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時間は少しだけ戻り、小清水湊組。
二人は空組を教室で見送った後、購買に行き昼飯を購入した。
その足で真っすぐD組の教室へ向かう。
教室に着いた二人。中を確認するが陸の姿はない。
聞き込みをしたかった二人にはかえってやりやすい。
湊は一人の女子生徒の元へ向かった。小清水も後ろをついていく。
彼女は湊に気づくと軽く手を上げ笑顔になった。
湊も胸を揺らしながら手を上げた。
「よっ! クボミ今大丈夫? 訊きたいことがあるんだけどさ」
クボミと呼ばれた彼女は久保美羽。
赤縁の眼鏡。黒い髪は三つ編みでまとめられ、右肩からさげられている。
中学から湊とは仲が良く、小清水も何度か話したことがある。
今昼ご飯を食べようとしていたらしく、机の上には弁当箱が広げてある。
「なに、かなー?」
久保はか細い声でゆっくりと声を発した。
湊は耳元に寄り小声で話す。
「あのさ。ここでは話しにくいんだ、私たちの教室にきてもらってもいいかな?」
「うーん。いいよー。今お弁当フタするねー」
久保は弁当の蓋を手に取る。
動きはとても遅い。ゆっくりゆっくりと蓋をし、箸をケースに閉まっていく。
小清水は顔をしかめて頭を掻く。
久保の鈍さが苦手なのだ。
A組の教室に戻り三人は机で昼食を広げる。
久保はゆっくりと弁当箱の蓋を開けながら訊く。
「でー、さっき言ってたのはーなにー?」
湊は辺りを見回しD組の生徒が紛れ込んでいないかを確認した後、机に乗り出して顔を近づける。
「陸ちゃん知ってるでしょ? 海山陸。最近なんか変なことはない?」
久保はゆっくりと首をかしげる。そしてゆっくりと首が戻る。
「変かもー。なんかね――」
久保はゆっくりと気づいたことを話した。
内容は、いつも一匹狼の陸に二人の女子生徒が近づき始めたこと。
その二人はクラスでも評判が悪く、皆近づくの嫌う存在。
よく陸を呼び出したりしてどこかへ行っている。と。
ずっと顔をしかめて聞いていた小清水が疑問を投げる。
「あのさ、海山妹ってクラスでいつも一人なのか? 海山から聞いてる話だと、いつも一緒に登校してる友達がいるって聞いてたけど」
「うーん。他のクラスの人なのかなー? D組では見たことないかもー」
「亜樹。どう思う?」
「んー。ただ他のクラスに友達がいるんじゃない? A組では聞いたことないし、C組かな?」
小清水はあんパンを持ったまま立ち上がる。
「俺ちょっくらC組行ってくるわ」
湊と久保は頷く。
小清水が教室を出ていくと、久保が訊く。
「なにかあったのー?」
「んー。クボミは信用できるし話してもいいかな」
湊はクニツルのことは伏せて内容を話す。
一方C組に着いた小清水。
教室の後ろでたむろしている男子三人組の中に混ざりにいく。
垂れ目を全開にした笑顔で、手を上げる。
「よ!」
馴れ馴れしい小清水の態度に三人は困惑する。
「お前誰だよ?」
「A組の小清水。ちょっと聞きたいことあるんだけどいい?」
そのとき廊下から音が聞こえた。誰かが走っている音である。
小清水は気にせず続ける。
「D組の美少女知ってるか? 金髪ツインテールのさ」
「ああ、知ってる。男子ならみんな知ってるんじゃね?」
「その美少女がさ、このクラスの誰かと友達らしいんだけどお前ら知らない?」
三人は顔を見合わせ首をかしげた。
「いや。知らない。ってか、恐らくうちのクラスにきたこともないぜ?」
「……そうか。ありがとな!」
小清水はその後も何人かに訊いてみたが、皆首を横に振った。そしてB組も同じであった。
教室に戻った小清水に湊が声をかける。
「春! 海山君たちが戻ってきたよ」
空は平然としているが、川谷は肩で息をしている。
席に着く小清水に空は言う。
「加藤先輩と三人組は黒だった」
「そうか。まあそうだろうとは思ってたけどな。俺はB組とC組に聞きに行ってたんだけど、そのことはもう聞いてるか?」
空は頷く。
「BCにはいなかった。それどころか、教室にきたのを見たことすらないって」
「そっか」
空は下を向き眉を下げた。そして胸が締めつけられる。
久保は弁当を食べ終えゆっくりと片付けている。
そんな中、湊は立ち上がり小清水の腕を引く。
「さあ、もうひと仕事行くよ」
「え? なに?」
「クボミが言ってたD組の二人から直接聞くの。そのためにこれ買ってきたんでしょ。クボミも早く片して」
湊はそう言って紙袋を掲げる。
中入っているのは脅しの道具。共犯者を発見できた場合のために用意したもの。大きさは両手に収まるサイズ。
三人はD組に到着する。
久保は教室真ん中辺りに位置する自分の席に座る。
湊は小声で訊く。
「平野と小松ってのはどいつ?」
「後ろのー掃除用具入れのところにいる二人だよー。髪の毛長い方がー平野さん」
平野と小松。小清水が聴きに行っている間に湊が聞いていた名前。
湊は確認すると一目散に向かおうとした。しかし、小清水がそれを止める。
「ちょっと待て。亜樹……本当にやるのか? ちょっと気が引けるんだけど」
「いまさらなに言ってんの? それにあれをくらうのは私なんだから、春が気にすることないじゃん」
「亜樹がやるから気が引けるんだろーが」
「春にやらせるわけにはいかないの! いいから行くよ」
湊は渋る小清水を引き、二人の元へ向かう。
湊から協力要請を出されていた久保も後を追う。




