6 癒やし
「ただいま~」
「メリッサ、おかえりなさい」
メリッサがお土産を持って遊びに来てくれたのは、結婚式が終わってから1週間後だった。
「ナナカ様、本当に綺麗だったわ。王太子様も綺麗だったなぁ。と言っても、あまりにも人が多過ぎて豆粒程度にしか見えなかったけどね」
「それでも綺麗に見えたのね?ふふっ…」
「そうよ!雰囲気で綺麗だって分かったわ」
「で?王都の食べ物は美味しかった?」
「勿論美味しかったわ!」
と、成婚パレードの話ではなく、王都での食べ歩きの話をノンストップで語り出すメリッサ。成婚パレードの観覧よりも、王都の食べ歩きがメインだったに違いない。王都には、辺境地には無い食材がたくさんあるから、辺境地では食べられない物がある。
「美味しい食べ物がいっぱいあり過ぎて、まだまだ食べ切れてないわ。だから、また王都に行く為に貯金しなきゃね。その時はリヴィアンナも一緒に行かない?」
「王都は…遠いし馬車も苦手だから。また、メリッサから話が聞けたら、それで十分だわ」
「えー、本当に駄目?」
「それに、『リヴィアンナと』なんて言ったら、ワイアットさんに恨まれちゃうわ」
「それは……そうね……ふふっ」
メリッサの旦那さんのワイアットさんは、メリッサ大好き人間で、女の私にも、たまに嫉妬したりもする可愛い人だ。見た目は少し強面だけど。恋愛結婚をして今でも愛し合っていて、本当に仲の良い夫婦。お互いが『好き』を隠す事がないから、見ている私が恥ずかしくなる事もある。
「そうそう、ワイアットからいつものを頼まれてるんだけど、在庫はある?」
「あるよ。何個要る?」
「それじゃあ、二つお願い」
「用意するから待ってて」
と、私は地下にある部屋に行って、棚から二つの瓶を取り出して袋に入れる。
ー多めに作っておいて良かったー
「5000バルね」
「はい、ありがとう」
私が手渡したのは塗り薬。手作りだから大量生産する事はできないけど、私は何種類かの塗り薬を生産販売して生計を立てている。基本、材料は裏庭に続く森で収穫しているから、比較的安価で売る事ができて、効能も良いと評判だったりするから、それなりの収入がある。
「これだけ良い物を作ってるのに、こんな所で隠れてひっそり売るだけって勿体無いわね」
「生活に困らない程度に稼げれば良いの」
「本当に欲が無いよね。私だったら──」
「………」
こんな所──
辺境地の最北端で、繁華街から徒歩だと2時間ほどかかり、周りに民家は無く、海と森に面した所だ。メリッサは、徒歩で1時間程の所に住んでいて、私の家に来る時は馬でやって来る。
塗り薬は、口コミ販売程度に留めている。
ー目立つ事はしたくないー
******
メリッサが帰った後、ソファーでゆっくりしているとアウラがパタパタと飛んで私の左足の上に止まる。
ちなみに、アウラは私以外には見えていない。
『今日は大丈夫?』
「今日も大丈夫よ。痛みがあるのは朔の日と前後の数日だけだから」
『良かった』
チチッ─と鳴いた後、アウラはパタパタと飛んで、部屋にある自分の寝床の籠の中へと入って行った。
朔の日と前後数日は、どうしても左足が痛くなる。理由は……分かっているけど、どうすれば良いかは分からない。ただ、それが悪化していないと言う事は、まだ大丈夫だと言う事だ。
「リヴィ様、お茶にしませんか?」
「ミツ……ありがとう」
こうやって、私の気持ちが落ちかけると、ミツが気を遣ってくれるおかげで、私はかなり助けられている。アウラとミツが居なかったら、私は今頃────
ゾクッ─と、あの時の感覚を思い出し、ふるふると頭を振ってからお茶を飲む。
「はぁ……ミツの淹れてくれるお茶は美味しいな……」
「先輩がブレンドしてくれたジャスミン茶ですからね」
ミツには色んな意味での最強の先輩が2人居るらしく、よく話に出て来る。その先輩が、『リヴィアンナ様に』と、このジャスミン茶をブレンドして送って来てくれているらしい。お礼がしたいと思っているけど、その先輩とはなかなか会えないそうで、手紙を書いて送ってもらった。
「ミツ、今日も一緒に寝てくれる?狐で…」
「喜んで」
そう言うと、ミツはすぐに狐の姿になって、ベッドの上に飛び乗った。
私の気持ちが落ち着かない時は、狐姿になったもふもふなミツと一緒に寝ると、自然と気持ちが落ち着いてゆっくり眠れる。
「ミツ、おやすみ」
『おやすみなさい。良い夢を』
ーもふもふは、見た目も抱き心地も最高で癒やされますー




