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『素敵な人と出会えます様に』
七月七日は七夕の日。
織姫と彦星も一年に一日だけ会える嬉しい日。七夕の短冊の願い事は、織姫と彦星が、久しぶりに会えて嬉しー!イエー!ついでに皆の願いも叶えてあげちゃう!って事だと思う。
「七夕かー」
私は友達と七夕飲みをした帰り、商店街を抜けると笹が飾ってあった。
──幼稚園とか小学校の頃は短冊書いたりしたな。
ほろ酔いで皆の書いた短冊を読んでいく。
『世界平和』
『かずくんとずっと一緒にいられますように♡』
『第一希望の高校に受かりたい』
『おかしたくさんほしい』
『プードルください』
『腰痛改善希望』
色々と書いてあって読んでいくのも面白い。横をみると、短冊とペンが置いてあった。(ご自由におかきください)
今日は丁度七夕。明日には片付けられるのかな。じゃあ、まあ、そんなに恥ずかしくないか。
ほろ酔い気分もあって私は願い事を書いたのだ。
『素敵な人に出会えます様に』
※※※※※
次の日。
仕事に行く時に商店街を通ると、丁度七夕飾りが片付けられていた。
──あっという間に片付けられちゃうんだ。でも、いつまでも飾られているよりはいいのかなあ。
バスを待つ間に七夕を片付けているのを眺めていた。
「おはよう。ああ、飾りもう片付けちゃうのね」
私と同じことを思っている人がいたのか、花屋さんが掃除をしながら、飾りを出していた食堂さんのおじさんに声をかけていた。
「おはよう、笹も枯れて来ちゃうしさ。枯れたら燃えやすくなるし。飛ばされて誰か怪我したりしても困るからね」
「そうね。最近、火事も多いし。七夕が終わったら一気に夏休みね」
「暑い日が続くと日替わり考えるのも大変だよ」
「そうねえ。暑いけど、揚げ物食べたい気もするし。そう言えば今日は何の日なの?」
「今日は、ナンパの日だってさ!声掛けてオッケー!七夕の次の日がナンパって面白いよな」
「へー。明日が何の日か楽しみにしとく」
「ああ。明日も調べとくよ」
──へえ、ナンパの日。
楽しそうに話す二人を見ているとバスが来た。私はそのまま仕事に行き、そしてまた何事もなく仕事が終わった。
バスを降りて商店街を歩いていると、もう、うだるような暑さで、溶けそうになった。まだ七月入ったばかりなのに。溶ける。家に帰っても暑いだろう。でも、シャワー浴びたい。いや、それよりも冷えたビールをクーラーの効いた部屋で飲みたい。
──ああ、冷蔵庫にビールあったかな…。
そう思っていると、食堂にビールのマークとかき氷ののぼりが立っているのが見えた。
「かき氷…。ビール…」
どうしよう、今日はこのまま食堂でちょっと飲んで帰るか。そう言う日もアリじゃないかな。自分にご褒美をあげてもいいと思う。うん、ビールのタイムサービスとも書いてあるし。
よし、飲むか。一杯だけ。かき氷も食べてもいい。いや、冷奴か。とにかく、くうぅっと喉を潤したい。
さあ。オアシスに入ろう、そう思ったところで、肩をポンっと叩かれた。
驚いて振り向くと、大きな男の人が、目の前にいた。
「突然、すみません。あの、昨日、コレ、落としてませんか?」
男の人の手にはペンがあった。
「え?私のじゃ…あ、昨夜?昨夜ですか?」
「はい、昨日の夜。ペン、落とされたけど、俺、丁度電話中で。気付いたら、いなくて、渡せなくて」
「ああ。短冊のだ。私のじゃないんです。そこの食堂の短冊の所に置いてあったペンですね。私も使ったから、私が落としたのかな」
「ああ。そうだったんですか。すみません、突然、声をかけて」
「いいえ、食堂の人に渡しておきます。今から丁度行こうと思ったし」
「え。俺も入ろうと思ったんです」
「あ。そうなんですか?」
「はい。こんなに暑いし。ビール、タイムサービス中って書いてあるし」
分かる。分かるよ。
大きな男の人は照れながらもクシャっと笑った。大きくて威圧感あるかと思ったけれど、笑うと優しそうな感じだ。
怖そうな、黒豹みたいだと思ったけど、わんこ系の人なのかな。
「私もそれにつられて。家まで待てないと思ったんです」
「ははは。待て、出来ないですよね。じゃ、良ければ一杯奢りますよ」
「え?」
「いや、勘違いして声掛けちゃったし。せっかくだから。乾杯相手になって下さい」
そう言いながら、男の人は食堂の扉を開け、私を先に入らせると、「らっしゃい、二名?」と聞かれて「はい」と答えて「カウンターで?」と聞かれ「いいですか?」と私に聞いてきたので、私はコクコクと頷いた。
カウンターに二人で座ると、男の人が「本日のお勧めと、豚の生姜焼き。アジフライと、豆腐のサラダ。あとご飯と…。生で?」と注文しながら私に聞くので、私はまた頷いた。
「じゃあ、生二つ。刺身、食べれます?」
「え?はい」
「じゃあ、お勧め盛り合わせ一つ、あとこれ、ペン、この店の物みたいで、昨夜落ちてました」
素早く注文し、お店の人にペンを渡すと私にはおしぼりを渡してくれた。
「あー。店の中、涼しいですね」
「あ、はい」
渡されたおしぼりで手を拭いていると、じっと視線を感じた。
「生、お待ちー」
ビールが持って来られた。コレだ、コレ。これを飲みたかったんだ。
「じゃ、乾杯しましょう。冷たいビールに」
「頂きます」
カチンと合わせて、私はビールをごくっと飲んだ。くうぅ、美味い。喉を冷たいシュワシュワが流れていく。
「ぷはっ」
私が思わず声を上げてしまうと、男の人は笑った。
「ははは、美味そうに飲みますね」
そう言ったが男の人のグラスはもう半分近く減っていた。
「俺、黒川って言います」
「私は、兎沢です」
「うさぎ?」
「珍しいですよね。はい、その兎です」
「へえ…。可愛いですね」
ビールを飲んでいると、黒川さんの目が面白そうにキラリと光った気がした。
「いえ、弱そうですよね。鬼塚とか剣持とかそう言う名前だったらなっておもったりもしましたよ」
「ははは。確かに剣も鬼も強そうだ」
そうして話していると食べ物が運ばれて来た。
「俺、適当に注文したんで、良かったら一緒に食べて下さい」
そうして、黒川さんは私の前に先に適当に取り分けると、自分はもう一杯ビールを注文した。
そこから色々と黒川さんの話を聞いて、一時間程で、食堂を出た。
「ご馳走さまでした」
「いいえ、あー。まだ、暑いですね。気を付けて」
そういって、食堂前で分かれて、私は暑い部屋へと帰ったのだ。




