34 それぞれのその後
セオドリク様は廃太子となり、オードリック様が立太子する事になった。
「“聖女ナナカが力を失って、体も病弱になってしまったようで、弟に継承権を譲って、聖女の療養に付き添う事にした”んだそうだ」
「美談だね……」
2人のその後の報告をしてくれたのは、ルベール=メンフィールス公爵。その報告内容に、少し呆れた顔をしているのが、獣王国第三王子のラドルファス=バズラス様。
国民は信じているから、すんなり受け入れられ、特に混乱は起こっていないようだ。
ただ、ごく一部の貴族の間では、あの日の出来事を知られているようで、これから先どうなるかは微妙なんだとか。
「“精霊を怒らせた”事は、国の一大事だからね。ジルダが優しい人で良かったよね?」
「そもそも、ジルダ様は騎士達の間では人気がありましたからね……騎士達からすれば、許し難いところはありますよ」
ラドルファス様の言葉に、アーニーさんが同調する。私が人気があったかどうかは知らないけど、優しくはないと思う。ナナカが世界を救ってくれて感謝していると言いながら、私はナナカの苦痛を完全には消さなかったから。私が本当に優しい人なら、あの苦痛を残す事はなかっただろう。
私が味わった苦痛を、ナナカも味わえばいい──と思ってしまったのだから、悪女なのかもしれない。
「俺なら、あの場で助ける事もせず、あのまま放っておいただろうな。あの場で感情に流されず対応したお前は偉かったと思う」
「メンフィールス様……」
あのメンフィールス様に褒められる日がくるとは……明日は雨霰でも降るかな?
「皆さん、そろそろティータイムにしませんか?」
「ミツ、ありがとう」
「あれ?ミツさん、まだこの世界に居て大丈夫なの?」
と、ミツが居る事に少し驚いた様子のアーニーさんだけど、何となく嬉しそうな顔をしている。
「私、このままリヴィ様と一緒に居させてもらう事になったんです」
本当なら、ミツは元の世界に戻る予定だったけど、私の元に留まって、今までと同じように私のお手伝いをしてくれる事になった。
「リヴィ様の薬草の知識を勉強する為なのと、リヴィ様に、妖力の扱いを指導する為なんです」
「ようりょく?」
そう。私は、主様から“妖力”を付与してもらったのだ。残念ながら、失ってしまった水属性の魔力を取り戻す事はできなかった。そして、一度失ってしまったら、女神から新たに魔力を授かる事はない。のだけど、今回は色んな複雑な事情もある為、異世界の力ならギリギリセーフで付与できるという事で、私は妖力を付与される事になった。
妖力と魔力は“似て非なるもの”で、扱い方が全く違った。感覚レベルの違いだから、なかなかに難しい。でも、扱い方さえ分かれば、治癒の魔法に転化できるそうで、今は妖力の扱いの訓練を毎日頑張っている。
見た目幼いミツだけど、両親がかなりの実力者で、ミツもその血を濃く引き継いでいて、妖の世界の中でもそれなりの実力者なんだそうだ。それに、指導も分かりやすい。
とにかく、これからもミツが居てくれるのは嬉しい。
「ところで、ラドルファス様はいつまでノーザンディアに居るんですか?」
もともと、ジルダを探す為に残っていたと言っていたけど、私が見付かったから、ここに居る必要はなくなったし、第三とは言え王子様だから、こんなにも長く放浪するのも問題なのでは?
「それなんだけどね、“この国がどうなるのか様子をみろ”とお達しがあってね。だから、もう暫くはここに滞在する事になったんだ」
「ソウナンデスカ」
これも仕方ない。精霊を怒らせた国が近隣にあれば、何かあった時に影響があるかもしれないから。でも、それなら辺境地じゃなくて、王都に滞在すればいいのに!なんて思ってない。
「メンフィールス様も、そろそろ王都に戻られた方が良いのでは?」
メンフィールス様は、公爵でもあり魔道士団の団長でもあるから、少し混乱しているであろう王城に戻らないといけないよね?放ったらかしは職務怠慢になるよね?
「保留にされているが、団長職の退職願を出してきた」
「ソウナンデ──はいぃ!?」
“団長職は”という事は、魔道士は続けるけど、団長という肩書きを辞めると言う事なんだろうけど、一体、誰が大陸一の魔道士の上に立てると言うのか。私なら絶対に立てない。
「いや、それ、かなりの大問題では?」
「魔道士として残ると、かなり譲歩した方だ。城付きの魔道士も辞めるつもりだったからな」
「何故……」
魔道士が天職のような人で、メンフィールス様本人も魔道士としての矜持があったはずなのに。
「まあ、王家に色々思うところがあるのもあるが、ただ単に俺が辺境地に居たいからと言うのが一番の理由だな」
「そう……なんですか?そんなにもここが気に入ったんですか?」
まぁ、確かに、色々と煩い王都よりは静かで穏やかに過ごせるのは確かだ。貴族云々の煩わしさもない。
「メンフィールス様以上の団長なんて居ないと思いますけど……」
「ジルダが俺の補佐に付いてくれるなら、団長を続けても良いけど?」
ちょっと──かなり意味が分かりません。




