012 婚約?
ここのところ雪が凄いですね。
近所の家は除雪機で雪を跳ね飛ばしていますが、私はママさんダンプで頑張っているので雪かきに時間を取られてしまいます。
雪が落ち着くまで、投稿ペースが落ちると思いますが、お許し下さい。
【海運都市コスカ 行政庁舎 応接室】
予想外な試作救難艦の不具合問題に時間を取られたため、行政関係の書類が溜まっていたロアは朝から気合いを入れ仕事をしていたが、今まで関係の無かった他派閥の子爵が挨拶に来たと聞いて、せっかく調子が出てきたところなのに間の悪い・・・ と思いながら応接室に向かった。
「お待たせして申し訳ありませんね、田辺子爵。」 部屋に入りつつ声を掛ける。
「いえいえとんでもございません。 ロア様。」 互いに視線で相手の様子を探りつつも話が続く。
・・・ 「私はまだ公爵家を継いだわけではないので、様呼びはちょっと・・・」 ソファーに腰掛けながら言うと、「では、ロア男爵とお呼びしても?」
「ええ、それでお願いします。 ・・・ところで、本日はどの様な御用件で此方に?」
・・・ 「少々遅くなってしまいましたが、お祝いの品をお持ちしました。 男爵への叙任、大将への昇任、海軍長官への着任、海運都市コスカの代官への赴任、おめでとうございます。」 そう言って田辺子爵が目録を渡してくる。
「これは・・・ 素晴らしい物をありがとうございます。」 ロアは、ざっと目録に目を通しながらも、礼儀だから受け取らなければならないが、返礼品を考えるのが面倒だなと思っていると。
「それに・・・ 近々、アリスティア様とご婚約なされるとか・・・ おめでとうございます。」
「!?」 ヤバい・・・ こないだの冗談話を誰かに聞かれたな・・・ しかも内容が冗談でなくなっている?
「子爵が、何処でその様な話を聞いたか知りませんが・・・ 婚約話なんてありませんよ。 私には初耳です。」 誤魔化さなければと考えながら返事したせいで、若干目が泳いでしまう。
「なるほど、なるほど・・・ 正式な婚約発表をするまでは秘密であると・・・ 確かに内容が内容ですからな、如何やら私の先走り過ぎの様ですな。」 目が泳いだせいで、子爵に更なる誤解を与える。
「!?」 ヤバい、ヤバい・・・ 余計に話がこじれた・・・
「いやいや、本当に婚約の話は無いのです。」
「はい、はい、婚約話は無いと・・・ 大丈夫です。 全て分かっておりますとも・・・」 否定すればするほど誤解を深めてしまい、子爵は完全に婚約話が本当だと信じてしまったようだ。 ロアは、この場で誤解をとくのを半ば諦めながらも、気になっている事を聞いた。
「参考までに聞きたいのですが・・・ 婚約の噂話がどの程度広まっているか、分かりますか?」
「そうですな・・・ あくまでも私見になりますが、ほぼ全ての貴族が知っているかと・・・ 少なくとも当主にあたる者については、知らぬ者は一人もいないかと。」
「そんなに!?」 思わず驚くと、子爵から「もっとも、あくまでも噂話としてで、確信を抱いている者は極少数と思われます。」
「そうですか・・・」 ロアは考える。 子爵はその極少数の1人ということか・・・
今まで三神家は、筆頭貴族とは名ばかりで、落ち目の貴族(表向き、落ち目を演じている。)という事から、周りから距離をとられていたが、王家との仲が良好な私に近づいておいて損はないと考えたか・・・
これは使えるかな。
「田辺子爵にお願いがあるのですが・・・ もしもの話ですが、婚約話が本当だった場合、婚約発表前に騒ぎにでもなって、他国からの妨害などを招くことにでもなったら・・・
先ほど子爵にお話ししたとおり、婚約話などありませんので(ニヤリ)、可能な範囲でかまいませんから、噂話を抑え込むのに協力していただきたい。
そうすれば将来、我ら両家は良い関係を築くことが出来るでしょう。」
「良い関係ですか、分かりました。 私も王国貴族の一員として国に害があるような噂話をそのままにしておけませんな(ニヤリ) 抑え込むのに協力させて頂きます。」
二人は、お互いにニヤリ(ロアは、勘違いを利用して子爵を噂話の抑え込みに利用できるとしてニヤリ。
子爵は、婚約が本物だと信じているので、ここで恩を売っておけば後で美味しい思いが出来ると思ってニヤリ。)としながら、力強く握手を交わした。
子爵が帰って行った後、ロアはララタ副代官に婚約関係の噂話について、継続的に調査するよう指示を出した。