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消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


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39/45

39 賑やかな時間

新生活は、最初こそとんでもない事から始まったけど、それ以降は穏やかな日々だった。


妖力も安定して扱えるようになり、ミツの薬草の知識も問題ないレベルになった。という事で、ミツも自分の世界に帰るかも──と思っていたけど、『まだ、この世界でリヴィ様と一緒に居たいです!』と言われ、一度元の世界に帰ったけど、1ヶ月ほどしてまたこの世界に戻って来た。


「お父様の説得に1ヶ月かかったけど、主様のおかげで、またリヴィ様と一緒に過ごせるようになりました!」


と、笑顔のミツ。そのミツから手渡されたのは、深影さんからの手紙だった。その手紙の内容を簡単に言うと───



“ミツの事はくれぐれも頼む”

“ミツに纏(・)わ(・)り(・)付(・)く(・)虫(・)は追い払え”

“3ヶ月に一度は里帰りさせろ”


「纏わり付く虫……」

「アーニーの事だろうな」

「ですよね……」


ここで新たに生活を始めるにあたって、そうなるだろうな……と思っていた事だった。

バズラス王国の第三王子ラドルファス様とアーニーさんもまた、この辺境地に引き続き滞在する事になり、ほぼ毎日森やラボにやって来るようになった。

特に、アーニーさんはミツに好意を寄せているようで、いつもミツの手伝いやら何やらをしている。ミツはミツで、アーニーさんの気持ちに気付いているのかいないのかは微妙なところだけど、嫌がっていないところをみると、好意的ではあるんだろうと思う。


深影さんの言う事も分かる。自分の目の届かない異世界で、溺愛している娘に男がまとわり付いている──となれば、心配でたまらないんだろう。だからと言って、『分かりました』と、アーニーさんを追い払うわけにもいかない。ミツが嫌がってないから。


「男親としては、色々複雑なんだろうな」

「ですね……」


と、私の横で苦笑しているのはルベールさん。彼もまた、ほぼ毎日私のもとにやって来る。最初は『ルベール様』と呼んでいたけど、今では『ルベールさん』呼びになっている。

このルベールさん。住み始めた頃は『イケメンが居る!』と、色んな女性が言い寄りに来たりしていたけど、数ヶ月も経つ頃には女性が来る事がなくなった。


「どうして?」

「俺が、リヴィアンナ以外の女に興味がないと分かったんだろう」

「ソウデスカ……」


ールベールさんが直球過ぎて困るー


普通は特に何も言ったりはしないのに、たまに不意打ちをするかのように、直球を投げて来たりするから、本当に心臓に悪い。どう対応して良いかも分からない──のに、それが嬉しいと思うようになってしまった。


ー絆されてしまったよねー


『恋なんて、気付いたらしてるもんよ』


なんてメリッサが言ってたけど、本当にその通りだった。



『あら、なんだか楽しそうな事になってるわね』


と、どこからか声がしたのと同時に、フワリと優しい風が吹いた。


「リーゼ」

『ここも賑やかになったわね』


久し振りに姿を現したのは、私と契約を交わしている風の精霊“リーゼ”。少し前までメジロ姿だったアウラだ。

リーゼは、私を護る為に殆どの力を使ってしまい、人の姿を保つ事ができなくなってメジロ(鳥)の姿になっていた。力も弱くなっていて、ジルダと同様、どうなるか分からなかったから、本当の名前は封印してアウラ(仮の名前)で呼んでいたのだ。

そのおかげで、あの妖犬を出し抜く事ができた。

そして、今はすっかり力も取り戻したから、本当の名前で呼べるようになった。

そして、本来、精霊とは契約を交わしたとはいえ、ずっと一緒に居る存在ではない。アウラとしてずっと一緒に居たのは、私を護る為だった。

でも、私が自由になって、リーゼも元に戻ったという事で、リーゼもあれからは風の精霊らしく、あちこちの空を飛び回っている。

今日も、会うのは1年ぶりだ。


「そうだね。人が増えたからね」

『まぁ、こうなりそうね……とは思っていたけど。リヴィが嫌そうなら、吹き飛ばそうかと思ったけど、楽しそうにしてるから大丈夫そうね?』

「リーゼ……いつもありがとう」

『お礼は要らないわよ。私は、リヴィが幸せだったらそれで良いの』


ちなみに、ヴァルナにはまだあれから会っていない。久し振りの自由を得て、自由を満喫しているそうだ。


『今日は、聖女ナナカの話をしに来たんだけど……どうする?』

「……聞くわ」


最後まで、知っておくべきだろう。






ナナカは、毎晩体中が痛みに襲われ眠れぬ日々を過ごす事になった。満月の日だけは痛みがなく、満月の日は1日中眠る事もあったそうだ。

そうして、半年を過ぎる頃には精神が衰弱していき──


『数日前に息を引き取ったそうよ』

「そう…………」


完全にナナカを救わなかったのは私だ。私が、ナナカを死に追いやったのも同然だ。先に私を殺そうとしたのはナナカ。それでも、この判断が正しかったのかどうかは分からない。


「自分を責める必要はない。あの女は、本来ならあの時、あの場所で死んでいたんだ」


そう言いながら、私の手を握ってくれるルベールさん。


「自分の行いが倍以上になって返って来た。他人(ひと)の命を奪おうとしたんだ。本来ならあの場で死んでいたんだ。それを、ジルダが助けた……それだけだ」





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