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ヒルダが茉唯と出会って以降、二人はほとんどの時間を一緒に過ごした。
茉唯は新しい友達を得られたことが嬉しかった。言葉をはじめ色々なことをヒルダに教えようとした。そして、すぐに物事を覚えるヒルダを頼もしく思っていた。
ヒルダは努めて茉唯の期待に応えるようにした。年齢は遥かに若そうだが、その分組みしやすいと思っていた。知識量は少ないと思うが、今のヒルダよりこの星についての知識は持っている。ある程度の知識を得たら、茉唯を足がかりにして別の者から知識を得ても良い。例えば志津だ。
茉唯と一緒に陶芸を教わったりもしているので、志津より宗和と接する時間の方が長い。しかし、知識を得るには宗和より志津の方が相応しく感じていた。
(言葉は何とかなるかもしれないが情報はどうするか……)
ヒルダの心配はこの星での情報収集の手段だ。宗和の家にはスマートフォンはもちろん、タブレット端末やコンピューターもない。茉唯もスマートフォンは持っていない。あるのは固定電話だけだ。ヒルダも情報端末がないだろうということには気付いていた。情報端末については何らかの方法で入手する必要がある。
(情報端末の場所と使い方を知る必要があるな)
茉唯が知っているかもしれないが、まだそれを伝える言葉がわからない。
ヒルダはテレビを点けた。何かヒントが得られるかもしれない。
チャンネルを変えていると、スマートフォンを使用している姿が映った。
ヒルダは画面を指差して茉唯を見た。
「どうしたの?」
茉唯が不思議そうにヒルダを見る。ヒルダはテレビに近づいて、スマートフォンを指差した。
「ああ、スマホ……じゃない、スマートフォン」
ヒルダとの会話で、茉唯はできるだけ正確に話そうとしている。
「スマートフォン?」
「そう。どうしたの?」
茉唯に問われて、ヒルダは茉唯を指差した。
「……あたし……あ、あたしは持っていない」
言いながら茉唯は両手の人差し指でバツを作る。
「モッテイナイ?」
バツが否定を意味することをヒルダは理解できていた。
「うん。ごめんね」
「ソウワサン、シヅサン」
二人の名前も理解できているが訊き方がわからない。
「ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんも持っていない」
茉唯は二回両手の人差し指でバツを作った。
(ここにはないか……)
ヒルダは少し落胆したが表情には出さない。ヒルダの表情が曇ると茉唯は哀しげな表情をする。それを見たくなかった。
茉唯は少し不思議に思っていた。ヒルダがなぜスマートフォンに興味を持ったのか。
(何か思い出したのかな?)
スマートフォンがあれば翻訳ができる。もしかしたら会話できるかもと茉唯は思った。スマートフォンを持っていないことを悔やんだ。しかし、それは仕方がないことだ。茉唯はまだ小学校一年生だ。スマートフォンを持っている方が珍しい。
茉唯が考え込んでいるので、ヒルダはじっと茉唯を見つめた。
「あ、ごめんね。何でもないよ」
茉唯が笑顔になった。




