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消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


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32/45

32 主様

「呆気なかったなぁ……」


というのが正直な気持ちだ。

左足首に視線を落とす。何度見ても、そこに模様は無い。


「大丈夫か?」

「少し複雑な気持ちはありますけど……」


私に声を掛けてくれたのは、メンフィールス公爵様。ここに転移して連れて来てくれたのは、ナナカが倍返しを喰らい出してからだけど、それよりも前から、ここでのやり取りは、メンフィールス様の魔法で全て聞いていた。

ナナカが私を消そうとしたのは、私の居場所を奪う為だった。


ーそれだけの理由で?ー


というのが正直な気持ち。王太子様と私の婚約は、いわゆる政略結婚で、色んな問題があるかもしれないけど、私が解消を願えば、ナナカは聖女だから、こんな事をしなくても王太子様と結婚できただろう。私も、少なからず王太子様に好意はあったけど、泣いて縋るほどの執着はないし、2人が想い合っているなら潔く身を引いたのに。


「ジル──リヴィアンナさん、少し話はできるだろうか?」


私に声を掛けてきたのは、王太子セオドリク様だ。少し前まで、新たにやって来た騎士達でバタバタしていたけど、今は王太子様とメンフィールス様と私と、王太子様の護衛2人だけになって、室内も落ち着いている。


ー私には話す事はありませんが?ー


なんて言えないよね?相手は王太子様だし。なんて思っていると──


「ただの薬師の女性が、王太子に話があるわけがないだろう?それに、王太子に言われれば“嫌だ”とも言えない。更に、彼女に嫌な思いをさせるつもりなのか?」


私と王太子様の間に立って、そう言ってくれたのはメンフィールス様。たとえ叔父とはいえ相手は王太子。不敬罪と捉えられてもおかしくはないけど、側に控えている護衛騎士も動く様子は無い。まぁ……色々思うところがあるんだろう。王太子様もまた、メンフィールス様を非難する事もなく黙り込んだ。


「リヴィアンナ、今からどうする?」

「家に……帰りたいです。お願いしても良いでしょうか?」

「勿論だ」


私のお願いに、嫌な顔もせず笑顔で答えてくれるメンフィールス様。こんなにも柔らかい表情をする人だった?と思わなくもない。でも、転移魔法はそれなりの魔力を消費するのに、二度も使用してくれるのだから、本当にありがたい。


でも、きっと、これで王太子様とは最後になるだろうから──


「聖女ナナカを選んだのは、セオドリク様ご自身です。今度は、簡単にナナカを切り捨てる事がないように……願っています」

「──っ!」

「さようなら」


王太子様が、私に何か言いたそうな顔をしていたけど、メンフィールス様が転移の魔法陣を展開させた為、王太子様の言葉を聞く事はできなかった。





******



辺境地のラボに戻ってくると、そこには深影さんとミツが居た。


「深影さん、本当にありがとうございました」

「いや、もともとは俺達の世界のミスが発端だった。こちらこそ、申し訳無かった──という事で、ちょっと俺に付き合ってもらいたい」

「付き合う?一体どこに──」


どこに付き合うのか?と聞き終わる前に、深影さんとミツと私の体が青色の炎に包まれた。


「リヴィアンナ!!」

「メンフィールス様!」


青色の炎の向こう側に、慌てた様子のメンフィールス様の顔が見えたのは一瞬で、その青色の炎が消えると、メンフィールス様の姿はなく、どこか見知らぬ部屋の中に立っていた。


『そこに座ると良いわ』

「え?」


声がした方へと振り返ると、そこにはカウチにゆったりと腰をかけた美人が座っていた。

真っ黒な長い髪と真っ黒な瞳で、服は初めて見るなんとも不思議な服だ。

深影さんとはまた違った威圧感があるけど、同じぐらいの安心感もある。


『深影、ミツ、ご苦労様』

「「ありがとうございます」」


スッと2人ともが、恭しく頭を下げる。


ーひょっとして……この人が“主様”?ー


『貴方の予想通り、私がミツ達の主よ。今回の事を、直接謝罪したくて呼んだの。本当に申し訳なかったわ』


すすめられたソファーに座ると、主様からすぐに謝罪された。


ー心が読まれてる?ー


と思いながら主様を見ると、ニコリと微笑まれた。


『あの男は、そちらの世界の精霊が処理すると言っているから、どうなったか気になるようなら、精霊に訊いてちょうだい。まぁ、私からも少しだけ手を加えさせてもらったけど。そうでもしなきゃ、やってられないじゃない?』


ふふっ……と、美女が微笑むと少し恐ろしさもあるから不思議だ。


ーあ、この声はー


そこで、ふと記憶がよみがえる。





『哀れな贄。おとなしく我の贄となれ』


私があの男に捕らわれた時、私をギリギリのところで助けてくれた声。


『ごめんなさい。今はこれが……貴方を護る唯一の方法なの』



あの時の声に、少し安心した記憶がある。


「あの時、助けていただいて、ありがとうございました。おかげで、こうして生きていられました」

『貴方が礼を言う必要は無いわ。本当に、こちら側の失態だったから。アレも、あの時にできたギリギリの事で、長い間貴方には苦痛を強いた事になったわ。そこで、お詫びを兼ねてと思って……』

「お詫び……ですか?」


そう言って、主様が提案してきたのは、私にこの世界での魔力──妖力を付与するという事だった。




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