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俺のスマホはこんにゃく  作者: ななほしとろろ
chapter4 試される大地で試される五人
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 住宅街、海山家の近所にある公園。

 小学生たちが遊ぶ中、真剣な表情をしながら踊っている三人の女子高校生がいた。

 三人とも動きやすい格好をしている。


 スマホに繋がれた小型スピーカーからは曲が流れている。

 流れている曲は、道産子アイドル『たら3P(さんぴー)』のミリオンヒットを記録した曲。曲名は『(あに)さキッス』である。

 アップテンポなポップな曲調でありながら、歌詞は兄への禁断の想いを綴った妹目線の儚い気持ち。


 金髪ツインテールの一人が、踊りを止めて曲を止めた。


「だめだめ! さっきからここがズレるわ! もう一回」

「わたくしは完璧だと思いますけれど、ズレているのはあなたたちではなくて?」


 金髪ゆるふわウェーブの一人が反論した。

 にらみ合う金髪二人。


「二人ともケンカはダメだよ。もっかい合わせてみようよぉ」


 仲裁するように背の小さいちんちくりん頭の彼女が間に入った。


 曲が再生されて三人はまた踊り始める。


 三人のダンスはズレている。しかし、個々に見たときそれぞれにしっかりとした個性があり、ダンスも下手ではない。


 曲のサビに入る手前でツインテールが再度曲を止める。

 そして、ゆるふわの方を指さす。 


「もぉ! あんたね。ここのジャンプした後揺れるのやめてくれる? 着地でピタッとしないとカッコ悪いじゃん!」

「仕方がありませんわ。揺れてしまうのですもの。それとも揺れるものがないから妬んでらして?」


「んなぁにぉ!! やんのか令嬢風情!!」


 一触即発の二人。

 ちんちくりんはまた止めに入る。


「ケンカはダメってば!」


 ツインテールの矛先はちんちくりんに向く。


「あんたも着地で揺れてんの! このロリ巨乳が!」

「むぅー! あたしはロリじゃない! ロリじゃない! 高校生になったしお姉さんなの!!」


 ちんちくりんは背が小さいのを馬鹿にされると怒るのだ。さらに『ロリ』は禁句である。


 まとまりのない三人のダンスは日が暮れるまで続けられた。


****


 豊平川の河川敷。

 中央区と白石区を繋ぐ橋の下で踊っている女子高校生がいた。


 すぐ横にはテニスコートや小さめの野球場があり、人は多い。


 彼女は人目が気になって踊りに集中できない。恥ずかしいのだ。

 彼女は自宅で練習することも考えた。しかし、自宅はボロい木造アパートの二階。歩くだけでも音が下に響く家で踊ることなどできなかった。


「恥ずかしがってたらダメだ。うん。頑張らなきゃ」


 彼女は小さく独り言を言って踊りに集中する。


 踊りは正確さがある。しっかりと音にハマり、動きも鋭い。


 彼女のダンスは日が暮れるまで続けられた。


****


 狸小路。時刻は夜の12時を回り、日付も変わっている。


 この時間の狸小路は、昼間とは雰囲気がガラッと変わる。


 昼間は大勢の観光客や地元の学生など、様々な人が様々な目的のために行きかう。

  

 しかし、夜中は店のシャッターは閉められ、開いているのは数店舗の飲み屋程度。

 それでも人は沢山いる。


 路上に座り込み弾き語りをする者。

 酔っぱらって寝転がっている者。

 二次会を求めて集るサラリーマンたち。

 ライブハウスの前に集るバンドマンや客。


 そして、ガラス張りの表面の店舗の前に一人の女子高校生がいた。


 その店は暗く、営業はしていない。

 彼女の目的は、このガラスの表面である。


 鏡程ではないが、姿が反射して映るためダンスの練習にはもってこいなのだ。


 他のガラス面がある店舗にも、彼女のようにそれを求めてきている人が何人もいる。


 彼女は音楽プレーヤーを小型スピーカーに繋ぎ、ダンスを始めた。

 通行人に見せるためではなく、自分の練習のためだ。


 彼女のダンスは熟練されていた。


 いつの間にか彼女の周りにはちらほらと人が集まり始める。

 スマホを持ち動画を取っている者。

 立ち止って見ているカップル。

 曲に合わせて陽気に手を叩くおじさん。

 彼女の荷物の上に投げ銭してく者。


 彼女には人を惹きつけるなにかがあった。

 練習の曲が有名だからではない。

 彼女が可愛いからではない。


 練習に取り組んでいる姿勢。真剣でありながらも絶やさな笑顔。熱。

 そして彼女のオーラ。それらが人を集めたのだ。


 曲が終わると拍手が起きた。


 彼女は気にせずもう一度同じ曲を流してダンスを始める。


 日付的には今日。

 ルナールプロダクションで面接がある。新プロジェクトの面接。


 彼女は東京で地下アイドルをしていた。同じルナールプロダクションの東京支部所属。

 もう合格は確定している。

 それでも練習せずにはいられなかった。頑張り屋という彼女の性格がそうさせている。


 新しくついたマネージャーにはこう言われていた。

 面接に立ち会ってほしい。君と新たに組むユニットのメンバーになる可能性があるから。と。


 新マネージャーには別名があった。ルナールプロダクション内での別名。『白紙の(たけ)』。

 オーデションの際に面接官がつけるチェックシート。このシートを白紙で提出するのだ。

 しかし、白紙ではないこともある。チェックが入った参加者は全て売れっ子となっており、そこからついた名である。

 ルナールプロダクションに関わっている者なら知らない人はいない。


 そんな白紙の丈が新マネージャーなのだ。

 彼女は不安があった。もしかすると自分は外されてしまうのではないか。と。

 合格が決まっていても、なにが起こるか分からない世界。


 彼女の練習は夜中の2時まで続けられた。



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