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第三十九話(後編):杖を振ったら死にかけ、雪山の向こうが見えかけた件

高評価やコメント、いつもありがとうございます。


今回は、杖を手にした三人が雪山の森で魔物に追われながらも、知恵と力を駆使して切り抜ける冒険回です。

緊張感あふれる戦闘の中で、少しだけほのぼのした休息や、仲間同士の掛け合いも描いてみました。


手に汗握る戦いと、雪山の冷たい空気、そして仲間との小さな和みの時間――その両方を楽しんでもらえたら嬉しいです。

カリンが防壁を強化する間もなく、杖の形が完全に現れた。


「完成……! さあ、逃げるわよ!」


三人は瞬間的に足を動かす。


魔物が追いかける前に、森の奥を駆け抜ける。


枝や雪を蹴散らし、風が顔を叩く。足元は滑りやすいが、杖の力を手にしたリミバァが的確に前を導いていく。


カリンは炎を跳ねさせ、魔物の視界を一瞬遮る。セレナは杖の魔力を意識し、手をぎゅっと握りしめた。

――追跡する気配はある。


ザクッ――!


背後の雪が弾けた。


「来た!!」


カリンが振り向きざまに炎を放つ。だが、それは“何もない空間”を赤く焼くだけだった。


次の瞬間、セレナのすぐ横を、白い影が音もなくすり抜ける。


「っ……!」


反射的に、杖を握る。


頭で考えるより先に、魔力が流れ込んだ。


――回る。


杖の中で、何かが高速で回転する。


「待ちなさい、セレナ!!」


リミバァの声が飛ぶが、もう止まらない。


セレナは振り返りざまに、魔法を放った。光が、螺旋を描いて炸裂する。


――光が、森を裂いた。


爆ぜた魔力は一点を貫くのではなく、あえて拡散するように弾けた。雪と木々の間に、凄まじい圧だけを残す衝撃波が走る。


白い影が、たまらず距離を取る。それ以上、踏み込んでこない。


「……威嚇の一撃よね」


リミバァが、肩越しに振り返りながら言った。その声には、わずかな笑みが混じっている。


「やるじゃないかい」


カリンは一歩遅れて立ち止まり、目を見開いたまま前方を見つめていた。


「……今の、わざと外したのか?」


返事はない。セレナは杖を握ったまま、小さく息を吐く。心臓はまだ早鐘のように鳴っている。手だって、少し震えている。それでも。


「……うん。たぶん」


少しだけ、照れたように笑った。


ザク、ザク、と三人は再び歩き出す。今度はもう、“余計な足音”はついてこなかった。


三人が歩き出そうとした、その時だった。リミバァが、ふと足を止める。


「……今の、何だったの?」


カリンは、まだ信じきれないように振り返りそうになるのを堪えながら言う。リミバァは、ほんの一瞬だけ森の奥を見て、静かに息を吐いた。


「……あいつは、“白靄の喰らいしろもやのくらいて”だよ」


空気が、わずかに張り詰める。


「戦って勝てる奴なんて、いない」


淡々とした口調だった。けれど、その一言には確信があった。


「だから――戦っちゃいけない相手さ」

カリンが息を呑む。


「……そんなのが、なんでこんな所に……」

リミバァは肩をすくめる。


「本来はね、南の山岳地帯に棲むはずのモノだよ」

わずかに、遠い目をした。


「……四百年も経てば、棲み処の一つや二つ、変わるってことさ」


その言葉は軽い。だが、どこか諦めにも似た重さを含んでいた。セレナは杖を握りしめる。

さっき追い払った“何か”が、本来なら遭遇した時点で終わりの存在だったと知って、背筋が静かに冷える。


しかし、止まることなく歩き進めた。


雪山の森を抜け、どれぐらい歩いただろうか。三人は小さな丘の上で一息ついた。杖を手にしたリミバァが肩の力を抜くと、雪の上に大きく座り込む。


「ふぅ……やっと少し落ち着けるわね」


セレナも膝をつき、手のひらで雪を払う。


「……杖があれば、少しは戦えるかも……」


カリンは指先の炎を遊ばせながら、杖を振ってみる。


「ふふ、次はもっと派手に使えるね。やっぱ、冒険はこうでなくちゃ!」


リミバァは小さくため息をつきつつも、にやりと笑う。


「……派手にって、あんた。次はもっと怖いのよ。覚悟して」


セレナが怪訝そうにカリンを見る。


「……怖いの、もっとって……」


カリンは雪の上で軽く転がり、笑いながら手を振る。


「まぁ、でも今は生き延びたってことでいいじゃん!」


リミバァは杖を肩に担ぎ直し、遠くの吹雪を見やる。


「油断はできないけど……まずは、ここで力をためて、おじいちゃんの家を探すだけ」


セレナは杖を握りしめ、少し笑う。


「……次は、ちゃんと戦えるように頑張る」


カリンが炎で小さな火花を飛ばす。三人は雪山の丘で笑い、小さな火を囲んだ。吹雪はまだ遠くで唸っているけれど、今は肩の力を抜き、生き延びた喜びと次への覚悟を胸に刻む時間だった。


一方その頃。桃太郎たち三人は、南の山岳地帯の村で、のんびりと過ごしていた。

高評価やコメント、いつも本当にありがとうございます。


今回は雪山の森での追跡戦と杖を使った戦闘の緊張感を描きました。

セレナ、カリン、リミバァが力を合わせて困難を切り抜ける様子は、書いていてもワクワクしました。


次回は、少し趣向を変えて――桃太郎班による芋と温泉のほのぼのスローライフ回をお届けします。

戦闘とは違う、のんびりした時間をお楽しみください。


読者の皆さんの応援が、作者の最大の励みです。どうぞお楽しみに!

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