↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/45

9 英雄様

「新しくカフェがオープンしたの」


と誘われて、今日はメリッサと買い物とカフェでのランチに街までやって来た。街でゆっくり買い物をするのは久し振りだった。


「久し振りだから、何着か服を買おうかな。メリッサ、一緒に見立ててくれる?」

「任せて!」


王都やその周辺では、女性はスカートやワンピースを着ているけど、辺境地ともなれば貴族の令嬢でもパンツスタイルが多い。だから、女性用のズボンの種類が豊富にある。私とメリッサも、普段着は殆どがズボンだ。特に、冬期ともなれば殆どの人が温かいズボンを履いている。


メリッサと一緒に服を見た後は、気になった店に入ったりしながらぶらぶらと歩き回り、お昼よりも少し早めの時間にカフェに向かう事にした。それでも、オープンしたてで人気もあるようで、30分ほどの待ち時間があった。


「そうそう、今、この辺りの領地に英雄様が来てるんだって」

「そうなんだ……」


英雄様──





騎士団所属の英雄が、王太子の結婚式に参列せずに旅をしている──とは考え難いけど、異世界人だから、アリなのかもしれない。


「ま、会うことはないだろうけどね」

「そうだね」


夏の避暑地であっても、これと言った観光スポットは無いから、英雄様がこの領地にやって来る事はないだろう──なんて話しているうちに30分が経ち、順番がやって来て、メリッサと私は店内に入ってランチを堪能した。


ランチの後も少しだけ街を歩き回り、私の家が少し遠い事もあり、早めに帰路に就いた。メリッサと別れた後も馬を走らせて1時間。もう少しで家に到着と言ったところで、家でお留守番をしている筈のアウラが飛んで来た。


「アウラ、どうしたの?」

『ラボに人が来てるの』


“ラボ”と呼んでいるのは、小屋程度の離れで、そこで薬の調合をしていて、ついでにそこで薬を購入しに来る人達の対応もしている。


「お客さん?なら、急いで帰らないとね」

『今、ミツが対応してるけど、その客が──』







「ここの塗り薬がよく効くと聞いて来たんだけど、購入できますか?」

「あ……はい………できます」

「良かった」


と、にっこり微笑んでいるのは、まさかまさかの、英雄ファーガス=マサト=カンベだった。黒色の髪と瞳は、聖女ナナカと同じだ。


「えっと……塗り薬も色々と種類があって。怪我ですか?」

「怪我もあるけど、気が付いたら左手が真っ赤にか(・)ぶ(・)れ(・)てて……」


そう言いながら服の袖を捲ると、肘から手の甲にかけて肌が真っ赤になってかぶれていた。


「これは、食物系のものによる炎症ですね。それなら……」


と、棚から二つの瓶を取り出した。


「こっちの緑色の瓶の塗り薬が、この炎症用の物で、こっちの黄色の瓶の塗り薬は、怪我用の物です。どうしますか?」

「両方ともお願いできる?」

「分かりました。この二つで──」


と、勇者様はお金を払うと直ぐに『ありがとう』と言って店から出て行った。


「リヴィ様、大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫。まさか、英雄様とこんな所で会うなんてね……」


顔立ちが幼くて実際年齢よりも若く見えて、優しい雰囲気のある男性だ。この世界の女性からも人気がある。にも関わらず、女性との噂が一つもない。真面目な性格なんだろう。人気のあった王太子様も結婚したから、英雄様はこれからが大変かも?


ー私には関係ないけどねー


英雄様と会うのはこれが最後だろう──と、

この時の私はそう思っていた。





「リヴィアンナさんが言ってた薬草を見付けたから取って来たよ」

「このお肉、余ったからお裾分けにどうぞ。一人じゃ食べ切れないから、もらってくれると助かる」

「カフェでおまけでもらったんだけど、甘いのは苦手だから、もらってくれる?」


「……ありがとうございます」

「俺の方こそ助かってるよ。ありがとう」


英雄様はこの辺境地に留まっているようで、何故か、ちょくちょく私のラボに来てはお裾分けをくれる。


『何故?』と訊けば、塗り薬の効能が良かったようで、かぶれはすぐに治ったし、古傷も少しずつ痕が薄くなったり、怪我をしてもすぐ治ると言う事で、そのお礼を兼ねてなんだとか。『売ってお金をもらってるから、お礼なんて要りません』と言っても、『俺の気持ちだから、気にしないで』と言われてしまった。


ー必要以上に貴方と関わりたくないんです!ー


なんて……言えないよね…………



「ファーガス様は、いつまでここに滞在予定なんですか?」

「いつまで……というか、ここが気に入ったから、定住しようかなと思ってる」


ー止めて欲しいー


「そう……なんですか?でも、英雄ともなれば、国王様や貴族様が放っておいてくれないのでは?王都と辺境地だと、移動だけでも大変──」

「そういうのは面倒だし、国王とは色々と話はついているんだ」

「そう……なんですね……」

「それに、そろそろ来る頃だと思うんだよね……」

「『来る』?一体誰が──」


「すみません。ここに英雄ファーガスが居ると聞いたんだが──」

「良いタイミングだね」


ー何で!?ー


そこにやって来たのは、バズラス王国の第三王子ラドルファス様だった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。