ギリギリで避ける…


シオンは全てを人並み以上の力でできるが、

その全ては基本で終わってしまう。


主創(オリジナル)魔法も創らず、

基本魔法だけで全ての冒険者の"基盤"になった。


だから、昔の戦い方だって、

忘れることの方が難しい。


大剣は一撃が重いけど、

外したら意味がないし隙もできる。

紛れもない彼女の言葉だ。


「矢与魔法、霹靂光矢(へきれきこうし)。」


霹靂の光がシオンに当たり、感電する…


もし次の一撃をミスれば、

きっとシオンは本当に死んでしまう…


だけど、

今はそんなこと、心配している余裕はない!


「矢与魔法、停霆(ていてい)!」


感電し、全身に広がった電気を一時的に停め、

敵の体の機能を止める魔法。


僕の最強の一手だ。


《本当は…倒したくない…》


「だから、お願いだよ。シオン。」

僕が呟くと、涙で視界がボヤける。


《思い出してくれよ…》


こんなときでも、

そんな淡い期待を寄せていると、


「レイン…」

シオンが声を出した。


「た、だいま…!」

あの時と同じ口調で、


あの時と同じ調子で、


シオンはそう言った。


「…遅いよ。」

僕は小さく返した。


それだけで良かった。

僕と、彼女の間では…


「本当にシオン…なの?」

僕は聞いた。


「うん。」

シオンは小さく答えた。


「どうして、こうなったの…?」

僕は続けて聞いた。


「これは、魔王の魔法。」

シオンはまた、小さく答えた。


シオンは、僕たちを帰した後も、

魔王と戦っていた…

そして激闘の末、

その強さに興味を持った魔王が、

シオンを魔族にした…


「魔王を倒す。」

「もう一度、約束しよう。」

僕は小さな声で、

だけど、しっかり聞こえる声で、そう言った。


「…うん。」

シオンが答えた。


「今回は、魔族だけど…」

シオンが苦笑しながら言った。


「魔王軍新幹部だから、"新暴者(しんぼうじゃ)"…かな?」

僕が和らげるように言った。


シオンは驚いていた。

僕がそんなことを言うとは思わなかったのだろう。


「何よ、それ。」

そして、シオンは小さく笑っていた。


今度こそ、約束を守るために、

今度こそ、彼女を守るために、


僕は、

僕たちは、歩き出す。


魔王城に向けて…




これは、

僕と彼女の一つの約束


勇者と新暴者(しんぼうじゃ)の一つの約束










いよいよ始まる。

"僕"と"君たち"の最後の戦いが…

二つ名集

初期

レイン 雷雨の弓士

シオン 基盤の賢者

ザウン 炎の双剣士

ロアン 響鳴の大魔導士

クエン 絶壁の守護者


現在

レイン 箙執の勇者

シオン ーーーーー

ザウン 炎瀧の双剣士

ロアン 音殺の大魔導士

クエン 誓皆の守護者

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