表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末日記  作者:
19/20

介護世紀

2032年。


高齢化は、

もう誰もが知っている問題だった。


ニュースでも、

政治でも、

何十年も言われていた。


だから逆に、

危機感が薄れていた。


「前から言ってるけど、

なんとかなってるし」


多くの人がそう思っていた。



2038年。


地方の病院が、

少しずつ閉まり始める。


医者不足。

看護師不足。

赤字。


特に地方が深刻だった。



救急車を呼んでも、

受け入れ先がない。


搬送まで数時間。


それが普通になる。



2041年。


介護職の人手不足が限界を超える。


待遇改善は行われる。


でも、

人数が足りない。



社会全体が高齢化している。


支える側も、

もう若くない。



2045年。


「老老介護」が当たり前になる。


80代が80代を介護する。


転倒。

認知症。

孤独死。


ニュースでは毎日流れる。


でも件数が多すぎて、

誰も驚かなくなる。



2048年。


団塊世代よりさらに人口の多い層が、

後期高齢者へ突入。


医療費急増。


国家予算の多くが、

維持費になる。


未来への投資が減る。


教育。

研究。

インフラ更新。


全部後回し。



2051年。


若者の間で、

「人生を始められない」

という言葉が流行る。



親の介護。

祖父母の介護。

実家の維持。



結婚できない。

子供を持てない。

転職も難しい。



でも、

誰かを見捨てることもできない。



2054年。


空き家問題が限界へ。


地方都市では、

家の3軒に1軒が空き家。


管理されない家は、

急速に腐る。



崩れた屋根。

雑草。

害獣。



街が、

ゆっくり朽ちていく。



2057年。


インフラ維持不能地域が出始める。



水道管交換ができない。


道路補修が追いつかない。


橋を閉鎖。



自治体そのものが、

維持できない。



2060年。


都市への人口集中がさらに進む。


でも都市も余裕がない。


高齢者だらけ。



若い世代は少ない。


物流。

介護。

建設。

全部人手不足。



2063年。


学校統廃合加速。



子供が少なすぎる。



一方で、

老人ホーム待機は数年単位。



街の風景が変わる。


保育園より、

デイサービス施設の方が多い。



2067年。


「静かな破綻」

という言葉が使われ始める。



大恐慌ではない。

戦争でもない。



ただ。


社会を維持する人数が、

足りなくなっていく。



2070年。


夜。


地方都市。



コンビニは24時間営業をやめている。


バスは1日3本。


病院は予約半年待ち。



駅前商店街は、

シャッターだらけ。



でも。


完全に終わっているわけじゃない。



人々は、

なんとか暮らしている。


助け合いながら。



2074年。


ある高校生が、

進路希望を書けずにいる。



祖母の介護。

父の病気。

母も働き詰め。



先生が言う。


「やりたいこと、

ないのか?」



高校生は、

少し考えて答える。



「遠くに行ってみたいです」



それだけで、

少し泣きそうになる。



2079年。


人口減少は続く。



でも、

人類は滅びない。



ただ。


昔みたいな、

勢いのある社会ではなくなる。



未来へ進むというより。


壊れないよう、

ゆっくり支え続ける時代になる。



誰も悪くない。



みんな、

できる範囲で頑張っていた。



それでも。


社会は、

少しずつ重さに耐えきれなくなっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ