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「セギオラとヒルダ・カールランピがこの星までたどり着いたのは間違いないようだ」

 旗艦で報告を受けたウルマスが艦長に言う。

「ここまで来たことは無駄ではなかったか」

「それを判断するのはまだ先だろう。最低でもセギオラの動きを追わなければならない」

 ウルマスは艦長の言葉を否定した。現時点ではセギオラがこの星まで来たというだけで、ここからアルマセレルに戻ったことは確認できていない。目的はヒルダが連れていたセギオラの行方ではなく、アルマセレルに現れたセギオラがどこから来たのかだ。

「セギオラがこの星に来たのが五年前。今から痕跡をたどれれば良いが」

 副長が独り言のように呟いた。それを知ってかウルマスは何も言わなかった。

 ウルマスはこの先のことを考えていた。

 これから行うこと。

 まずは映像やセンサーによる詳細な解析。その星がどのような物質で構成されているか。大気中の成分も重要だ。その星の人間は生きられても、アルマセレルの人間が生きられるという保証はない。これは上陸するために、言葉や文化よりも重要だった。

 どのような人間、あるいは生物がどのくらい存在して、どのような建造物があるのかなども調査する。これは上陸する地域や移動経路の選定にも利用される。

 そのほかには、空中を行き交う電波なども解析される。それは言葉や文化を理解するための重要な要素となる。もちろん、人類が存在しているからといって、電波が利用されているとは限らない。しかし、地球に電波が存在することは確認できていた。

「問題は解析にかなりの時間がかかることですね」

 解析班の担当者がウルマスに説明する。ウルマスも理解はしている。

「やはり復号化は簡単ではないか」

「はい。電波自体のプロトコルと暗号化。通信内容のプロトコルと暗号化。最低でもこれらを解析する必要がありそうです」

「それで初めて中身のデータを解析できるのか」

「そうです。でも、放送の方なら二段階の解析は必要ないと思います」

「放送?」

 ウルマスは担当者に聞き返した。アルマセレルにも放送はある。

「放送ならそれほど秘匿性は高くないはずです。通信より先に解析が進めば、言葉や文化については理解できるようになるかもしれません。放送の内容次第にはなりますが」

「そうだな」

 担当者の言葉にウルマスは納得した。調査方法の概要は理解しているが、個々の細かい部分までは把握していない。

「アルマセレルでの解析になるので、結果がわかるまでこちらではデータを送り続けるしかありませんが」

 担当者が説明を続ける。

 この辺りはウルマスも理解している。

(アルマセレルでの解析中はまたアレに入るのか)

 ウルマスは生命維持装置を思い浮かべた。今回初めて入ったがなかなか馴染めない。仮死状態になっているので意識はないが、目覚めた時の違和感が苦手だった。

 少し心苦しい気持ちもある。生命維持装置に入る者は限られている。メジスラナクア型三番艦の乗員、他の調査艦の解析班、護衛艦の乗員などは交代で睡眠を取ることになっている。仮死状態を繰り返すことになるので、短時間の生命維持装置の利用は控えられていた。

 しかし、全員が交代で睡眠を取ることは、食料やエネルギーの消費を考えれば避けたい。その結果、待機状態が続くと予想される人員は、生命維持装置に入ることとなっていた。ウルマスは指揮官として交代で睡眠を取ることを主張したが、体力を温存する必要があるとして意見を却下された。何か起こったときには長時間指揮を取らなければならない。生命維持装置は途中で目覚めさせることができるので、急を要する事態への対応は問題ない。目覚めてすぐは多少頭が回らないことがあるかもしれないが、それは睡眠を取った場合も同じだろう。

(目覚めたときには多少でも言葉くらいは解析できていれば良いが)

 予定では、最初に生命維持装置に入るのは一年間だった。一年間で解析できると見込んでいるわけではない。むしろ一年間での解析は不可能と考えられていた。その一年間でその先の対応を見極める予定だ。

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