014 海軍の大幅人員削減
【コスカ海軍基地 王国海軍、公爵領海軍合同司令部 作戦指揮室】
ロアは、朝早くから海軍の幕僚達を集めていた。
「若様、今回の招集何事でしょうか?」 幕僚長が皆を代表して聞いてくる。
「皆にもある程度の情報が入ってきている事と思うが、敵の艦隊が現れた。 3日・・・ 否、もう2日後か、に戦端が開かれる予定だ。
陛下から、試作救難艦を出せと言われて、徹夜で準備する羽目になって眠たいよ。
さて、ここからが本題だが、皆に集まってもらったのは、特定秘匿情報が含まれる内容を共有するためだ。 情報保全の観点からメールなどの非暗号回線が使えないからな。 今回は内容が内容なので、メモなども残さない様にしてくれ。」 事の重要性を認識した皆の目つきが鋭くなる。
「昨日、王宮であった話を纏めると、
1つ 今後、敵艦隊の出現頻度と戦力の増加が確実視された。
2つ このままでは、我々人類が勝ち残る事が非常に困難である。
3つ 根本的な戦略の見直しが必要である。
4つ 戦略転換に必要な時間を稼ぐ(今のところ遅滞戦闘の実施を検討)
5つ 今までとは、桁違いの戦力の増強が必要である。
このようになる。」
ロアが皆を見渡し、「この話を踏まえた上で、海軍の大幅人員削減を実施したいと考えている。 合同司令部を立ち上げた時の様な形だけの物ではなく、本格的なものをだ。
出来れば人員の9割を宇宙軍に移したいと考えている。 無理を承知で実施する為の案を募りたい。」
「分かりました。 若様がそこまで言うのです。 全力で取り組みましょう。」 幕僚長が答え、幕僚達から色々な案が上がる。
幕僚A:「現役の海軍艦艇を退役させて、その分の乗員を宇宙軍に転属させるのはどうでしょうか?」
幕僚B:「そうですね、艦艇群の数が減れば、それらを支援している補給や整備といった後方支援部隊の人員も減られせますし、良いのではないでしょうか?」
幕僚C:「しかし、艦艇の削減は、そのまま国防力の低下に繋がる。 安易に数を減らせば良いと言うものでもないだろう。」
幕僚長:「一応、各国とは協力体制を取っている。 多少の艦艇の退役は問題無いだろうが、その程度ではたいした人数にはならないだろう。」
ロア :「それに1つ懸念がある。 もし人類が今以上の苦境に立った時、敵に寝返って我が国を攻撃する国が現れないか? ということだ。」
幕僚A:「流石にそれはないのではないでしょうか? 我々は、敵の名前も知らなければ、コンタクトに成功したこともありません。 それどころか、生命体を確認出来たことすらありません。 100年近く戦い続けているが、無人艦しか確認出来ていない。 内通するのは無理でしょう。」
ロア :「人間、追い詰められると、まともな思考が出来なくなるものだ。 敵と連絡を取り合う必要は無い、敵の味方をすれば自分達だけは敵に攻撃されないはずだ。 と言う願望を真実だと思い込んでしまい、そういう人間が集まって集団ヒステリーを起こし暴走するのだ。」
幕僚長:「しかし、戦力を保持したままで人員を減らすとなると・・・ すぐには無理ですな。」
ロア :「先ずは、王国海軍艦艇の自動化改装工事からだな、そうすれば少ない人数で艦が動かせる。 我々三神公爵領海軍の艦は既に自動化が済んでいるから、艦の大きさにかかわらず乗員は一律21名となっているが、王国海軍の艦だと小型艦でも100名以上、大型艦だと1000名近くの乗員がいるからな。 自動化が進めば、かなりの余剰人員が出そうだ。
さらに、公爵領海軍の乗員が21名なのは、長期間の行動時に三交代で無理なく任務を行うためで、やろうと思えば1名でも艦を動かせるからな・・・
長期間の行動する艦を一部の艦だけに限定してやれば、残りの艦は1直3名の3直制で乗員数9名で行けるか・・・ 如何かな? 幕僚長」
幕僚長:「やれそうですな。 自動化によるコアや指揮システムの換装ついでに、OSの違いによるデータリンクの遅延問題も解決出来る。
取り敢えずは若様の案を第1案として、細部を検討させましょう。
第2案以降も我々で考えておきます。 状況も分かりましたので、若様はもうお帰りになってお休みください。 徹夜明けでは、思考も鈍ります。
事が事だけに万全の状態で話し合った方が良いでしょう。」
「しかし・・・ いや、幕僚長の言う通りだな、寝不足で少しハイになっていたようだ。 焦ってもしょうがない事だな・・・ 後の話し合いは任せる。」 ロアは、午後からの仕事をキャンセルし帰宅した。