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消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


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5 アウイナイト

*引き続き、ラドルファス視点になります*





「二つとも有り得ない話だと、王族の私が言っても信じないでしょう?ただ、ジルダ嬢が消えて、一番ショックを受けていたのはナナカです。あの時の憔悴ぶりを見れば、疑う余地もない」

「そうか」


結局、噂はあくまでも噂だ。王家がパーティーの一員だった令嬢を消したところで、得になるどころか非難されるだけだ。

ナナカにしても、ジルダはナナカの世話役で、ナナカはジルダに懐いていたし、2人は本当の姉妹のように仲が良かった。


「だから、叔父上が納得していないとしたら、ジルダ嬢の生死を1年も経たずに判断した事と、今日の結婚式にだと思う」

「そうだな」


“死亡”と判断したのは、あまりにも早過ぎた。この早過ぎる判断には違和感しかない。だから変な噂が出たんだろう。


「まぁ、もともと身分や他人の視線を気にする奴じゃないから、参列していなくても『仕方無い』で済みそうだな」

「父上も母上も笑ってたよ」


オードリックは苦笑した後、結界を解いた。





******



式の後に行われた成婚パレードには、沿道に大勢の民が集まり大賑わいだった。この時ばかりは、貴族平民関係無く同じ場所に立ち並び、王太子と王太子妃に祝福の言葉をなげかけていた。祝福の言葉を受けるセオドリクとナナカは終始笑顔で幸せそうだった。


「あそこに居るのは、ジルダだったのにな」

「ラドルファス様…もう本当に……はぁ……」


盛大なため息を吐くアーニーだが、それ以上何も言ってはこない。アーニーもジルダとは仲が良かったから、口には出さないだけで思うところはあるんだろう。


パレードが終わってからは、各国の参列者達とノーザンディア国王王妃両陛下との懇談の場が設けられ、各々が交流を深め、夜になると王太子と王太子妃のお披露目を兼ねた晩餐会が開かれた。この晩餐会には、パーティーのメンバーも全員が招待されていた。


「ソフィア、久し振りだな」

「ラドルファス……殿下、お久し振りです」


ソフィア=マルゴット


ノーザンディア王国の伯爵令嬢で、魔道士。金髪青眼の美人だ。引く手数多なソフィアだが、本人に結婚の意思は全く無いようで、25歳の今でも婚約者どころか恋人もいない。


「あー……堅苦しいのはやめてくれ。ソフィアに『殿下』なんて呼ばれると気持ち悪い」

「そう言ってもらえると有り難いです。私自身、『殿下』呼びに違和感があるので…ラドルファス様もお元気そうで……」

「ところで……マサトは来ていないのか?」


ファーガス=マサト=カンベ


パーティーの一員だったマサトもまた、異世界からやって来た者だった。マサトはナナカよりも3年程前に異世界から転移して来た一般的人だったが、騎士としての頭角を現し、この世界での名前と騎士爵位を与えられ“英雄”とも呼ばれ、パーティーに加わっていた。


「マサトは、半年前に王都を去りました。理由は……まぁ………」

「あぁ…マサトは生真面目と言うか、理不尽な事を嫌っていたな」


貴族社会は理不尽だらけだ。直球タイプの生真面目なマサトにとって、この結婚も素直に受け入れて祝う事ができなかったんだろう。


「マサトの気持ちも、分からなくはないですけどね」


勿論、この晩餐会に参加している殆どの者は祝福している。ただ、ジルダと共に旅をしたパーティーのメンバーの俺達が、複雑な気持ちなのは仕方無い。



「ラドルファス殿下、ソフィア様、お久し振りです」


俺達の元に挨拶にやって来たのはナナカ。


「ナナカ……妃殿下と呼ぶべきですね?」

「そんな…今迄通りナナカと呼んで下さい」

「王太子妃となったからには無礼になるから、非公式の場でなら」

「そうなんですね」


そう言って寂しそうな顔をするナナカ。

結婚式の時とパレードの時の豪華なドレスではなく、聖女の服を模したシンプルなドレスを着ている。


ーん?ー


そして、ふと気になり目についたのは、ナナカが身に着けているネックレス。


深い青色のアウイナイト。希少価値の高い石である反面脆かったりもするが、王太子妃が身に着ける物としては問題は無いどころか、ナナカが大切にされている事を知らしめるには十分な物だ。ただ、何故青色なのか?

王妃の髪色が青色だが、ノーザンディアの直血の王族で青色を持つ者は居ない。ナナカ自身もだ。普通に考えると、セオドリクとナナカ2人ともが持つ黒色だろう。


ピクッとそこで反応したのは、俺とアーニーだ。


ーこの感(・)じ(・)はー


それは一瞬だった。おそらく、気付いたのはここに居る獣人の俺とアーニーだけだ。人間のソフィアは気付いていない。


「ラドルファス様、帰国するまでにお茶にお誘いしても良いですか?」

「勿論、招待してもらえれば喜んで」

「約束ですよ?ソフィア様も是非!」

「ありがとうございます」


と、ナナカは嬉しそう微笑んだ後、他の来賓者の方へと去って行き、ソフィアと俺も改めて食事を始めた。



「ラドルファス様……」

「アーニーも気付いたか?」

「はい………」

「ふむ……これは、ルベールに連絡を取る必要があるな」

「直ぐに手配します」


チラッとナナカへと視線を向ける。


「………」


ナナカ──と言うより、あのアウイナイトのネックレスから感じたもの。あれは──





ージルダの魔力だったー








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