43 光と溺愛
*ミツ視点*
私のお父様(深影)は黒妖犬で、お母様(菊花)は3尾の妖狐で、双子の弟(晃)は妖犬で、私(光)は妖狐。
お父様の、お母様への溺愛ぶりは凄い──としか言いようがない。本来、狐は犬が天敵だけど、お父様はお母様が可愛すぎて仕方がないらしい。そんな2人を見ているからか、私も好きになった人と結婚したいなと思っていた。
ー溺愛は要らないけどー
「一度、手合わせしてもらえないか?」
と言ってきたのは、バズラスの第三王子ラドルファス様の側近で鷹獣人のアーニーさんだった。
「良いですよ」
アーニーさんとの手合わせは、楽しかった。
妖力がある分、私の方が実力は上だけど、アーニーさんもなかなかのものだった。
ーまぁ、最後には私がやり込めたけどー
それから、何故かアーニーさんが私に声をかけてくるようになり、気が付けば一緒に居る事が当たり前になっていた。
私の方が強いのに、アーニーさんが傍に居ると安心している自分がいる事に気が付くと、後は簡単だった。
「私、アーニーさんの事が好きなんだと思います。あ、好きです」
「え?」
「でも、色々と問題もあるんですよね……お父様とかお父様とかお父様とか……」
「あぁ……深影さんか…………」
そう。私を溺愛するお父様が最大の難所だけど、それ以外にも、異世界、異種族の問題もある──けど、その辺りは相談できる強い味方が居るから、大丈夫だと思っている。
「まぁ、その前に、アーニーさんの気持ちが私にあるかどうか──」
「俺もミツさんが好きなので、それは問題ないです!」
と、満面の笑顔を浮かべるアーニーさんは、可愛いなと思った事は、口には出さなかった。
そうして、リヴィ様に挨拶をしてから、アーニーさんと一緒に私の世界に戻り、お父様とお母様に、私達2人の事を報告しに行った。
「弱い男に光はやらない」
はい、お父様から予想通りの言葉をもらいましま。そのお父様の後ろで、お母様と晃が呆れた顔をしている事に気付いていないのは、お父様とアーニーさんだけ。
それから、アーニーさんがお父様に挑んでは叩きのめされる──を繰り返す日々。
そうして、10日ほど経った頃、ついにお母様がキレた。
「娘の幸せを本当に思っているならやめなさい!」
本気でキレたお母様は初めて見た。娘の私から見ても本当に怖かったけど、何故かお父様は嬉しそに笑っていた。
その上、主様からもお小言を喰らったようで、お父様もアーニーさんとの仲を認めてくれた。アーニーさんはボロボロで、暫くの間、左腕が使い物にならなくなってしまったけど、嬉しそうに笑っていた。
ー本当に、アーニーさんは可愛いー
「深影さん、相変わらずですね」
と言いながらやって来たのは、お母様の大切な者─志乃様だ。
「かなりヤられたな……大丈夫か?」
と、アーニーさんを心配しているのは、志乃様の旦那様のルーファス様。
この2人が、異世界結婚した2人だ。志乃様が召喚された先の世界に居たルーファス様。それから色々あって、最終的にはルーファス様が志乃様の世界に来て結婚する事になった。
「深影さん、娘が好きになった相手を大事にしないと、娘に嫌われますよ?それとも、娘が信じて好きになった相手を信用できないとか?そんなわけ……ないですよね?」
「…………勿論だ」
「…………」
ニッコリ笑う志乃様。“母は強し”と言ったところかな?渋々返事をしたお父様の横で、微妙な顔をしているルーファス様は、お父様の気持ちも分かる──と言ったところだろう。ルーファス様もまた、娘のゆかり様を溺愛しているから。勿論、志乃様も溺愛している。
ー溺愛だらけだー
「志乃様、ありがとうございます」
「お礼なんて要らないわ。光が幸せになってくれたら良いわ」
「あの……これから色々と相談にのってもらっても良いですか?」
「勿論よ!ルーファスさんにも、いつでも相談してくれたら良いよ」
「ありがとうございます」
それから、お父様を慰める為に、お母様の姿を2日ほど見かける事ができなかったけど、その間、志乃様とルーファス様から色んな話を聞く事ができた。
おそらく、アーニーさんと結婚できれば、アーニーさんがこの世界に来る事になるだろうから、ルーファス様の話はありがたかった。
そうして、リヴィ様の元に戻れたのは、2週間後だった。
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ルベール様に丸め込まれて、早々に結婚したリヴィ様。結婚前から溺愛が始まっていたけど、結婚してからは更に酷くなった──のは気のせいじゃない。
“溺愛は紙一重”
お母様と志乃様が口を揃えて言っていた。きっと、リヴィ様もそう思ってるいるはず。そのうち、「菊花さんと話がしてみたい」と言われるかもしれない。
過剰な溺愛は要らないけど、愛し愛され仲の良い夫婦になれれば良いな──と思っている。




