041 ロア、コールドスリープ装置に入る
【第1特務艦隊 旗艦あまつかぜ 戦闘指揮所】
5番艦『はたかぜ』への乗員移乗を見守っていると『あまつかぜ』が聞いてくる。「ロア司令、この艦隊の加速力なら敵艦隊を振り切る事も可能ですが?」
「振り切った後、敵艦隊どう動くのか予測がつかない。 そのまま引き上げてくれれば良いが、逆に人類の勢力圏に向かうかもしれない。 出来るだけ遠くへ誘導する。」
「了解しました。 ・・・移乗が完了しました。」
「よし、離脱部隊は最大加速で先行、敵のセンサー圏外に出た後、大きく迂回して地球に帰還せよ。」
「 ・・・了解。 ご武運を」
モニター越しに離れていく艦を見ながら、「敵の目を此方に惹き付ける。 3隻ずつ纏まってシールドを重ね、大型レーザー砲の射程ギリギリまで敵に近づけ。 搭載している通常機雷、ステルス機雷、全部放出せよ。」
少しして、敵からの攻撃が届きだす。 長射程の兵器を搭載している艦艇が元々少ないとはいえ、数万隻もの数が集まれば、それなりの攻撃が届く。
敵長距離レーザーがシールドに着弾し輝く様をモニター越しに見ながら、シールドの出力計を確認し、ロアは思う。 この位なら余裕で耐えれるな。 シールドを重ねるのはゲームでは定番だったし、実戦でも有効だな・・・ 後は、こちらからの攻撃が通用するかだが・・・ ゲームの知識でコアの場所は分かっているから、シールドと装甲を撃ち抜けれれば案外楽勝かもな・・・
「『あまつかぜ』、敵艦隊が機雷原に入ったら射撃を行う。 狙撃用大型レーザー砲搭載艦3隻が纏まっているグループは、敵の大型と中型艦を狙え、大型レーザー砲搭載艦2隻、通常戦艦1隻のグループは小型艦を狙う。 それぞれグループごとに1隻に砲火を集中し、シールドと装甲を撃ち抜くタイミングを合わせる様に。 長射程兵器搭載艦を優先的に狙え、各敵艦の着弾ポイントは(ゲーム知識から各艦のコアの位置を示す)・・・ とする。」
「了解。 敵艦隊、機雷原に入りました。 殆どの機雷が破壊されていますが、ステルス機雷が若干の損害を敵に与えています。」
「よし、先に指示した通り射撃を開始せよ。」
1週間が過ぎ、ロアは未だに敵艦隊を誘引していた。
「『あまつかぜ』、現状報告を頼む。」
「了解。 第1特務艦隊現在数9隻、人員機材異常なし。 燃料は、シールドとレーザーの常時使用により、ジェネレーターを全開稼働させているため、リアクターの燃料消費が上がっていますが、後1年は持つと思われます。 食料は残り95日分です。」
「とりあえず問題無いな・・・ 敵艦隊の状況は?」
「現時刻までに、敵艦1476隻を撃破しました。 敵艦は、索敵範囲外にもいるため正確な数は判りません。 が、光学観測の結果、現在約5万~6万隻ほどが我が方を追跡していると思われます。 なお、敵領有宙域外を航行中のためか、敵艦に増加の兆しはありません。」
「そうか・・・ 敵艦の数が増えないのは良いニュースだが、このペースでは撃破するのに数か月かかるな・・・ 食料を節約するか。 『あまつかぜ』、私はコールドスリープ装置に入る。 後を任せる。 状況に変化が有れば起こしてくれ。」
「了解しました。 現任務を続行します。」
【地球軌道上 ゲート付近】
B-17宙域を経由して、第1特務艦隊の離脱艦(第101戦隊の半分と試作救難艦)がゲートアウトして来た。
前回の騒ぎから、王国海軍の宇宙船には関わるなという不文律が、管制ステーションを始めとする国際協力機構全体に広がっており。 何の誰何も受けることなく大気圏に降下して行く。
【コスカ海軍基地】
皆が見守る中、かぜクラス3隻と救難艦3隻が着陸してくる。
着陸後、作業艇が救難艦に取り付き、遺体やコールドスリープポットを運び出す中、暗い顔をした乗員が下船してくる。
中でも5番艦『はたかぜ』から降りて来た6名は、特に酷い顔色をしていた。
出迎えに来ていた人々も沈んでいる中、幕僚長が出てきて一言、「良く戻った。」
膝を着き泣き出す乗員を 周りの人々が抱えながら医務室に連れて行く(念の為の身体検査)。 それを見送りながら、
お館様(ロイド三神公爵)に何とお伝えすれば・・・ 「若様・・・」 幕僚長が思わず呟く。




