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内政チート!

 人類皆兄弟令の交付に伴い、暫くは違反者への対応に追われていた、私たち一同であったけど、一月もして大分落ち着いて来ると、私は領地改革の第二弾を行うことにした。

 時は春麗らかで桜が咲き始める頃、そう農民の皆さんが待ち望んだ、田んぼの種まきの季節だ。


「塩水選と正条植を実行したいと思います」


 正条植で苗床を作るのは、寒冷地の越後であるため温床折衷苗代は油紙の用意など資金も必要でとりあえずは育苗はせずに一定間隔に種を直播することで我慢する。

 それでも従来よりは収穫に大分影響が出るだろう。


「はて? 聞いたことのない言葉ですが、それは如何なるものですかな?」


「塩水選は塩を溶かした水の桶の中に種籾を入れて沈んだままの物を選んで田に撒く方法で、正条植は田に撒く稲の種をある程度の間隔をあけて規則正しく撒く方法です」


 宇佐美殿の疑問に簡潔に答える。


「それにはどのような意味があるのですか?」


「塩水選で浮かんできた種籾は中身がスカスカな物が多く、撒いても芽が出なかったり発育不良を起こすから予め身の詰まった種籾を巻くことで収量が増すのです。正条植は発育した稲同士が土の養分を奪い合わないようにして発育を促せる他、日光の当たり具合や風通しのよさ、雑草や害虫の除去がやりやすくするための工夫ですね」


「その様な手段があるのですね。景虎様は何処でその様な知識をお知りになられましたのです?」


 段蔵が分かってる癖に態と効いてくる。

 そう今回の評定には刑期を終えた段蔵が私の小姓として参加している。

 皆が不満そうにしていたが私が熱烈にプッシュして強引に納得させた。

 忍者である彼女を傍に置いておくのは何かと都合がいい。お手紙の迅速な配達とか。

 まあ、本心として正体を互いに知る相手が傍にいるのは安心するからでもある。


「これは、吉祥天様からのお告げですよ」


 もちろん、嘘である。いつもの困った時の神頼みだ。


「おお! これで3人目の神仏のご加護ですな!」


 実乃よりさんが童心に帰ったみたいな笑顔を浮かべる。

 宇佐美殿も頬を紅潮させてるところを見るに興奮しているみたいだし、弥太郎さんは・・・うん、正常運転だな。若干誇らしげに見えるけど。


「取り合えず、各村を回って実践いたします。皆、準備を」


 私の号令一過、皆が動き出す。

 馬や盥、塩の準備などが必要だ。


「段蔵、作っておいた田植え定規を持ってきておいて」


「畏まりました姫様」


「その姫呼びはやめてよって言ったよね?」


「はいですが、辞めるとは申しておりません。景虎様が景虎(けいこ)ちゃんであることを忘れてはいけないかと思いますよ?」


「そうは言うけど、私の景虎としての覚悟っていうものもあってね」


「景虎様は今後、偏諱を受けて名を変える可能性がありますから、女の子としての意識を保つためにも姫呼びは絶対ですわ」


「私は偏諱を受けるつもりはないんだけどなぁ・・・」


「そういうわけには行きませんよ、相手は関東管領と時の公方様です。政治的な意味合いも含めて断るのは無礼であり、下策です」


「そうかぁ・・・高校生の私には政治の話なんて分からないから段蔵がそこまで言うのならわかった」


「ありがとうございます。では田植え定規を取ってまいりますわ」


 なんか言いくるめられた気もするけど、まあ、段蔵にならいいかな。

 それからしばらく、待っていると準備が整ったと知らせを受けて、一路私は馬上の人になった。

 因みに段蔵は馬に乗れなかった。

 でも平然と馬の速度に合わせながら息一つ乱していないのは流石である。5つの村を回って説明しないといけないのでそれなりに急いでいたんだけど流石百里駆け持ちである。

 嫉妬してた宇佐美殿や、彼女に調練を施していた弥太郎さんも驚いていた。


「吉祥天様のお告げと言われましても、これまでのやり方を変えるというのは些か恐ろしゅうございます」


 最初の村でこれである。神仏絶対の時代でも根付いた常識を変えるには結果が必要か。


「私の言うとおりにして、収穫が例年を下回った場合、今年の年貢は徴収しません。これは誓紙です。これで何とか指示に従ってはくれませんか?」


「そこまでお殿様が仰せになるのでしたら、儂らに否やはありません」


 では、実際にやって見せようと、先ず盥に塩水を用意してもらう。


「村長さん、種籾を持ってきてもらっても宜しいでしょうか?」


「へえ、それぐらい問題もありませんです」


 それから伍作と呼ばれた農民さんが米俵を一俵担いでやってきた。


「では、これから種籾を実際に塩水に浸し・・・!?」


 米俵に無造作に手を突っ込んで私は思わず閉口してしまう。

『この種籾は冷害に弱い品種です。品種改良をしますか?』

 久しぶりのシステム画面が脳裏に浮かんだ。

 うそぉ・・・

 とりあえず、まあ、はいを選択する。

 精神力が減った感覚があって一瞬、米俵が光った。

 その光景に皆が息を飲むのが伝わってきた。

 でも、私はそれどころじゃない。

『この種籾は病害虫に弱い品種です。品種改良しますか?』

 まさかの2段階方式!?

 ここまでくれば、また、はいを選択。

 また米俵が光った。

『この種籾のコメは味が良くありません。品種改良しますか?』

 驚愕の3段階設定である。

 ええい、もうどうにでもなれ!

 3回目の発光現象。

 私の精神力は969になっていた。一回当たりで10ポイントの消費らしい。


「あの・・・今のは一体・・・?」


 恐る恐る村長さんが代表して声をかけてきた。

 私はワザとらしい咳払いをして彼に向き直る。


「問題ありません。吉祥天様のご加護を与えただけですので」


 その返答に周囲からおおという歓声が上がる。


「では、全ての種籾にお願いできませんか?」


 期待の眼差しを向けられるけど、ゴメン。私の精神力が持たない。


「申し訳ありませんが、私の神通力ではそこまでの量は賄えません。取り合えず、この一俵の種籾だけの田んぼを作り、他の田んぼと収穫を比べてください。おそらくこの田んぼが一番実りは多いと思いますが、他の田んぼも塩水選と正条植を行えば収穫量はあがるとおもわれますので」


 では、遅れましたが塩水選を行いますと言って品種改良した種籾を俵から取り出し盥に入れて軽くかき混ぜる。

 するとしばらくして浮かんでくる種籾と沈んだままの種籾に分かれる。

 偶然か品種改良の結果か随分沈んでいる方が多い気がする。


「この沈んでる方を取り出してよく水洗いして塩分を落として乾くまで干しておきます」


「この浮いてる方はどうするんで?」


「伍作さんでしたか、残念ながら浮いてる種籾は芽が出ないか、出てもか弱いので実りはありません。取っておいて、他の物と混ざったり間違って撒かないように捨ててしまいましょう」


 そして正条植だ。

 こちらは田植え定規を使い等間隔に撒くだけなので気楽にしていると・・・

『この土壌は瘦せています。肥沃度を上げますか?』

 と来ましたよ。

 ええ・・・どうしよう?

 田んぼの大きさは大体1反だろうか?

 消費精神力が知りたいので、使ってみるか・・・

 すると今度は田んぼが光った。

 皆が私を見る目が何か怖い。狂信者を思わせる。


「え~・・・この田んぼの土は痩せていたので、吉祥天様の加護を与えました。そうですね、ここにはさっきの種籾は使わず、従来の種籾を使って比べてみましょうか」


 私の精神力はまた10減っていた。

 結論としては品種改良の方が精神力の消費は大きいとなる。

 こうして、残りの4つの村も回り、私の精神力は799になっていた。

 私の起こした奇跡に帰りは騒がしくなった。

 大体の話の内容は、私を讃えるものと秋の結果が待ち遠しいなどのプラス意見である。心配のしの字も見当たらないのは目の前で俵や田んぼが光ったからだろうか。


「ねぇ、姫様。あの能力って?」


 周囲に聞き取れない声で段蔵が聞いて来た。


「本当の吉祥天の加護じゃないよ。多分、野望シリーズのゲームシステム的影響だと思う」


「そうか・・・」


 それから段蔵は無駄口を叩かなくなった。何か考え込んでるようだ。

 城が近づくころ、段蔵は前を向いたまま、独り言のように話しだした。


「全部の種籾や土壌の改良を姫様が行うのが最善だろうけど、現実的じゃないですね。ここは、品種改良をした種籾と従来の種籾を混ぜて生育し自然な品種改良を長尾家全土に広めましょう」


 そうか。そうすれば時間はかかるけどいずれ全部がいいお米になるかもしれないな。

 しかし、まさかこんな事で内政チートが出来るとは思いもしなかったよ・・・

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